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【和訳】Dreamville - Down Bad -

Dream Villeのコンピ、Revenge of the Dreamers 3からの先行カット。
この曲のビート、直接サンプルしてはいないらしいのですが、Public EnemyのRebel without a pauseのオマージュになってるみたいです。

Dreamvilleの面々は実力はあったけどなかなか売れなかった、評価されなかった面々のコレクティブというイメージがあると思います。
JIDのフックに象徴されるように、この曲では評価されてこなかった彼らが鬱憤を晴らすかの如くスピットしまくってますね。

やはり一番の注目はJID。
フック・バースともに巧みすぎるフローを披露しながらも、退学を食らった大学時代の話を展開し、いかに自分が底辺から這い上がってきたかをスピットしていきます。

個人的にはBASのバスケ縛りを多用する比喩がなかなか面白くて、結構好きでした。

[Verse 1: Young Nudy]


Yeah, I am the king of the E.A.
俺はイースト・アトランタのキングだ

Get this bitch screwed like the DJ (Big slime)
あのDJみたいに、このビッチをヤッちまうぜ(マジでイケてるDJさ)

DJ Screwはテキサス州ヒューストン出身のDJで2000年に29歳の若さで他界しました。
そのDJ Screwに向けたシャウト。get screwedと掛けてます。

Yeah, I am the shit where we play
ここらじゃ俺こそが本物さ

We got the chalk where we play (Okay)
そしてここいらじゃ俺たちは結果を出すのさ

Yeah, come through the city
この街を抜けて、俺たちは成功する

We gon’ chop your ass up just like some sushi (Yeah)
俺たちは寿司みたいにお前をバラバラに切り刻んでやるのさ

AK-47, stick go stupid (Yeah)
AK-47、ライフルをぶっ放すぜ

Draw the money out, all the way...
金を全部引き出してやるよ、最後の最後までな(←かなり自信なし)

[Verse 2: JID]


Okay, lil' dirty, nappy-headed East Atlanta nigga
オーケー、俺は小さくて荒々しい、縮れ髪のイーストアトランタ出身の男さ

Father said that I was a force
父さんには、俺はフォースを纏ってたって言われてた

.44, Hank Aaron chrome
44口径、ハンク・アーロンみたいな銃で敵を打ち抜くのさ。

ハンク・アーロンは伝説的なMBAプレーヤーで44番は永久欠番になっているそうです。
背番号の44と、44口径のピストル銃を掛けたワードプレイ。

When I make it home, then get out the Porsche
自分の家にたどり着いたら、すぐさまポルシェで出かけるのさ

Let a nigga cover FADER 'fore I have to fade a nigga at the FADER Fort
俺をFADERマガジンの表紙に載せろよ、さもないとFADER Fortに出てるやつをぶっ殺さなきゃいけなくなっちまう。

*Faderは有名な音楽・カルチャー雑誌。Fader FortはFader社が主催する大きなイベントとのこと。
Fadeはスラングで「殺す」的な意味があります。
JIDは自分をFaderの表紙にしないと、同社のイベントで暴れちゃうよ?、と言っているわけです。

It’s tomato or tomato, either way, the boy the greatest
(発音が)トメイトだろうがトマトだろうが関係ない、俺が一番なのさ*

*Tomato or Tomatoは慣用句で「些細な事」みたいな意味のようです。
トマトはイギリス英語とアメリカ英語で発音が違う(トメイトゥかトマートみたいな感じ)ところからきていると。
JIDは古典的な慣用句を使って「細かいことなんか気にならないくらいにぶっちぎりで俺が一番なのさ」と言ってるっぽいです。

Play it, I won't say it no more
曲を聴けよ、これ以上言葉は必要ないだろ?

I was just fucked up, I was just down, down bad
俺はとにかくボロボロだったひどく落ち込んでたんだ

I had to tighten the fuck up, but I'm here for the crown
俺は規律をもって努力してたんだ、でも今は王冠を手に入れるためにここにいるのさ *

JIDはイーストアトランタ,Zone6の出身で、周囲が売れていく中で中々芽が出なかったと。
それでも努力し続けることで、Coleに認められたわけです。
(ColeはJIDのOff DeezでもJIDのことを「最も俺に近い男」と称していました。)
JIDはColeをリスペクトしながらも、「その王冠を奪うためにここまで来た」と宣言しているのも野心的で応援したくなりますね

Board of Education vs. Brown
ブラウン対教育委員会裁判さ

人種差別はアメリカ合衆国憲法修正第14条(法の下における平等保護条項)に違反するとの判例が確立された裁判。
その後の公民権運動の道を開くきっかけになった歴史的に重要な判決とのことです。(詳しくは調べてみてください。)
正しくはBrown vs Board of Educationですが、JIDは「ブラウン」を後ろに持ってくることで上手にライムを繋げていますね。

I was bored of education, left the town
俺は学校教育に嫌気がさしたのさ、そして町を去った。

JIDは大学時代、アメフト部で奨学金をもらってアントレプレナーシップを専攻していたとのこと。
大学三年の時点で退学になり、音楽のキャリアを志したと。

Fuck a résumé and fuck a cap and gown
授業のレジュメも、(卒業式などで着る)角帽とガウンもクソくらえ

Fuck a background check back 'round when I get the check
経歴なんかくそくらえさ、俺は金を稼いでると過去の経歴をチェックしてきやがる

Nigga, that's now
そう、それがまさしく今起こってることなのさ。

JIDは普通に大卒の経歴を得て、普通の仕事に就くことを暗に批判しているのかもしれないですね。自分は退学になったけど成功してるぞ、と。

[Chorus: JID]


I was just fucked up, I was just down, down bad
俺はとにかくボロボロだったひどく落ち込んでたんだ

I had to tighten the fuck up, but I'm here for the crown, crown (Oh, shit)
俺は規律をもって努力してたんだ、でも今は王冠を手に入れるためにここにいるのさ 

I was just fucked up, I was just down, down bad
俺はとにかくボロボロだったひどく落ち込んでたんだ

I had to tighten the fuck up, but I'm here for the crown, crown, crown, crown
俺は規律をもって努力してたんだ、でも今は王冠を手に入れるためにここにいるのさ 

[Verse 3: Bas]


I was just fucked up, I was just down, down bad
俺はとにかくボロボロだったひどく落ち込んでたんだ

Picked up the pad, picked up the slack
家を買ってんだ。ほかにも、足りないものは補っていったのさ。

Pick of the litter, don't litter no bag
俺は家族みんなの誇りだ。”バッグ”を捨てるなんてしないぜ

pickとlitterを様々な意味で多用していますね。
さらにBAGにはスラングで「ゴミ」という意味のほかに「お金」という意味があると。
ゴミのポイ捨てもしないし、金を手放すこともない、という巧みなワードプレイ。
Basはソーシャルアクティビストとして様々な社会貢献活動を行っているらしいですね。素晴らしいです。

Bassy been pickin’ up racks, raps comin’ clearer than Acuvue 2
Basは金を稼ぎ続けてる、俺のラップはアキュビュー2よりハッキリと明確に金を生み出すんだ。

アキュビュは日本でもポピュラーなコンタクトレンズブランド。
アキュビューの視力矯正よりクリアー(=明瞭に)俺のラップは金になると。

When I'm back in the booth
俺がブースに戻った時にな

Got ’em hackin' a Shaq 'cause they lackin' the juice
あいつらは覇気がないから、ハック・ア・シャックしちまうかな

ハックアシャックはバスケのディフェンスで、フリースローが下手な選手にファールをして止めてしまうことで得点を取らせないようにすることらしいです。シャキール・オニールがフリースローが下手だったのでこの名前が付いたとか

Niggas droppin’ the ball, they on Shaqtin' a Fool
あいつらはボールを落としやがったぜ、珍プレー集の真っ最中さ。

Shaqtin a foolはバスケの珍プレーのことらしいです。
前述のシャキールオニールらが出てるテレビ番組の企画?らしく、毎週1つずつ選出して、月間の珍プレーを決める、みたいな感じらしいです。

Actavis drool out the side of their face
アクタビスを飲んで、あいつらは涎を垂らしてやがる

アクタビスはリーンを作るのにつかわれる風邪薬らしいです。
Basはリーンを飲んでいるラッパーや輩をディスってるんだと思います。

We ain't jackin' it, we ain't dappin' them fools
俺たちはパクったりしないんだ。阿保どもとは握手したりなんかしないぜ

ダップはラッパーがよくやる手をパチンとやって肩をぶつけるような挨拶なんですが、日本語でなんていうかわからないので握手にしちゃいました。

Get a napkin, you dudes is embarassin'
ナプキンを用意しておけよ、恥ずかしいやつらだな。

Jackinはスラングで「マスターベーション」と「他人のスタイルを盗む」という意味があります。
「ドリームビルは誰の真似もパクりもしないぜ」の裏に「マスターベーションなんかしないぜ?」が掛かっていて、そのあとの雑魚はマスターベーション(他人のパクり)をしてろよ、イッタあと拭くのにナプキンが必要だろ?と繋がるわけですね。
このへんはちょいちょい巧いです。

Who going crazy like us? No comparison
俺たちぐらいクレイジーになれる奴なんているわけねえだろ?比較対象すらいないぜ。

Dreamville like Marion Jones on the steroids
ドリームビルはステロイドを打ったマリオンジョーンズみたいなもんだ

マリオンジョーンズは短距離の女王として日本でも有名。
のちにドーピングを告白して全部のメダルを返還しちゃいました。
ドーピング打ってたマリオンジョーンズぐらい反則級に最強だと言ってるわけです。

Y'all niggas slow as a heroin high
お前らは遅すぎるんだ。ヘロインでぶっ飛んでるみたいに(←自信なし)

Y'all had a year, y'all had a year
お前らは皆1年間あったんだ、1年間もあったのに

Y'all had a year, but you let it go by
お前らは一年もあったのに、でもチャンスをふいにしたな。

[Chorus: JID]繰り返し


[Verse 4: J. Cole]

Dreamville head honcho
俺がドリームビルの頭、ハンチョーさ

Bitch, we came from nothin' just like the big bang theory
ビッチ、俺たちは何もないところからきたんだ、まるでビックバンみたいにな

That poverty stains kept the pain buried
この貧しさの染み(汚れ)が痛みを忘れさせてくれた。

And covered the shame with a dream
そして夢が恥や不名誉を覆い隠してくれたんだ

We would have fortune and fame
俺達は富と名声を手に入れるだろうって思えた。

A mil' in the bank, chameleon paint turned cranberry
銀行口座にはミリオン、(車は)カメレオンペイントを施してクランベリーのような色になったのさ

カメレオンペイントは複数色をグラデーションにした塗装で高級な特注色。
得てして赤っぽい色になるらしいのでクランベリーと言っているぽいです。

Now little Jermaine got the same story
そして今ジャーメイン少年は同じ物語を歩んだ

As that boy out of St. Vincent-St. Mary: G.O.A.T.
セント・ビンセント=セント・メアリー高校を卒業して史上最高となった、あの少年と同じ物語さ。

セント・メアリー高校出身のGOATとはバスケ選手のレブロンジェームズのことですね。
ジャーメインはコールの本名です。
レブロンのごとく、自分も史上最高になるべく同じストーリーを描いたと。

All hail King Cole, first of his name, long may he reign
全員がキング・コールを称賛したんだ。「新王誕生」さ。彼の統治が永きに続くことを願おう

The boy got the throne, but you know it ain't a game
そして少年は王座についた。でもこれはゲームなんかじゃないぜ?

ゲームオブスローンズというドラマシリーズと掛けたワードプレイ。
first of his name(邦題「新王誕生」)は同ドラマシリーズシーズン4第5話のタイトルとのことです。
なので、その次のラインで「王座(=スローン)を手に入れたといってもゲーム(オブスローン)じゃないぜ?」と続くわけです。

Ville nigga, I was born in the same
ビル出身者よ、俺も同じところで生まれたんだ

*villeは村という意味ですが、ここではコールの地元、Fayettevilleを表していると思われます。

Pressure cooker that's been known to bust a lump of coal and make a diamond
圧力機は、石炭の塊を砕いて、ダイヤモンドを精製することで知られているだろう

石炭は圧力をかけられてダイヤモンドになるのと同様、コールもプレッシャーがあったからこそ磨かれて光り輝いたと。
さらに石炭(Coal)と自分の名前のColeをかけてますね。このワードプレイ、確かJIDもOff Deezで使ってました。

Two six, we enrolled in Reaganomics
2-6,俺たちはレーガノミクスに登録されたんだ

2-6はコールの地元、Fayettevilleの愛称。
レーガノミクスは80年代の米国大統領ドナルドレーガンが行った経済政策のこと。
詳しくは調べていただきたいですが、Jay Zを筆頭に多くのラッパーがレーガノミクスを「ドラッグの拡大と人種差別を助長させた」として批判しています。
コールは、おそらくレーガンを引き合いに出して、現状のドラッグが蔓延したヒップホップシーンも批判しているのでしょう。

Crew sick, we the Golden State of rhyming, on God
俺たちのクルーはヤバいぜ。俺たちはライミングのゴールデンステイトだぜ!

*ゴールデンステイトウォーリアーズはNBAのチーム。
DreamvilleのライミングスキルをNBAチームに例えています

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