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【最強の写真学習】これで基礎を固める  第5章.効果的な構図を考える

おはようございます。
アラスカの中島たかしです。

明日からフェアバンクスでオーロラライブ&撮影を行ってきます。それでバタバタで、すこし投稿があいてしまいました。

では、今回も米国で写真学習しつづけている僕が、欧米の情報をベースに、日本語で解説をしてゆきます。

全10回にわたって行っているのは、海外の写真参考書 Creative Nature & Outdoor Photography という最強の写真教科書についての解説です。

この第5章でも、著者ブレンダの本書のゴール「撮影の前に感動のワケを考え、それを伝える術を学び、いま読んでいるあなたがそれを習慣にすること」これを見据えて、、、

☆いま学んでいる基礎的要素は、表現にどうつながるのか

ということを、【表現ポイント】という形式で、記事の中でハッキリわかるようにしていきます。

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【まえおき】

この5章で著者のブレンダさんがはじめに述べているのは、「撮影のときに構図を意識し続けていく習慣を身につけさえすれば、多方面からものを見ることが、直感でできるようになる」と言っています。

つまり、そうなれば、あなたの「感性が拡張された」と言い換えても差し支えないでしょう。これは序章でも申しました、本書のゴールでもあるわけですね。

そしてこの章での目標は、力のある良い写真を作るための、「効果的な構図」です。

5章のはじめ(本書P81)にブレンダは、すばらしい比喩を我々に与えてくれます。

「すばらしい楽譜には、注意深く配慮された、音と沈黙(間)がありますよね。これに対して、すばらしい写真には、注意深く配慮された、物体と空間(=空白部分)があります。」

そう、写真は芸術ととらえて差し支えないのです。

また、第一章でもお話したように、「もしあなたが、何を伝えたいのかをわかっていなければ、どうして見る人がそれを知ることができるでしょうか。繰り返すようですが、あなたの明確なビジョンをもつことが、構図を考える上でのファーストステップです。

ということで、今日の結論を見てみましょう。

【今日の結論】

「あなたの<伝えたい>のために、5W1H(なにを、どこに、どうする)を意図的に、そして効果的に写真に盛り込んでゆく」ということになります。

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お話する内容は、写真の中に写るさまざまな要素の配置のしかたを解説したものになります。

blog 目次用の枠第5章

【記事ジャンプ用】


今日は7つあって、他の章にくらべて多いので、要点だけを絞っていきます!しかし、著者ブレンダさんの想いは削らずに行きますね。

では1つ目から行きましょう。

今日の内容1
【対象を強調する】

僕たち人間は見たいようにしか世界を見ません良くも悪くも、そこがカメラと違うところです。

当然、現場にいるあなたが感動したものを、それが何であれ撮影しようとした場合、その対象にひいき目を加えるわけです。(ファインダーを覗いているときでさえ!)

そして、10年以上写真を撮っている僕でもよくあることですが、撮影し終わって、その対象が思ったほど小さくて迫力がなかったり、余計なものが写真の中にあって、メインで捉えた対象の邪魔をしていたり…

なので、はじめは思い切ってやります。

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この「重きをおくものを決める」では、著者ブレンダさんが「覚えておいてほしい」と言っていいるのは、対象が写真の四角の中を占めるのに、十分な大きさをたもっているのか確認をしましょう、ということです。

・大きさが足りなければ、足で近づく。近づけないなら望遠レンズを使う。
・角度を変えて上から写したり、しゃがんで下からのアングルにすることで、邪魔なものをなくすことができる。
・絞りを開放して背景をぼかす
・風景写真の場合は、前景(目の前)に対象をおく

☆表現ポイント
たとえば動物の顔であれば、まずは撮る対象にグッと近づき、画面に大きく配置する。そのとき背景にも配慮して、「空ぬけ*」や顔の色と補色*関係の背景色を探して配置することで、迫力が出る

*空抜け:下のアングルから撮影すると得られやすいのが、背景にすべて空を配置する方法。快晴であれば、シンプルなブルーの背景にして対象を際立たせることができる。

*補色:青であればオレンジ、赤であれば緑のように、互いの色を引き立て合う2色の関係のことです。

今日の内容2
【バランスを考える】

Balance is harmony バランスはハーモニーあるいは、つり合いを捉えるセンスだとブレンダさんは言っています。

3要素に分解すると、
・サイズ
・形
・その配置

に分けられます。

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ここで注意されたいのは、写真のフレームの中でバランスをとるときは、落ち着いた感情、秩序ある「まじめな」自然の表情を捉えるときに役立ちますが、逆にアグレッシブな躍動ある表情を隠してしまう、という側面もあります。

ブレンダは、バランスには2種類あると言います。

ひとつは、シンメトリー(左右対称・上下対象)
もうひとつは、アシンメトリー(非対称性)

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しかし、あまりに左右対称が完璧すぎると、人工的です。いやらし感じが出るんですね。「自然とは、無秩序に見える中にさりげない秩序が顔をのぞかせている」というのは僕の自然の捉え方なのですが、自然は本来そこまで対称的なものではないはずです。だから、完全なる左右対称は、人工構造物のような印象を与えてしまうのですね。

ぜひ、非対称性(アシンメトリー)のなかでバランスを掴むトレーニングをしましょう!

☆表現ポイント☆
完全に対称にしないほうが、自然写真ではバランスが取れる。たとえば、違うサイズで同じもの(石や葉など)を配置してみると、アシンメトリーのなかでバランスが取れる。


今日の内容3
【シンボルを置く、という考え方】

はじめにイメージしてみてください。

どこかの畑の前で、カゴに詰まったたくさんのトマトやきゅうりの写真、その野菜は艶があり、さっき小川で洗った水滴までついています。これを見せられると、「夏の清々しい収穫」の印象を強くあたえることができます。逆に、閑散とした茶色い畑で、枯れた植物が立ち並び、カゴが遠くに裏返しに転がっていると、「夏の干ばつ」の印象を与えるでしょう。

前者の写真のなかのプロポーションとしては、新鮮なトマトときゅうりがシンボルとなって、夏、収穫を比喩(メタファー)となっています。比喩というと難しいですが、新鮮なトマトは夏のシンボルなわけですね。

トマトは赤いですから緑色のきゅうりとは補色関係にあり、際立ちます。ですので、トマトを極大に大きく配置しなくても、色と比喩によって力強い表現の写真となる例です。

すこし難しいでしょうか?大丈夫でしょうか。

じっさいに本書では、アメリカの農園風景のなかに、Barnといわれる農家の赤い倉庫と青空の写真が掲載されているのですが、これは西洋の人々のノスタルジーなんですね。アメリカの農村をあるくと、この倉庫はことごとく「赤い」なぜか…(笑 
日本の皆さんには伝わりにくいと思ったので、ジブリアニメの「となりのトトロ」の中に出てくるメイとサツキの穫った夏野菜のようなイメージでお話しました。このほうが日本の郷愁を伝えます。

☆表現ポイント
大きさや形ではなく、対象の意味(シンボル)を考えて、それを写真に取り入れることで、特別な感情を伝えることができる。(文化的な意味合いなども考えるとより写真が深まる)

今日の内容4
【スケール感を出す】

たとえば屋久島の縄文杉や、北海道のオオワシなど、普段それらを見ることのない人が写真を見たとき、対象の大きさが実感できずに迷ってしまいます。

ものの大きさを感じてもらうために、自然写真のなかに、我々が日常で目にするものをいれると、より感じが伝わります。

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人を入れると「自然写真とは言わない」という考えをお持ちであれば、動物や、農村にある小屋をいれるとわかる写真になります。

特に、人をいれてスケールを出すと、臨場感が出やすくなります。

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☆表現ポイント
・風景の広がりの中に、身近なもの、日常で目にするものをいれることで、大きさの実感を見る人に伝えることができる。この場合、通常は前景に物や人を配置する。


今日の内容5
【Less is More 削ることで深みを出す】

英語圏では、よくLess is more. ということばが日常会話で頻出します。意味合いとしては、「少ないほうが豊かだ(あるいは意義深い)」ということです。

ここは、僕個人的な意見ですが、日本人の強いところだと思っています。なんのお話かというと、わびさびの世界。詩的な情緒ある写真を狙った場合に効果的な、空間の使い方です。

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著者のブレンダは、ここで絵画と写真の違いも語っています。

「絵画は、なにもない空白のキャンバスから、何を描くかを考えて塗りつぶしてゆく。しかし写真は、すべてキャンバスに内容が詰まった状態から、何を省くか、を考えながら制作してゆく

もちろんこれは、風景写真だけでなく、決定的瞬間を狙う街のスナップや動物写真にも言えることです。

「写真のゴールは、いかにシンプルにするか、ともいえる。」

また、写真家ピート・ターナーの言った言葉をとりあげて、

「Ultimately, simplicity is the goal - in every art」
「究極的に言えば、シンプルさこそがゴール、ということがすべての芸術で言える。」

つまり、シンプルにすることは難しいが、すべてのアートに共通する目標でもあるんだと言っています。

☆表現ポイント
一枚で語ることは一つにする。自分の伝えたい内容に関わりのないものは、全て排除してみる。

これ、本当に練習には効果的です。写真が芸術だとすれば、プラスの芸術である他の芸術(絵画、彫刻、書道、)と異なる「写真は引き算の芸術」であることが体験できます。


今日の内容6
【タテ位置?ヨコ位置?】

まずはお使いのカメラで写真を撮ったとき、縦と横の比率はどうなっていますか?

iPhone10だと、4:3です。僕がよく使うSONYのA6300は3:2です。これが動画だと普通は16:9になります。様々ですね。上級機種や、iPhone11以上だと、この比率を切り替えることができたりもします。

横に広ければ広いほど、それはタテ位置で使われることはまず無いとお考えください。動画の基準である16:9なんかは、縦で見ると、見づらくて仕方ない。

つまり、ヨコ位置の構図が基礎です。タテ位置は、少し上級向けということになります。難しいというよりは、扱いにくい、と言えます。

・ヨコ位置は、平穏な、落ち着いた表情を出しやすい。
・タテ位置は、力強く、ダイナミックな表現ができる。

と、まずはこう考えておきましょう。

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☆表現ポイント
ここでは「画面で優勢なものは何か」&「対象の形はどうなのか」によって使い分けが生じます。たとえば、そびえ立つ木々の高さ、クジラのブリーチングをメインで表現したい場合は、必然的にタテ位置になります。


今日の内容7
【リズムある構図】

さて最後のパートになります。

音楽で考えてみましょう。知らない歌でも繰り返し繰り返しそのリズムを聞いていると、どこかで自然と流れてきたり、心地の良いものに変わっていく経験をされたことのある方は多いのではないでしょうか。

写真でも、リズムは詩的で心地よいものになります。

このリズム効果は、同じものの繰り返しが一枚の写真の中で使われます。組み写真の場合では、複数枚でこの効果を使う場合もあります。

▶注意すべき点は、使うとき、独りよがりにならず、つまらなくないか、を考えるということです。ただ単純に同じものを並べると、つまらなくなりやすいのが、このリズムです。

ここで「ずらし」を使うのが効果的です。真面目で不器用な僕の性格では、はじめは難しいもののとらえ方でした。しかし、意識して続けていくうちに、徐々に、単調でつまらないものの繰り返しから、すこし意味のあるものの繰り返し、「1,2,3,4、A、6,7」のように、リズムの中にずらしを入れられるようにもなってきました。

☆表現ポイント
まずは、3つか4つの同じものを斜めに配置してみる。そしてABCDと繰り返しが続いているなかの、AとBの空間的な距離を他と均等にして撮ると、リズムが生まれる。自然の中では特に、余計なものが入らないように注意する。邪魔が入ると、雑音と同じで、リズムは壊れる。

さらに発展型として、AとBの距離だけほかとの間隔と違うように配置したり、自分で動いてそのリズムに、ずらしを入れてみると、より面白いものになりやすい。


【今日のまとめ】

では、今日のまとめです。長かったのでラップ・アップしておきましょう。

まず、

・対象を強調する(何を)
・バランスを考える(どのように)
・シンボルを置く、という考え方(どこに)

この3つを考えて、写真のベーズをつくる。そのうえで、

・スケール感を出す
・Less is More 削ることで深みを出す
・タテ位置?ヨコ位置?
・リズムある構図

これらのテクニックあるいは、「詳細にわたる配慮」を加えていく、という撮影の段取りになります。

練習を続ける上でやはり奥深いのは、Less is Moreの項目です。今日の第五章の「効果的な構図を考える」の最終ゴールは、削ることで深みを出すということになるでしょう。

今回は、以上になります。

このシリーズではブレンダ・サープの著作Creative Nature and Outdoor photography というこの本をベースに、本書で書かれている内容をご紹介しつつ、僕がこの本で学んだことと、実際に外へ出て撮影したり、応用したそういった作例なんかもご紹介しながら進めていきたいと思っています 。

この記事をここまで読み進めてくれた方は、おそらく熱のある方ですね!写真の作品づくりも考えられている方だと思います。

これからも英語圏の教材をベースに、ハイクオリティな写真を制作するための内容を少しづつ記事にしていく予定です。

ぜひコメント・ご指摘くだされば幸いです!

                            中島たかし
              Nakashima Photography 公式ホームページ


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