第2章 アテンション その4 「DM+インターネット戦略」

紙DMだけでは終わらせない戦略とは?

 最近、DM大賞で高い評価を受けているDMの特徴のひとつに、「紙DM+インターネット」といったメディアミックスを効果的に仕立てていることが挙げられます。
 例えば、美容液のトライアルをDMで送った企業さんは、実際の商品サンプルを送っただけでなく、その後にステップメールという、12回にわたってメルマガ(Eメール)を送ったことで成果を上げました。メルマガでは、生活習慣や肌ケアなどの情報を発信し、それを自社のWEBサイトにつなげて、顧客への教育を行いクロージングに結びつけたのです。
 この方法でいいところは、事前にサンプルが封入された紙DMを送ったことで、企業や商品への関心を高め、顧客に親近感を与えたうえで、Eメールを送ったという点にあります。当然、Eメールの開封率は上がり、その勢いで自社のWEBサイトへの誘導もスムーズに行えたでしょう。
 インターネットの媒体をEメールではなく、LINE@にするということも考えられます。

序章で、20代男性の場合にはDMを受けた後のアクションとして、「インターネットで調べた:22.4%」が最も高いと述べました。インターネットといっても、PCではなくスマートフォンを利用した可能性が高いのではないでしょうか。
そこで、20代男性ターゲットならLINE@登録用のQRコードをDMに入れて、LINE@から何らかのオファを送り、イベントへの集客を後押しするという戦略も考えられるのです。

 ここでLINE@について簡単に説明しますと、

①Eメールのように登録した顧客へ一斉にメッセージを配信でき、クーポンなど、メッセージ以外のコンテンツの配信も可能 ②国内のみで30万件以上の店舗や企業がアカウントを開設している ③1,000通までのメッセージ配信は無料で行える ※5,000人以内までは5,400/月ベーシック、100,000人以内は21,600円/月プロ] *になります。

 最近、LINE@の利用が増えているのはEメールに比べて圧倒的に開封率が高いことにあります。LINEを使用している方ならわかると思いますが、SNS経由のメッセージは個人宛感が強く、ついつい開いて確認してしまうという特徴があるからです。また、解除の方法が少し面倒で、煩わしくても、ついそのまま残してしまうという裏事情もあります。
これと同じように、私が個人的に効果のある方法と考えているのは、携帯電話の番号に付随したSMS(ショートメッセージ)を使った手法です。あなたも、電話して通じなかった人にSMSで連絡をしたり、または連絡を受けたことがあるのではないでしょうか。

SMSは、さまざまなサービスのアカウント認証にも使用されており、「SMS=大切な連絡」という構図が出来上がっています。実は最近、このSMSを使って一斉送信できるサービスが出てきました。つまり、携帯番号を登録すれば、その登録先へコンピューターを使って一斉にメッセージを送信できるのです。これは、100%の確率で見るのではと思います。ネットで「SMS一斉送信」などで検索すると、さまざまなサービス業者を見つけられるので、興味をお持ちの方は調べてみてください。

LINE@も、このSMS一斉送信も、使用に関しては「もろ刃の剣」であることも述べておきます。それは、この媒体がかなり個人宛感の強い媒体であるからです。つまり、余り「売り売りのメッセージ」や頻繁に送信を繰り返すと、顧客から「なんてウザい会社なんだ!」と、逆に反感を買ってしまう恐れがあるからです。こうなっては苦情の電話まで来てしまうかもしれません。よって、ここだというタイミングで、しかも受け取った顧客がメリットを感じるメッセージに限っての使用が良いと思います。例えば、イベント前日に、「明日はイベントです。プレゼントとして○○○もご用意しました。お気軽にお立ち寄りください」といった感じでしょうか。

さて、「紙DMだけでは終わらせない戦略」について話しましたが、ここでも街での具体的に例を挙げて考えてみましょう。
 先ほど述べましたように、20代男性ターゲットを想定しましょう。街の古着ショップはいかがでしょうか。
古着屋さんの繁忙期は春と秋だそうです。確かにこの時期になるとファッションが華やかになると同時に、衣替えを考えつつ洋服ダンスの整理をするような時期です。要らない服を処分したりするでしょうし、新しい服も欲しくなったりします。つまり、古着屋さんに服を持ち込むのも増えていき、それだけ新規の商品がお店に並ぶことにもなるわけです。
 しかし、こういうことは一般の人には気づかないことですよね。そこで、DMで「知ってますか? この時期は良い古着と出会えるチャンスです」といった切り口で、先ほどの話をしてみるのもいいし、さらに「古着を高く売るヒント」のように、古着を売りに行きたくなる情報も入れれば、「古着を売って、そして買ってくれる」という好循環も生まれる可能性があります。
 そして、DMにはLINE@のQRコードを入れておき、例えば「5%買取アップクーポン」などを配布してもいいでしょう。さらには、在庫の中でとっておきの商品、例えば「レアもののジーンズ」といったものを写真付きで紹介するなど、上手にスマホと連動させながら集客をはかるという感じです。

 もうひとつ紙DMと連動させて面白そうなものが、YouTubeです。これからは、ギガ無制限時代になり、さらに動画へのニーズが高まると予想されています。さらに言えば、情報媒体として最も情報量を多く配信できるのが動画です。動画は、音声、映像はもちろん、そこに登場している人のキャラクターや、店舗内の雰囲気まで伝わる媒体だからです。
 例えば、先ほどの古着屋さんのDMでは、古着屋さんであるあなたのYouTubeチャンネルの登録を促すのです。定期的に「レアものジーンズの相場とは?」「古着を高く売るヒント」のようにテーマを決めて動画を配信します。古着好きの顧客にとっては有意義な情報でしょうし、あなたのお店への親近感も高まり、出演しているあなた自身への好感度も上がるはずです。そういうチャンネルを持っていれば、セール情報などのインフォメーションを無料で見込み客に配信することができます。

 YouTubeにチャンネルを持っている意義は他にもあります。YouTubeはヒカキンさんなどのYouTuberがその動画の面白さによって、視聴者を増やしてきましたが、その視聴者は子供やティーンズが多く、購買層には決して強い媒体ではありませんでした。そこで、YouTubeを持つGoogleでは「ただ面白いチャンネル」から、「大人が視聴したがるチャンネル」の拡大に向けて戦略を練り始めたわけです。私自身、Google社内でのプロジェクトに参加させていただき、担当者の方から色々なお話を伺っていました。ここで何を言いたいかというと、ビジネス系のチャネルは今後、伸びていく可能性が高いということなのです。何かビジネスに特化したチャンネルは、その特化した分野のリーダーとして視聴者に認知される可能性があります。そういう意味でも、早めにYouTubeチャンネルを作り、DMなどでも視聴登録を促すのは素晴らしい戦略となるのです。
*LINE@ ホームページ参照

中小企業や個人商店の方へのヒント
 お金ではなく、アイデアで勝負

この章では、「封筒を開かせる2大原則」をお話ししました。復習しますと、[原則①異物感で開けさせろ  原則②個人宛の手紙感で開けさせろ (あなただけ感で開かせろ)]でしたね。異物感で開けさせる方法では、決してお金を掛けなくても、例えば、押し花のようにちょっとしたものでも良いというお話もしました。
この項目のタイトルは「お金ではなく、アイデアで勝負」ということなのですが、そのままお金を使ったDMを見たことがあります。封筒から5円玉が覗いているというギミックで、とりあえずお金を粗末にしてはいけないという思いから開封したのを覚えています。5円玉は「ご縁がありますように」の「ご縁」と「5円」をひっかけて、神社のお賽銭などにもよく用いられますので、「お客様とこれからもご縁が続きますように」というアイデアだったのでしょう。「このアイデアは良いので真似しよう」などとは思わないでください。罰則規定はないものの違法です。郵便局から大量のDMが返送されると思いますので、やめておいた方が無難でしょう。私が見たDMも大昔のことで、郵便局が見落としたのだと思います。
ただ、アイデアの出し方としては悪くありません。お金を掛けなくても、ちょっとしたアテンションを与え、異物感があり、あなたの商品やサービス、または今回のDMのストーリーに合ったものを探してみてください。それを考えることこそ、面白いのです。

例えば、これもジャストアイデアですが、心療カウンセラーが休眠客に対するDMを送るとして、封筒から「バンドエイド」が覗いているとします。何かと思って、封筒を開けると「心に傷をおったら、いつでも訪ねてきてください」というメッセージが書かれているという寸法です。バンドエイド1枚なら、数円というコストでしょう。それを入れるか入れないかで開封率は変わり、封筒の中に書かれているものへの興味もまったく変わってくるのです。ちなみに、なぜ封筒に先ほどの「心に傷をおったら、いつでも訪ねてきてください」というメッセージを入れなかったかは、同居している家族に心療カウンセリングを受けていることが知られないようする配慮からです。

個人宛の手紙感では、手書きのDMが効果のあることもお伝えしました。
その成功事例はかなり多く、DM大賞でも多々受賞しているので、「お金はかけられないけど、労力は惜しまない」という方には、ぜひ、トライしてもらいたいと思います。手書きDの事例はこの後、詳しく解説していきますのでお待ちください。
また、LINE@などの「DM+インターネット」の戦略も比較的低コストで実現可能です。特にお勧めしたいのは、やはりYouTubeチャンネルです。オリジナルの動画チャンネルを育てることは、お金を掛けずに自社の財産を作っていくことになると思います。すぐにでも始めることをお勧めします。これについても、詳しくは後でお話しします。


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