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"顔のない" Jクラブのブランド戦略

下記ノートを拝見し、僕なりに今のJクラブに接する中で感じる”ブランド戦略”について思うことを書いてみようと思います。

ほぼ全てのJクラブは”顔のない”クラブ

僕はSHCというスポーツ経営人材の育成と知恵の集積を目指したビジネススクールに通わせてもらう中にJクラブと深く接し、現状の実情を知る機会を得ました。

僕は普段はリクルートでマーケティングの仕事をしていたり、副業でいくつかのスポーツクラブのマーケティングのサポートをしていたりするのですが、Jクラブは正直どのクラブも"顔のない"クラブに感じます。

顔のないというのは、「このクラブと言えば●●!」という印象がないという意味においてです。

もちろんJサポの皆さんのように日常的に深くJクラブと触れ合っている人にとっては、「攻撃的なサッカーがあって●●」とか「クラブのフィソロフィーが●●」みたいな話はあると思うのですが、Jクラブと深いかかわりのない(=ファンという意味において)僕のような外部の人からすると、どのクラブも同じようにうつってしまいます。

これが意味するところは、「お金を投資する広告先」として、外部の人が投資するのが難しいということです。何故なら、印象のないクラブにお金を投資するメリットが少ないからです。基本的にはクラブにスポンサードしている企業は広告価値を買っているわけです。(今はなってないですが)そう考えたときに、全然印象のない(=ターゲティングされているターゲットのいない)クラブに投資するという意思決定にはならないわけです。

ドルトムントに見るブランド戦略

海外クラブのブランド戦略についてはこちらの記事が詳しいと思いますが、

ドルトムントはブランド戦略を徹底し、こだわって行っています。以下参照ください。

実は、ドルトムントは2005年に倒産しかけている。巨額の放映権収入を見込んで高額年俸選手に投資し続けた結果、約200億円の負債を抱えたのだ。経営陣の交代や資金計画の見直しなど、クラブの抜本的な経営改革に着手して倒産を免れてから、ドルトムントは「ブランドマネジメント」こそが復活を遂げるために必要だと考えた。その中身は、「ドルトムントらしさ」を明確につくることであった。
1909年創設のクラブが、実に100年近くもの間、クラブのブランドつまりアイデンティティーの構築を考えてこなかったのだ。
Intensityを真ん中にして、周囲には3つのアイデンティティーを描いた。「Authenticity(本物)」「Ambition(野心)」「Bonding Force(結束力)」。これらは全て、ドルトムントを象徴する表現であり、軸となる行動規範、価値観を貫いている。

つまり、ドルトムントは経営危機に際して、クラブのブランドマネジメントを徹底して強化したわけです。

ビジネス的な観点で、これの意味するところは非常に大きなものがあります。
それはつまり、広告主からすると"顔のある"クラブになったと言えるからです。

前述のドルトムントのブランド戦略を図示すると以下の通りです。

つまり、Aという企業がとあるお菓子の商品を販売するとしましょう。
前述の通りドルトムントが「熱狂」というキーワードを中心に強いブランドイメージが一般に定着している場合、ドルトムントにスポンサードすることでそのお菓子の商品のブランドイメージを強化できるわけです。

つまり、この企業にとって、ドルトムントは広告配信先としての価値が高いと言えるわけです。(※もちろんとある企業に刺さるということはとあるクラブには刺さらなくなるということを意味しているのでそのブランドをどのようなイメージにするのかはかなり大事です)

また、ドルトムントが素晴らしいと言えるのはこのブランドイメージを徹底して浸透させる努力を行っている点です。(※以下上述のリンク先より引用)

マーケティングサイドの人間としては、素晴らしいなと思うわけです。

大事なのは"戦略"と"戦術"の使い分け

ドルトムントと日本のJクラブの大きな違いは、"戦略"と"戦術"の使い分けを行っている点です。

ドルトムントは戦略を策定し、その戦略を強化するための戦術を実行しているわけですが、日本のJクラブは戦略ないままに、戦術を実行しているわけです。

今のJクラブの広報戦略をみるに、
戦術のブレスト会(アイデア出し大会)になってしまっている
わけです。

ドルトムントは、
「Intensity(熱狂)」というクラブイメージを強化するために、クラブの広報戦術を行なっているわけです。

一方、例えばトーレスで話題になったサガン鳥栖はトーレス加入時、「ありがトーレス」という施策を行ったわけですが、何のブランドイメージを強めるためにこの施策をやったのか?は正直疑問です。

これはつまり、「戦略」はなくて、「戦術」が先行してしまっているわけです。


もちろん、話題性はあるかもしれませんが、それは単発で終わり、クラブの資産として蓄積することはありません。

穴のあるバケツにどんだけ水を入れても、一向に水が溜まらないように、いかに早期にクラブとして大きく丈夫なバケツを用意し、そこに資産を積み上げていけるか。

まとめると、今のJクラブに必要なのは、『戦術』ではなく、『戦略』なわけです。

そうでないといつまでも、今の"顔のない"だけクラブとして、衰退の一途を辿るでしょう。

Jクラブの仕事が忙しいのなんて、もう百も承知なわけです。
時間がない、お金がない、人がいないは理由にならないわけです。
そんなこと言ってたって何も変わらない以上、何かしらアクションが必要なのは自明でしょう。

僕もJやFリーグクラブをいくつかサポートしていますが、変えられるところから変えていきたいと思っています。

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