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【描写】と【芝居】と【n題噺】(第2回)

 いつもご覧いただきまして、誠にありがとうございます。中村尚裕です。

 私、このところ『【描写】の元となる【元現象】そのもの』の構築について、【考察】を巡らせております。
 と申しますのも、『いくら超絶技巧を駆使しようとも、【描写】すべき【元現象】が陳腐ならば、その陳腐さを【描写】で覆すことはできない』からで。例えば『【大根芝居】は、いかに凝って映し取ろうと【大根芝居】でしかない』わけですし、さらには『【芝居】にすらならない情報量なら、そこに【登場人物】に息遣いを宿すことにも無理が出る』わけですから。

 そう考える時、『【元現象】を作り込む意義』は相応に重くなることが予想されるわけです。もちろん【作風】にもよることでしょうけれど。

 そこで前回は、まず【元現象】の重要性をお伝えいたしました。

 今回は『【元現象】に【説得力】を込めるための【芝居】』、これが醸す【存在感】とでも称すべき効能をお眼にかけて参りましょう。

 ◇

 さて、このような【考え方】を【背景】に持った上で。
 広く【他作】を【観察】してみると、シーンの【状況】を【表現】するのに、下記【具体例】1.のようなやり方をよく見かけます。仮にここでは『【要約】型【表現】』と称することにしてみましょう。
 これに対して、【我流】が重んじる【表現】を仮に『【芝居】型【表現】』と称して【ご提示】しますと、下記【具体例】2.のようになります。

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・【具体例】1.【要約】型【表現】
 時おり上空から敵の砲弾が降ってくる中、彼は要救助者の元へ急いだ。

・【具体例】2.【芝居】型【表現】
 甲高い音が、降ってくる――。
 伏せた。頭を抱える。心理を圧する間――から、爆音。爆風。破片、と埃。
 舌を打つ。顔を持ち上げ眼を前へ。その先、埃に霞んで民間のバンが一台、立ち往生。
「生きてろよ!」
 口中に噛み潰し、低く地を蹴る。
 の、頭上。甲高く――、
 そのまま飛び込むように地へ。歯を軋らせつつ頭を抱える。恐怖が天から降ってくる。
 爆発――近い。直上を爆風が横殴り、破片が周囲を打ち据える音――に続いて、さらに破片が降ってくる。

 ◇

 以上の【具体例】を見比べていただければ、私が【具体例】1.を『【要約】型』と称した【背景】をご理解いただきやすいかと考えます。

 つまり【具体例】1.を、私は『【状況】の要旨のみで、“シーンという【現場】の【具体的】な【元現象】”を大幅に省いた【表現】』と捉えているわけです。
 これに対し、【具体例】2.は『“シーンという【現場】の【具体的】な【元現象】”を【実況】する【表現】』と言い表すことができそうです。逆から申せば、『【実況】するからには、“シーンという【現場】の【具体的】な【元現象】”には、一定以上の密度で人やモノの【芝居】を【再現】する必要に迫られる』ということになりますね。

 ここで『【芝居】型【表現】』は、【具体的】に【元現象】を描くという性質から『【表現】とその水面下に込め得る【意味付け】が飛躍的に増える』ことになります。これは単なる文字数だけのことではなくて、『【具体的】な【元現象】同士の関連付けで表される、“【行間】の【意味付け】”』までもが飛躍的に増えることになる、ということです。

 例えば【具体例】2.では、『次にいつ、どこへ着弾するか予想できない恐怖』であるとか、それに関連して『断続的な着弾とその恐怖であらゆる行動が妨害され、何事も思うように進まない事実』であるとかが、『直言に頼らず【表現】される』ことになるわけです。
 直言しませんから【押し付けがましく】なりにくく、また『【現実】に存在する無数の【事実関係】』に沿って【説得力】、言い換えれば【リアリティ】までもが備わりやすい、というわけです。
 『【押し付けがましく】せずに【リアリティ】を醸す』というやり方は、こと『【情報量】の豊かな【描写】』を追求しておいでの【作者】さんにとっても【意義】は小さくないものと拝察します。

 以上のような【背景】に基づき、【我流】のシーン【構成】は『基本的には【要約】せず、“【動的な変化】を絡めた【芝居】”をもって【描写】する』のを旨としているわけです。もちろん全部が全部をこと細かに【描写】していては紙幅がいくらあっても足りなくなりますから、そこは【演出】として【元現象】の出番を工夫します。
 例えば、【冗長】になるなどして【伝達】に支障を感じる場合には、カット・バックなどで『水面下の【潮流】として【行間】に収める』か、あるいはここで初めて【要約】するかを検討すればいいわけですが。
 ただしこの場合、【我流】では『【検討】の対象とする【選択肢】』として、『一つのシーンへ、必要な【元現象】を上手く織り込む』という『【構成】の【工夫】』をほぼ必ず検討します。

 ◇

 さて、今回は一旦ここまで。

 まずは『【芝居】型【表現】』と私が呼ぶものをご覧に入れました。
 ここでその効能を感じていただけたなら、【芝居】について研究してみる【価値】あり、ということになります。

 そうすると、次にお伝えしたいのは『【芝居】とは、【要約】に対してどのような位置付けにあるのか』ということです。
 次回はこの『【要約】と【芝居】の位置付け』について、掘り下げてみましょう。

 よろしければまたお付き合い下さいませ。

 それでは引き続き、よろしくお願いいたします。

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