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就活というシステムにのれなかった

 2016年の春から初夏にかけては毎日落ち込んでいた。当時大学3年で就活真っ最中だったが、一向に内定が取れずに焦り、絶望感でいっぱいだった。周りはJALだのANAだの花王だのJETROだの大手企業に内定していた。さらに追い打ちをかけるように、双子の妹も超大手企業に内定。ぼんやりと「海外に行きたい」「メディアで働きたい」としか思っていなかった私は、ことごとく就職試験に落ちまくっていた。

 「健康な若者というのは得てしてどの業界からも貴重な働き手として求めらているはずなのに、自分はこんなにも社会から必要とされていないんだな」と世の中に絶望しながら、平日午前に実家にひとりでいる罪悪感にさいなまれていた。ちょうど梅雨の時期で雨がしとしとと降る曇った空を、リビングの窓から眺めていた。ここまで育ててくれた親や良くしてくれた親戚の顔を思い浮かべ、申し訳ない気持ちになりながら。Yおじさんには就活の相談にものってもらったけど、このままだといい報告もできないな。

 同じ頃、当時付き合っていた彼氏がそろそろ引っ越すと話していたので、一緒に住みたいねなんて言いながら、息抜きで部屋探しを手伝っていた。就活の合間にSUUMOで賃貸マンション物件をあさっていると、PC画面を後ろから盗み見ていた双子の妹が一言。

「そんなことやってる暇あったら就活しなよ」

 自分のような、社会に何も貢献できていない人間は、息抜きをすることも許されないのか。そんなに就活で大手企業に入る人がえらいのか。てかもう就活ってなんだ。なんでみんなよーいドンで初めて、4月とか6月とか一定の時期になったら各々収まるべき場所にちゃんと収まれるの?毎年何万人という大学生が毎年やってるこのシステム、どうなってんの?もしかしてだれか神みたいな人がいて全部裏で操ってんの?

 2016年の6月、お先真っ暗だった。(つづく)

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