「戦場カメラマン」

その戦場カメラマンは
自分の職務を果さなかった
彼は写真を撮らなかったのだ
写真を撮るのがカメラマンの仕事
だというのに

兵士は子供の足を狙っていた
殺してしまうより
将来の労働力を削ぎ
社会の負担を増やすほうが
得策だという卑劣な戦略である

彼が撮っていれば
世界はもっと早く
この卑劣な行為に
気づいていたかもしれない
多くの子供が犠牲にならずに
済んだかもしれない

しかし、彼は撮らなかった
そのかわりに
ひとりの子供を助けた
自分の命を犠牲にして

カメラマンとしてではなく
ひとの人間として
彼は生きる道を選んだのだ

彼の死が新聞に載ることはなかった


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