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『D-O-G.』(1)

■「D-O-G.」
-ディーオージー-

犬か、世界か。

「怪獣」「震災」「津波」「噴火」といえば、この国では当たり前の自然災害。政府は生きた天災の襲来に備え、怪獣災害で肉親を失った子供たちを集め、対・怪獣戦の英才教育を施し一律15才で軍人として登用していった。

■更新履歴

[#extra]-4P|2018/6/8 (4P)
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[#03]-16P|2016/4/23 (16P)
[#02]-24P|2016/1/2 (5P)・2015/12/31 (8P)・12/28 (11P)
[#01]-12P|2015/9/1 (12P)
[total]本編テキスト3,900字 + マンガ 82P

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単行本は未発売です。2018年末〜2019年上半期で出せたら…と思っていますが、他の業務との兼ね合い次第で転がってしまう可能性もカナリあります。ごめんなさい。当面はnoteで読んで頂けるとありがたいです。

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[ # 01 ]

怪獣のいない時代のことは、
知らない。

「怪獣」「震災」「津波」「噴火」
といえば、誰もが意識する、
ふつうの自然災害。

怪獣は、

雨が降るみたいに、
台風が来るみたいに、
雷が鳴るみたいに、

現れる。


気象予報士の上位資格に、
怪獣予報士なんてあるくらい。

 ニュースでは
ただの気象予報よりも
怪獣予報も読める予報士が人気だ。

怪獣は
天気のようなもの。
私たちにはどうしようもない。



どうしようもないけど、
雨が降るなら傘を差したいのが人間で、
昔の偉い人たちは、
怪獣災害専任機関《特衛府》を作った。


《特衛府》は怪獣災害のたびに現地へ
『市街防衛軍』を派兵して、
総攻撃を仕掛け、国の全滅を
ずっと、防いできた。


けれど、雨に終わりはないから、
しばらく止んだと思えば、
どうせまた降る。
その都度、多くの人が亡くなった。

市民も、軍の人も。




台風が毎年来るみたいに、
雨が毎月降るみたいに、


怪獣は、いつだってやってくる。 


傘を手放せないこの国の
みんなの傘、《特衛府》



̶̶̶̶ほぼすべての職員が、
怪獣災害遺児だ。


稀にわざわざ志望して入府する
変わり者がいるけど、
職員が100人居れば99人は、遺児。

怪獣災害で肉親を失った子供は
《特衛府》が運営する施設に集められ、
税金で
対・怪獣災害の英才教育を受ける。

そうして、

十五歳から、国民のために戦う。

「税金で育ったんだから当然!」
と教わって、
災害現場に命を懸ける。



"私"も、

 お姉ちゃんも、

十五で軍人になった——————。




実戦に不向きだった"私"は
すぐに戦場から降ろされて、
兵器開発部門の研究員という辞令が出た。

一方、


お姉ちゃんは、
単独の実戦も
現場で指揮を取るのも向いていて、

『市街防衛軍』で最年少の
将軍になった。


お姉ちゃんの軍服は、
勲章だらけ。






…—————————。

ところで、



「それ」は、


『市街防衛軍』の空軍で長年
指揮を務めたお姉ちゃんが、
大将を退任して、


私の勤める部署『兵器開発部』の
新しいトップとして
転属してきた日のことだった。


これまで最前線で
何十体もの大怪獣を沈めてきた
お姉ちゃんが、


どうして前線を退いたのか。

どうして、

実戦で役立たずの落ちこぼれが
集まった
私の部署なんかに
異動してきたのか。



"私"には分からなかった。
























兵器開発部員の中から、
お姉ちゃんは、

三人だけ選んだ。




一人は、


『兵器開発3課・民間シェルター開発班』で
班長をやっていた犬神さん。


犬神さんは、《特衛府》には珍しい、
遺児じゃない職員。

《特衛府》は怪獣を倒すことばかりで
民間用シェルターが充実していないことに
危機感を覚えて入府したらしい。



もう一人は、鈴ちゃん。


鈴ちゃんは怪獣災害遺児。 

家族全員を目の前で
家ごと
踏み潰された、

私たちに、よくあるタイプ。






最後の一人は、









"私"だった。

お姉ちゃんは職場で私を、
名字で呼ぶ。


私は、二人とも名字だと
ややこしいから、
お姉ちゃんを「お姉ちゃん」と呼ぶ。


職員はほとんど
みんな同じ施設で育った幼馴染か
巨大家族みたいなものだから、

たとえお姉ちゃんが将軍でも官僚でも、
この程度の馴れ合いを咎める人はいない。


この日、

私は


わけも分からないまま、

『生物兵器開発課』に

配属された。





[#02]

































































[#03]

















































































[#04]



特衛府に保護されて以来、
私も、お姉ちゃんも、
ずーっと、寮に暮らしてる。

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