見出し画像

【最強の写真学習】これで基礎を固める  第10章. 自分の上達をたしかめる

おはようございます。
アラスカの中島たかしです。

今日も、米国で写真学習しつづけている僕が、欧米の情報をベースに、日本語で解説をしてゆきます。

10回にわたって行っているのは、海外の写真参考書 Creative Nature & Outdoor Photography という最強の写真教科書についての解説です。

今日が最終の第10章となりました!(とはいえ、本書内のコラムを追加する予定なので、おまけが2,3記事続きます!こちらもお楽しみに)

この第10章でも、著者ブレンダの本書のゴール「撮影の前に感動のワケを考え、それを伝える術を学び、いま読んでいるあなたがそれを習慣にすること」を見据えて、、、

☆いま学んでいる基礎的要素は、表現にどうつながるのか

今回はこれを、各内容の最後で【チェックポイント】という形式でわかるようにしていきます。


【まえおき】

この10章のはじめにある、アンリ・カルティエ・ブレッソンの引用は痛烈です。”Your first ten thousand photographs are your worst.” これは、「あなたの撮影したはじめの1万枚というのは、あなたの写真の中でもっとも悪いものだ」 直訳では、そう言っています。

この言葉の裏には、『1万枚撮ったところで、たいしてうまくはならない。5万、10万と撮りつづけてはじめて、「ああ、最初の1万枚の写真は、なんとくだらないものなんだろう」と思えるんだ』ということを暗示している。そう解釈して差し支えまりません。つまりブレッソンは、僕たちをかるく挑発しているわけです。

blog 目次用の枠 第10章

記事ジャンプ用


今日の内容1
写真を評価する

さて、本文に入っていきましょう。

まずタイトルにある、「上達をたしかめる」ですが、どのように評価すればよいでしょうか。ブレンダさんは本書で、写真を評価してもらうとき、自分の家族にだけは見てもらうな、と言っています。それは、正当な評価を下せる相手ではないからです。(父親がカメラマンあるいは芸術家で、、、というような場合は話は別です。)

まわりに、ご自身が認めるほどの審美眼を持つ知人友人がいれば、その方に、すこし真剣に見てもらいましょう。あるいは、カメラクラブなどに入っていれば、そのなかで是非とも評価してもらいましょう。欠点も改善点も出し合えるような関係のクラブで、話し合うのが良いです。

ぼくは、幸運にも優れた先輩の写真家の方が数名おり、たまに見てもらいます。もちろん見てもらうには相手の時間もとってしまうので、これぞというときだけです。けっこうヘコむことも多いので、自分のためにもたまに、です(笑

逆に、相手の写真を見る機会も出てきます。僕はアラスカ大学ではじめて、真剣な評価をしなければならないという授業があったのですが、英語だったということもさることながら、人が真剣に撮ったものに批評する、つまり「ダメ出し」をしなければならない授業がすごく嫌いでした。これは怖くもありました。

しかし、自分が見てもらう立場だったときを思うと、やはり率直な意見を聞きたい。だからクラスメイトの写真について、思うことを言ってあげるというのは重要でした。

そう思ったので、自分が相手の写真を見て思ったこと、今ある知識の限り話をしました。そのことが、自分の写真を見る目を研いだ、ということにも確実につながってゆきました

さて、みなさんは、まず誰に見せるか決まりましたか?好きか嫌いかを答えてもらうのではなく、良い写真と平凡な写真を見分けられる人に、評価をしてもらいましょう。

そして、当たり前かもしれませんが、最終的に自分で自分の写真を「客観的に」評価できるようになるのがベストです。

さあ、ここでブレンダさんが引用している文のなかで、最も痛烈なものがでてきます。これは、自分で自分の写真を評価する際の戒めとして十分すぎる格言です。

"Don't evaluate the pictures you thought you made, evaluate the ones you actually made." 
(出典:Creative Nature and Outdoor Photography)

「その写真の中で撮ったつもりのことを評価するのではなく、実際に写したものを評価せよ」

多くの人が、写真を見せるときに言い訳のように、「このときの富士山の山頂から、本当にダイヤモンドのように光が差し込んできてね。これ、みてよ」というような感じで主観を強くこめて自分の写真をみせます。

しかし、上の例で話している人の言葉は、見る人の意見ではない。そこに実際にどのように写っているかは、見る人が決めることなのです。

これは写真表現が難しい理由のひとつとも言えますよね。

本書の序章から第一章まで、「写真に自分を込めろ」だとか、「経験や感情を写真にこめなければ伝わらない」とブレンダさんは言っていますので、勘違いされてしまうかもしれません。しかし、見せるときは逆なのです。感情を引き剥がす。

これはおそらく、その昔、土門拳が言っていたことだとにも通ずると思うのですが、撮るときは感情を全開にして撮る。終わったら、そこへの執着は引き離す、ということだとおもいます。気に入っていても、人に見せるときはそっと心にしまっておく。写真で勝負するとはそういうことだと思います。

【チェックポイント1】

まずは自分で自分の写真を観察、つぎにバイアスのない信頼の置ける人に自分の写真を見てもらう。最終的に、自分で自分の写真を客観的に評価できる目を持つ。


今日の内容2
自己評価のためのセルフチェックリスト

自分で客観的に評価するための確認項目を本書にあげてくれてあります。

・この写真は、あなたの意図(intent)を表現しているか。
・表現のために、光は有効に使われているか。(第二章参照
・写真の中に、興味深いデザインが採用されているか。(第三章参照
・撮影者のおもしろい「ものの見方」はあるか。(第四章参照
・全体の構図はバランスが取れているか。(第五章参照
・メインの対象にとって、露出・焦点などカメラの設定は適切か。
・この写真を、よりシンプルにできないか。
・表現を邪魔するもの(木の枝など)は入っていないか。
・色の配置は効果的か。(第六章参照

では、少し長いですが、ひとつ例をあげて僕が自分なりに評価してみたものをご紹介しましょう。下の写真です。

画像1

ここではあえて、僕が自分でとても気に入っている写真を選びました。その主観を排除して、客観的に見てみましょう。(※何度も吟味した写真なので、評価は高くなっていますが、自分の贔屓目・こだわりは除外しています。)

ではまず、

Q: 撮影者の意図を表現しているか。

A: 寒いアラスカを詩的に表現するシーン(トウヒの木から飛び立つ冬のハクトウワシ、景色の中のある一つの音色)が撮影者(ぼく本人)の撮影意図だったので、これはOK。つまり狙い通りの写真を撮ったということになります。

Q: 表現のために、光は有効に使われているか。

A: 薄く霧が出ていて拡散光になっているので、光のバランスが良い。もう少し霧が厚かったなら、より表現意図が強化されたに違いない。露出をアンダー目によせてみては?

Q: 写真の中に、興味深いデザインが採用されているか。

A: 木立の傾斜と、ワシの目線が合っているというバランスがある。ネガティブ・スペース(背景の空白部分)に、アラスカの山並みなどがうっすら見えていたらより良い写真になりそう。

Q: 撮影者のおもしろい「ものの見方」はあるか。

A: 特にあるようには思えない。

Q: 全体の構図はバランスが取れているか。

A: 対象の大きさ、木々のバランスは良いように思える。写真の右半分に重さがあるというのが少しアンバランス。

Q: メインの対象にとって、露出・焦点などカメラの設定は適切か。

A: 1/640s,  f6.3, ISO 800 ということで、2010年の設定としては良い妥協点にある。背景をもう少しボカしたバージョンが見てみたい。

Q: この写真を、よりシンプルにできないか。

A: 被写界深度をグッと狭くして、よりローアングルから撮影してみると、シンプルでダイナミックな写真に仕上がるように思う。しかし、撮影者の意図(詩的な風景のワンシーン)という意味では崩れてしまうかもしれない。

Q: 表現を邪魔するもの(木の枝など)は入っていないか。

A: 木と左の翼のXが気になる。いちばん右の木の先端が上で切れているのはベストかどうか疑問が残る。

Q: 色の配置は効果的か。

A: ハクトウワシの翼が黒く、重たい部分以外は、シンプルな扱いなので「冬・寒さ」が出ている色使いのように思う。


これらを評価してみて、ブレンダは本書の中で3つの原則を教えてくれています。

「最終的にその写真を自分のコレクションに入れるかどうかは、」

1.その写真に対して自分がプリントしたくなるかどうか。
2.自分のポートフォリオに入れたとき不自然でないか。
3.ストックエージェンシーに渡せるかどうか。

最終的には、自分でその写真をどこに位置づけるかを、自分で決める必要があるわけですね。

【チェックポイント2】

自分が「これだといえる写真」に対して、上記のセルフチェックリストを使って書評のように書いてみる。その評価を後日再読。自分のポートフォリオ(あるいはコレクション)に入れるかを決める。


今日の内容3
自分のスタイルを探る

これは僕もいま現在、模索段階の項目です。写真の表現において、自分のスタイルを確立するというのは、自分の撮影方法をかなり限定していかなくては達成できないでしょう。

アラスカ大学で学んでいたときに、教授は「自分のスタイルを作り出すというのが大変で、ただ数をこなすだけでは産まれないものだ」という助言をくれました。

このスタイルを見つけるために本書では、ファーストステップとして、まず自分がうまく行った写真(先の自己評価で高ランクインした写真群)をあつめてみて、そこに共通する要素はないかを探すことからはじめてみよう、とアドバイスしています。

これを読まれている方は、おおく自然写真を撮る方かと思いますので、それはすでに大枠でのスタイルができていると言えます。

ぼくはいま自分のフィールドは「自然写真とアラスカ」と限定していますので、ある意味ではスタイルですが、本当のスタイルとは、ほかの多くの人が同じ場所で撮影しても出てこない、自分だけのもの。それが写真のスタイルだと言えそうです。

本書では、次のステップとしてプロセスに焦点を当ててみる、ということを推奨しています。それは、

・好んで使う機材(例:マクロレンズなど)
・よく使うテクニック(例:絞り開放で極限までボカす)
・色づかい(例:白だけに焦点を当て続ける)
・撮影対象(例:野生のライオンだけを撮り続ける)

これらをよく吟味して、一定期間、撮影方法を限定して撮り続けるというのは、自分のスタイルを探る、あるいは創り上げるという意味では重要な行動だと考えられます。

今日の内容1でも取り上げた、「自分の写真を評価してもらう」ということもスタイルを探っていく上で取り入れるべき重要なステップとなるでしょう。

【チェックポイント3】

自分のスタイルを探る上で、自分の写真の中に、①共通の要素・ポイントはないかを探り、②プロセスにこだわりや傾向がないかをチェック、③信頼できる他者の評価と、自分の客観的な評価の眼(審美眼)でスタイルも探りを入れる。


以上になります。

昨年2020年12月からスタートした「【最強の写真学習】これで基礎を固める」シリーズも今日で完結です。

今後このシリーズには、ラップアップも少し加えつつまとめ、本書の中のコラムを少しづつ取り上げていきたいと思います。


これからも英語圏の教材をベースに、ハイクオリティな写真を制作するための内容を少しづつ記事にしていく予定です。

次のシリーズは、米国で大変人気のある自然写真家、アート・ウルフの「基礎講座」を日本語で噛み砕いてご紹介しようと思います。

ぜひコメント・ご指摘くだされば幸いです!

                            中島たかし
              Nakashima Photography 公式ホームページ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?