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【最強の写真学習】これで基礎を固める  第2章. 光: いちばん重要な要素

おはようございます。
アラスカの中島たかしです。

今回の第二章も、米国で写真学習しつづけている僕が、欧米の情報をベースに、日本語で解説をしてゆきます。

10回にわたって行っているのは、海外の写真参考書 Creative Nature & Outdoor Photography という最強の写真教科書についての解説です。

なぜ最強かといえば、この本は、テクニックだけでなく、「何を伝えたいのか」という、撮影をする上で根本に添えるべき考えが身につく本だからです。詳しくは、前の記事を見てください。

今日は第2章、Light: The Essential Element 光:いちばん重要な要素、と題してはじめていきます!今日辺りから写真用語もよく出始めますので、掴んでおいてくださいね。用語は太字にしておきます。

ところで、さすが著者のブレンダさん。重要な光のことを始めの方の章に持ってきてくれています。

この第2章でも、本書のゴール「撮影の前に感動のワケを考え、それを伝える術を学び、いま読んでいるあなたがそれを習慣にすること」を見据えて、

☆いま学んでいる基礎的要素は、表現にどうつながるのか☆

ということを、【表現ポイント】という形式で、記事の中でハッキリわかるようにしていきます。

今回は、本書の内容が濃いので、さっそく今日の内容に参りましょう。

blog 目次用の枠第二章

【記事ジャンプ用】


【今日の内容1】
カメラは光をどう見るのか

その答えは、カメラは人の目よりも限られた光の幅を捉えつつ、見えるすべてを写し取るということです。

カメラをやる大前提として、カメラが見る世界と、人の肉眼がとらえる世界はちがうということを知っておきましょう。

<限定的な光の幅>
1つ目の違いは、見える明暗の幅が違います。科学技術が向上し、いくらセンサーのダイナミックレンジが広がったとはいえ、まだまだ肉眼のほうが遥かに明るさの幅を広く捉えることができます。以下の2枚の写真を見比べてみましょう。

画像14

この写真は、「白トビ」と言って、目では見えている明るい細部も、カメラでは捉えきれず(カメラにとって明るすぎてデータ0の状態:正確には明るさ255以上)そして、空と川、岸の一部の白の部分は何も写っていません。

左の暗い森に露出を合わせて撮ると、光があたっている右の森が、明るすぎてしまうのですね。

逆にそれを利用する、という手法もないことはないですが、、、

そして、その森のなかにいる一羽のハクトウワシを写そうとしたとき、

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つぎにこちらは「黒つぶれ」といって、白トビの逆。肉眼では見えている暗部も、カメラが捉えることができずに、全く光が入ってこないデータゼロの状態。同様に、暗い部分には何も写っていません。

もちろんこちらにも、そういう表現手法は存在します。

※どちらも2014年に撮影した写真ですが、このときほど森の中で地味な配色の黒クマやハクトウワシを撮ることの難しさを実感したことはなかったです…

以上が、1つ目の違い。カメラが見る限定的な光の幅でした。

<すべてを写し取る>
2つ目の違いは、逆説的で少し込み入りますが、表現の上でとても重要になりますので、ついてきてくださいね(笑

簡単に言うと、カメラには、あたりまえですが「思い」や「注意」というものがありません。そして逆に、人は何を見るにも、視野に写っているどこかに注意を向けるようになっています。この違いがあります。肉眼で見ている周辺視野にあるものは、写っていますが見えていませんので意識に上ってこないのです。つまりこれは、見ていないと同義と言えます。

これをカメラの場合だと、字義どおり「すべてを写す」ので、四角いフレームに収めた段階で、あとになって余計な木の枝が入り込んでいることに気がついたり、被写体の背景に同系色の物体が重なっていたりすることに気が付きます。

当たり前のようで見過ごしがちなところですが、これこそが、撮影し終わったあと、画像を見たときに思った写真と違う、と感じる最大要因でもありますので、ぜひとも、

「人間は見たいように(主観的に)しか世界を見ない、しかしカメラはすべてをありのままに(客観的に)写すもの」

だということを覚えておいてください。

では、どう使い分けるのか。

自分が注目した対象を強調するためには、まずは光を読み、カメラにそう写してくれるよう指示を出して撮るということが必要になってくるわけですね。

以下にそれらを見てゆきましょう。

ここでの【表現ポイント】は、見るためのポイントとしてまとめると、

▶特に晴れた日中は、明暗の差が、物体の「影」によって出やすくなる。自分が狙いたいポイントに対して、その光が強すぎないか、あるいは弱すぎないかをよく見極めるのがまず先決。そして、フレームの四隅まで意識して撮影する。


では次に行きましょう。

【今日の内容2】
Natural Light 自然光の特徴

自然光とは、つまり太陽のことです。スタジオ撮影をしている人はHMIなんかをご存知かもしれませんが、屋外では反射などの例外を除き、とにかく一灯ライティング。「太陽」その方向、強さ、色を知ることです。

まずはじめに分解すると、太陽光には直射日光と雲あるいは霧による拡散光に分けられます。

僕はとりわけ、やわらかい拡散光が好きで、言ってしまえば太陽出てなくて雲天くらいが丁度よい(笑 と思っている方なのですが、

【表現ポイント】
▶力強い絵にしたい時はキリッと締まるダイレクトな光が、コントラストや対象物を際立てるのに役立つ。
▶逆に情緒ある落ち着いた表情をもたせる場合は、光が分散された、拡散光での撮影が、その表現を際立たせる。

まずはこの2つの違いについて意識しておきましょう。ですので、本当に言えることは、本書でブレンダさんも言っていますが、

「晴れているから気分よく撮影に出かけるより、曇っていたり嵐のあと、出かけるが億劫な気分のときのほうが、実際に光は良いことが多い。」

これをぜひとも覚えておいてください。

これを体験知として身につけ、慣れてくると、気分が天気に左右されにくくなるので、悪天候のなかの撮影でも、自分の感性を開放できるようになるでしょう。

あ、ブレンダさんが付け加えています。

「曇りや雨のときこそメモリーカードをたくさん持って出かけましょう!」


【今日の内容3】
光の方向

このあたりから、学ぶ内容がカメラマンっぽくなってきますね。

本書では、4つに分解して、トップ、フロント(順光)、サイド(斜光)、バック(逆光)について書かれています。この順は、ドラマチックになりやすい光の順でもあります。

まずは、高難度の「つまらなくなりやすい」ものから行きましょう。

<トップ>

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南東アラスカの森に住む Western toad

カエルの目の反射を見ればわかりますが、この写真は上からの光です。直射ではあまりにきつい光なので、木漏れ日となった柔らかい光が林床を照らしています。とくにドラマチックでもなく、おちついた表情の写真です。

<フロント>

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アラスカの深い森に住む Sitka black-tail deer (オグロジカ)

ややナナメから入ってはいますが、ほぼ僕の後ろからの光で、シカにまっすぐ光が、しかもけっこう強めにあたっています。こちらもドラマチックにする意図は諦め、正確にキレイにを心がけて撮ったものでした。

動物の表情や体のディテール、生息環境なんかをハッキリと写し撮りたいときは、順光は王道です。ま、王道とは逆につまらなくなりやすいものでもあるわけですね。写真展などでは展示しない写真になります。

<サイド>

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アメリカミズバショウ

アラスカやカナダのミズバショウはなぜか黄色いんですよね。この写真は、光が森の中に横から入ってきています。花弁がディフューザーとなって、内側の茎をやわらかく写し込んでいる部分が好きです。なにやら花に虫がついていますが、これは正直に言うと、撮影後に気が付きました…。

光が横からになるだけで、やや情感が入りやすくなります。

<バック>

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キョクアジサシ

やや上からですが、逆光つまり、カメラを光のある方向へむけて撮影したものです。そのためゴースト(画面内の緑色の球体)が入ることは予測してました。もう少しゴーストがアジサシに近いと良かったのですが、難しかったですね。

バックライト(逆光)は朝夕の光を使うと、より情緒的に、ノスタルジーの感覚なんかも引き出せます。


【表現ポイント】
▶対象物を見つけたとき、光の方向を再確認する。それは、あなたが出したいムードに適った光だろうか。
のどかな印象・平穏な風景はトップやフロントが相性がよく、シックか、逆にドラマチックに仕上げる場合は、バック。対象を立体的に際立たせたいときは、サイド(斜光)が有効になる。

▶バック(逆光)でシルエット撮影したいときは、その適正露出を出すのが少しむずかしい。その場合、いちど被写体と太陽を入れずに、背景だけの画面でカメラが出す露出値をとる。その値をロックして(AEロック)被写体を撮影すると、背景が適正露出を得たシルエット撮影が可能となる。(以下の写真)

画像9


【今日の内容4】
光の色について

あまり詳細を語れないのが残念ですが、基本的に朝夕は太陽の黄色みが強く、日中だとやや青みを帯びるものの、太陽の光というのは、白からやや黄色寄りの色の光です。

この光が地球上に降り立つとき、あらゆるもの(植物の緑や氷の青さ、海、木陰、水晶や鉱物片の混ざった砂漠など)さまざまなものに反射したり、透過することによって、我々が見る可視光線の範囲内で発色し、我々の網膜を刺激し続けています。

文章表現がどうかはさておきですね、光とは色の全体のことであり、色とは光の部分であるということですね。

ここでは、屋外から離れて、撮影したあとのお話も少ししておきましょう。

ホワイトバランスのことをすこしお伝えしておきます。(※ホワイトバランスは、写真をやる上で非常に重要なコンセプトなので、中級編をどこかでやるときに、詳しく扱いたいと思っています。興味ある方は、僕のこちらの記事も参考にしてみてください。)

色温度ともいわれるホワイトバランス(WBとも略されます。)は、基本的に暖かみのある黄色よりの色か、あるいは青よりの色なのか、撮影現場で判断してカメラに指示します。

先程の話にもあったように、カメラは我々が見たようには捉えませんので、現場の光を見て、どういう色の全体的な写真になるのかを想像します。そして、自分の表現によせるために、カメラに指示を出すわけですね。

*通常は自然写真においてはオート・ホワイトバランス(AWB)にしておけば、大きく外すことはありません。

下の画像を見てみましょう。

画像7

この赤枠の中にあるバーがWBをあらわしていて、デジタルデータでは数値として出ます。この写真の例では、5100とありますね。

WBの説明画像 copy

これは実際の風景よりも、すこし「青みが強い」写真でした。

wb説明画像2

さっきほどの5100という数字を5800、つまり暖かみのあるほうへ色温度をよせました。

え、同じ写真にみえます?

上の2枚の黄葉の写真が、違う色温度の写真だと判断できるようになってください!(笑
霧のあたりを見るとわかりますか。いまこのnoteのWEB上であらわしているので少しわかりにくいのですが、WBを700も移動させると、印刷するとよりその違いは顕著になります。

【表現ポイント】
現場で光の色をよく観察し、なるべくその場で色表現を完結させる。そのときの風景と撮った写真の色を見比べる*
そしてホワイトバランスを操作して、自分の表現に近づける。

※これはできれば現場で行うのが良いですが、厳密に言うと、カメラのバックモニターも正確な色を再現しません。

※僕の場合は、「自分が見た風景に限りなく近づける」ということをモットーとしているので、それが表現であり、そうなるようカメラに指示を出しています。繰り返しますが、カメラは、僕が見たようには写してくれません。


【今日の内容5】
フィルターを使うことによる光の調節

ここは簡単に述べるにとどめます。ブレンダさんは、表現の幅を広げるものとして、ページを割いています。まずは遊び感覚でやってみるのが良いと思います。

ここでは、2点お話しておきます。

まずはフィルターのなかで一番有用であるとされる、偏光フィルターです。

見たほうが早いので2枚見比べてみてください。

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偏光フィルターなしの写真

画像11

偏光フィルターありの写真

間違い探しみたいですが、違いはわかりますか?

偏光フィルターあり、のほうでは水たまりの反射が消えています。このように水が多い場所や、雨上がりの撮影に出かけるときは重宝します。

ちなみに、これはデジタル現像でこの反射だけを完全に消すということはできないので、そういう点でも偏光フィルターは利用価値があると思います。

2つ目は、どのフィルターを装着しようが、光の透過率は下がるということです。太陽からの光がカメラのセンサーに届くまでに入る光を100%とすると、透明の保護フィルターを付けていた場合入射で4%減少、出ていくときにこれまた4%減少し、フィルター1枚で8%光が失われます。くわえて偏光フィルターまでつけていると、20%ほど落ちるので、その分、画像のクオリティが下がるということを忘れないでおいてください。

【表現ポイント】
フィルターは必要かどうかをよく見極める。太陽の光に対して90度の角度でアングルをとり偏光フィルターを使うと、反射を抑えた、コントラストの高い画像が得られるが、その際に光がすこし損なわれることを覚えておく。

【今日の内容6】
本書から学んだ僕の作例4

作例4

こちらはアラスカ州アンカレッジから車で20分いったところのイーグル・リバーというところで、真冬の12月に撮影したものです。

構図のテクニックも駆使していますが、今日は光について注目してみます。

光の方向は、ほぼフロント(順光)ともいえる右後ろからのサイド(斜光)です。夕暮れ時ですが、僕のいる場所は渓谷ですでに日が落ち、光の色は「青の時間帯」に差し掛かって、全体的に夜に向かう青さがあります。これに加えて、やや暖かみのある山の頂の光(アルペングロー)が入っています。

このときの表現を、詩的な散文で表していますので、ご紹介させていただきますね。

冬のイーグルリバー
Nikon D300 f/18 ISO 200 32mm 0.5 sec
撮影場所:Eagle River

 一年の中でもっとも日照時間が短くなる十二月は、太陽が低いため、山脈に囲まれた渓谷の川に日が差し込むことがない。暗さ、寒さ、虚しさ。アラスカの冬の風景を表す冷酷さのなかに、何か気持ちが暖かくなるものはないだろうか。寒さの中の動物の体温、といったようなことでもいい。冬に野山を歩くとき、僕はいつもそのように自然を見つめていた。
 遠くの雪山に残照があたり、赤みを帯びてきている。赤や黄色やオレンジ色は、そのとき僕が探し歩いていたものにとても近かった。暗く青い影に覆われた谷間の河川に、水の停滞するところを見つけ、山の赤を、川の青い影の中に寄せるように光の反射を見る。赤みが最も強まるほんの数十秒の間、かすかに温まる冬の風景をみた。
 カメラを水面につくかつかないかという低さにセットし、近いものをより近くに寄せることで、遠近感を出す。つまり、青く寒い川面と、赤く温かく染まる山の頂きの距離はまだ遠く、春を感じるにはまだ早すぎる。


以上になります。いや、今日は長かったですね。ここまで読んでくださった方、お付き合いくださりありがとうございます。

この記事をここまで読み進めてくれた方は、おそらく写真の作品づくりまでも考えられている方だと思います。

これからも英語圏の教材をベースに、ハイクオリティな写真を制作するための内容を少しづつ記事にしていく予定です。

ぜひコメント・ご指摘くだされば幸いです!

                            中島たかし
              Nakashima Photography 公式ホームページ




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