改定アイキャッチ用-ヒラギノ先生

【書評】大学教員の冷汗と狂喜の日々に憧れて:後編(こぞう時代から先生へ)~漫画『あくびカレッジ』~

前編に当たる次の「先生の日常」:

では、大学の先生方の授業や期末の試験や課題レポートの各々期間の苦しーい中に、ふと、学生との間で起こる、嬉しくなってしまう瞬間を中心に、お話しました。本記事の後編では、そんな冷汗が多く、ちょっぴり嬉しいことがある大学の先生になるには、どうしたらいいのか。その過程を漫画『あくびカレッジ』のこづか先生たちを通じて、一緒に体験してみましょう。

(画像:本書のキャラクターを仲見が描いたもの)


4.大学教員になるまでの道~「こぞう」からの出発~

 4−1.「こぞう」のでき方、および、こぞう時代初期

「大学の先生には大抵師匠がいて ながーい「こぞう時代」がある」そうです。本書によれば、「こぞう」は試験期間でなくても、実験室や研究室に「吸い寄せられる」といいます。「こぞう」は、友人が就活一色になる傍らで、学生たちの一部には、ぼんやりと大学院に行って、師匠と同じ道に進もうとする人に、その要素が出始めます。私も体験しましたが、鞭のまま進むと、引き返す時、茨の道が心身に刺さって、後戻りするにはある程度の傷がつきます。この危険度は、本書で言えば、学生が就活時期に「芸能人、目指すから」と言い出すのと同じで、まず相談された親は子を止めます。

大学教員への進路のほうについて、親は「業界を知らず」、止め「られま」せん。代わりに師匠候補の先生方は、次のような現実を冷静に言って、学生を諭します。
 ・この職業は「水商売」であり、実力・人脈・運が相当なければ沈む
 ・実家が経済的に太いこと
 ・本人は10年以上、無収入&就職先ないから辛い
諭されて、我に「かえらない」人が「こぞう」として、修士課程から大学院に入り、長い「茨の道」を歩むことになります。

こぞう初期は、師匠のケイタイ番号を登録から始まります。出張の際には乗り物の予約から、講演会の会場下見、同行の場合は文字通り、先輩と私も経験したカバン持ちをします。理系の厳しいところなら、本書の擬態文字に出ているように「24時間無休無給中」のラボがあっても、不思議ではありません。特に、研究で菌や動物の監視や世話をしている研究室は、生き物を相手にしていることもあって、交替で院生が面倒を見る必要があるようです。 

さて、こぞう本人が研究活動で学会出席や講演会に出席する時、交通費は大抵、自腹です。だから、頑張って学振の特別研究員の書類を書いて申請したり、民間企業の助成金に応募したりして、採択されるように励みます。私が「スーパー院生」と呼ぶ優秀な研究者のY先輩は、学振に4回、民間の助成金に5回ほど応募して、やっと民間助成金1つに採択されました。

 師匠の付き人をし、研究助成金に応募し始めるこぞう初期は、「一生でもっとも先が見えない時期」と本書で示されています。 アルバイト給与の振り込まれる通帳とにらめっこして、研究活動にかかる費用を計算し、学会出席にかかる費用やフィールドワークを「仕分け」る始めるのも、速ければ、この時期に始まります。

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