序章                ダイレクトメールの開封率はなんと7割 !

〇ところで、ダイレクトEメールって開いてますか?

さて、質問です。あなたは受け取ったダイレクトEメール(以下、Eメールで表記)を数えたことはあるでしょうか?
「そんな面倒なことはしないよ。だって、多すぎて、時間の無駄」
 そんな返答が返ってきそうですよね。実際、私自身、何通のEメールが来ているのか、数えたことはないですし、迷惑ホルダーの中なんか見たくもありません。
JDMA(一般社団法人 日本ダイレクトメール協会)の2018年度DMレポートによると、1週間に届くEメールは一人平均67.4通だそうです。つまり、1日約10通。
その一方、紙DMの数は平均約5.7通。つまり、1日0.8通程度。確かに、来ない日もあります。
単純に比較すると、EメールはDMより約12倍も届いていることになります。しかも、これは自分が普段使っているメールアドレスでの話です。今や誰でもが、GmailやHotmail、Yahooメールなどで多数のアカウントを持っていて、資料請求などはこのジャンク用メールアドレスで登録しています。さらに迷惑ホルダーに来ているメールを合わせたら、とんでもない数のEメールが届いていると容易に想像できます。
さらに、紙DMとEメールで、とりあえず開封しているという人は、100人に対して、紙DM は64.2人。それに対して、Eメールは11人という少なさ。しかも、後でお話ししますが、自分宛に届いたDMなら開封率は74.3%という高い数字が出ています。マーケティングツールとしてのDMの強さは、この話だけでも歴然です。
 

〇レスポンスがある、つまり、顧客に行動を促すのが「紙DM」

今までのDMでの効果測定は、例えば、店頭への来場者数で、「今回、○○%の集客だから成功だね」という評価でされてきました。しかし、SNSの時代はそんな簡単な測定では済まないのです。例えば、面白いDMを受け取ったとしたら、それをSNSで拡散してくれる可能性があります。すると、受け取った顧客が来場しなかったとしても、そのSNSを見た人がふらりと店頭に訪れるかもしれないわけです。
「DMを見て行動した」という人の割合をJDMA(一般社団法人 日本ダイレクトメール協会)が調査したところ下のようなデータが出てきました。例えば、DMだけの情報だけではなく、ネットでさらに詳しく調べたり、友人や家族と話題にしたり、購入したりと、このように「DMを見て、行動する人」は22.4%もいることがわかったのです。


さらに、興味深いのは世代別で、その行動率を調べてみると、20代男性では40%、50代女性では42.9%という高い数値になっています。もちろん、発信力が強いDMであれば、さらに顧客を行動させる可能性を秘めているわけです。
同じように行動率の高い20代男性と50代女性ですが、その行動が異なっていることです。20代男性の場合に多いのは「インターネットで調べた」が22.4%といちばん高い行動になっています。この点でもわかるのは、DMを発送するだけでなく、もしネットにつなげる仕組みがあればさらに効果を発揮するということです。例えば、DMの中にQRコードを入れて、自社サイトやメルマガ、LINE@につなげてクーポンを配信したり、定期的なインフォメーションを流すことで、集客をさらに後押しすることができます。


また、50代女性ならば、行動のいちばんは「家族・友人などと話題にした」で21%です。それならば、もっと話題にしたくなるDMを開発すればいいのです。例えば、友人や家族を伴って、お店に来店してくれた方に特別なプレゼントや割引を用意したりするのも手です。
DMを成功させる秘訣は、受け取った方にどういう行動を促すのか、それを精密に設計することにあります。まさにこの本では、そこを解説していきますので、楽しみに読み進めてください。

〇アナログレコードがカッコいい時代。アナログのDMにも価値がある

ちょっと、話をDMから離れてみたいと思います。
2018年、平成時代にファンを熱狂させた安室奈美恵さんが引退されました。小室哲哉さんのプロデュースで、数多くのヒット曲を出し、アムラーという社会現象まで起こしたのはご存知の通りです。
なぜ、安室さんの話をここで持ち出すかというと、彼女が辿ったレコード業界の軌跡に、今の時代の消費者心理を読み取れるからです。彼女は、CD全盛という時代背景の中で、ミリオンセラーを連発していったのですが、産休ということで休業。復帰した時には、浜崎あゆみや宇多田ヒカルといった新たな国民的歌姫が続々と登場し、かつての勢いは止まりました。
彼女に襲い掛かったのはライバルの出現だけではありません。リスナーはCDを買うのではなく、YouTubeでビデオクリップを見たり、iTunesで音楽はデータで購入する時代に変わっていたのです。そんな中で、安室さんはライブに勝機を見出しました。「ファンと直接、接していたい」という、アーティストならではの欲求からはじまった行動ですが、これが見事に時代に嵌ったのです。
その理由は、消費者心理が、「所有する」から「体験する」に変わっていたからです。普段、スマホでYouTubeを見慣れている人にとって、素晴らしい動画コンテンツよりも、目の前で歌われるライブな興奮に価値を見出したからです。AKB48の成功も、「実際に会えるアイドル」という新しいコンセプトがヒットに繋がったからでしょう。

 音楽業界で言えば、もうひとつ面白い例がアナログのLP版に対しての人気です。私たちの年代なら、「あの大きなレコードジャケットは持ち運ぶのが大変だったな」と思い出される方、多いのではないでしょうか? 学校で友人に貸すため自転車で運ぶのも、傷がつくのを心配しながら運んだものです。
 そのアナログLP版レコードを買い求めるために外国人の方が日本に押し寄せているというニュースを聞いたことがありますか? 欧米では手に取って眺めて楽しい、あの大きなLPジャケットが欲しくて中古レコードを買い求めているのです。データ音楽ではその喜びはないですから。でも、「なぜ、日本で?」と疑問に思うでしょう。それは、日本のLP版はジャケットを保護するビニール袋に入って保管されていた関係で、ジャケットの損傷が少ないという特徴があるからです。


 何を言いたいかというと、人はデジタルやネットといった形のないものよりも、もっとアナログで、手に取って、体験として楽しめるようなものに興味が向いているということです。
 新聞広告や雑誌広告といった、従来のマーケティング媒体が衰退する中、DMは手に取ってもらえる貴重なマーケティングツールとして、その価値を再認識されはじめたのです。
 考えてみてください。DMならば、紙の手触りや、見た目のデザイン、開けたときに飛び出す絵本のような作りもできるし、ティーパックのようなサンプルで味覚さえも届けられる。香るフレグランスDMで、香水だってダイレクトに体験させることもできます。
 ここまでできるマーケティングツールが、他にあるでしょうか?
 DMは古いという考え方は改めてもらう方がいいと思います。今や、DMこそ、人の五感に訴え、顧客の行動に影響を与える手法(センサリーマーケティング)として世界で再注目されている、最先端のマーケティングツールなのですから。

この後の続きはまたアップロードします。

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