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インスタショッピングを支える「出会えない」「選べない」私たちの買い物インサイト

もうすぐサマーセールの季節がやってくる。だが、わたしは最近、デパートや商業施設での買い物に、これまでにないほどの大きな苦手意識を抱いている。

フロアを練り歩き、試着をして、たくさんの時間を使って「買い物」するのに、とうとう理想のものに出会えなかったとき。何も買わずに疲れて帰るときの敗北感のような気分を味わうのが怖いからだ。


掌に広がるショッピングフロアを眺めながら

時間が湯水のようにあった学生時代は、デパートを練り歩くことが好きだった。知らなかったブランドに出会ったり、好みのアクセサリーを見つけたり、セレンディピティを楽しむ余裕があった。歩くたびに新しい世界を獲得しているような感覚があった。

しかし働き始めてからは時間的な制約が強くなり、「不確実な出会い」を楽しむ余裕がなくなった。そのネックを解消してくれたのが、Instagramのショッピング機能である。

スケジュール帳から「お買い物の日」という予定は消えて、電車移動や寝起きのベッド、隙間時間がショッピングタイムに変わった。買い物するフロアを選ぶようにハッシュタグを打ち込めば、掌の中に私のためだけのショッピングフロアが表示される。気になる商品を見つけたら投稿をのぞく。情報が足りない場合に、Twitterのエゴサーチや口コミサイトをチェックして、本当に良い商品なのかを検証する。信頼できそうだったら、ECサイトから購入をする。


◎店員さんの代わりに進化するハッシュタグ

このように、買い物コストが最小限で済むハッシュタグ検索は、確かに私のショッピングをスマートにしてくれた。しかし、今度は次のネックが生まれる。検索結果が多すぎる問題だ。

たとえば、#ワンピース の検索結果は250万件以上。この中から運命の1着に出会うのは、至難のワザである。(もちろん「#白ワンピ」「#ロングワンピ」など、2語を組み合わせたタグで情報の精査をするという方法もあるが、これはまた別の回で書きたいと思う)

これでまた、デパートショッピングで感じていた「出会えない」ストレスが再発してしまったのだ。


最短距離へ導くハッシュタグ

そんなインサイトを背景に、いま女の子に大きな影響を与えているのが、診断系ハッシュタグだ。代表格は「#ブルベ」「#イエベ」だろう。

ブルベとはブルーベース、イエベとはイエローベースのことで、肌の色に影響を与える静脈や動脈の色影響やメラニン色素、カロチンの量から、自分の肌色のタイプがどちらであるかを知り、コスメ(洋服)選びに生かしていく指針である。同じタイプのユーザーは、相互に情報交換をしていて、このタグ自体がコミュニティ化しているのにも注目だ。(ちなみに厳密にいうとイエベ・ブルベはさらに春・夏・秋・冬に分類されるのだが、ここでは割愛する)

このタグが前の「#ワンピース」と決定的に違うのは、「モノ」ではなく「タイプ」が検索動機になっていることだ。タイプが検索動機になる最大の理由は、溢れかえる情報の中から、自分に合うものを最短ルートで見つけたいという思いだろう。

タイプを診断すれば、購入候補をグッと絞り込むことができる上に、「似合わない」などの買い物の失敗リスクも防ぐことができる。試着室に入って「なんか違った」のしんどさを味わわなくて済むのだ。

さらに、これは肌感だが、ブルベ・イエベにみる診断系ハッシュタグの投稿は、アイテム系タグよりもエンゲージメント傾向が強い。悩める子羊を導いてきたショッピングフロアでは、買い物する人が多いのは納得である。


まとめ

今回の考察をまとめると、

✔︎予定先だったショッピングフロアは私たちの掌に
✔︎投稿数が増えたタグに「出会えない」ストレスが再発
✔︎「選べない」リスクを減らすため診断系タグが人気に
✔︎それは「似合わない」リスクも減らし、独自のコミュニティを形成する

女の子たちに流行るハッシュタグからは、買い物の根本的なストレスや、「出会えない」「失敗したくない」というインサイトが溢れている。

でも、一方で私は「似合わなくても着たい」とか、「あの日に買ったワンピースだから大切に着るんだ」というような、セレンディピティや自分の好きを大切にする消費スタイルが、どんどん薄れていることに寂しさも感じる。

正解や効率を求めながらも、揺れ動く自分のショッピングインサイト。この三連休、皆さんはどこで、どんなものを買うだろうか。


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