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【写真におけるカラーマネジメント】   第1章: なぜ色の管理が必要か

なぜ、色を管理する必要があるのか、結論を一文で表すと、
「思った色を予測可能な色に、継続的に経済的に出力するため」です。

おはようございます。
アラスカの中島たかしでございます。

このマガジン記事は【中上級者向けの内容】になります。

写真におけるカラーマネジメント。
その第一回目は、WHATそもそも論として、写真を高品質に仕上げるために「なぜ色の管理が必要なのか」ということをゆっくり噛み砕いて、用語の定義もはさみながらお話してゆきます。

基本的に僕の解説は長いですからね。しかし、何度も編集して読み返し、無駄な説明は省いています。早く読み進めたい方のために、太字だけで読んでいっても、ざっとつかめる内容に仕上げています。

※実践内容は5章以降になります。色管理がいかに重要か既知の方はそちらへ。

一部のエディトリアルやコマーシャルで撮っている方はたいてい撮った後は「次の人」が立てられていて、そのひとに撮った写真データを渡してしまえば、自分で編集や色管理を意識する必要はなかったかもしれません。しかし、ここではもちろん、自分で写真作品として仕上げる人を前提に話を進めてゆきます

今回も、米国プロフェッショナルの常識をつうじて写真学習をつづけている僕が、欧米の情報をベースに、日本語で解説してゆきますね。

今日の内容1:
なぜ色の管理が必要なのか

そもそも、なぜ写真の色の管理が必要なのか。それをしなければどうなるのかを考えてみますと、

1.写真を見せるときに色が違っているから

経験をお持ちでしたら、たぶんすんなり色管理が必要だと感じるでしょうが、この経験のない方は、すごく気に入った自分で撮った写真を、いちど自分でプリントしてみることだと思います。プリンターがなければ街のプロラボでやってもらうのも良いでしょうね。

撮った写真は、色管理なしでは、基本的に色が変わるものだと考えていたほうが良いです。もう少し掘り下げてみましょう。

スマホやカメラで撮影するとします。これを撮ったその場で横にいる人に見せる場合に不都合はほとんどありません。皆無といってもいいほどです。

しかしこれをインスタグラムやFacebook(Meta)にアップロードしたり、特にプリントする場合は、「適切な処理」をしないと色が変わります

ここで、特にいままで気になったことはない、という感想を持たれた方は、ぜひ、このマガジンだけでなく、その他のインターネットの情報から「写真 カラーマネジメント」の語で検索して学んでみてください。なぜなら、知らないうちに、あなたの撮影した写真の色味が知らないところで知らない色に変わっているからです。

もちろん、自分で色管理できる範囲での色の統一であって、他者があなたの写真を扱い始めたら、それは手が届かないのは仕方のないことです。

ところで、MacのOSにおけるColorSyncはとても優秀で、写真を撮る人もJPEG(撮ったまま)の写真を扱っていて、見る人もMacユーザーであれば、かなり統一された色表現がなされているので、問題はないとおもいますね。この場合、色管理は勝手にMacがやってくれているので、意識せずとも大丈夫でしょう。しかし、これは写真作品とはいえません。それは、見た風景、セットした舞台をカメラが見たまま撮った画像が、あなたのイメージと全く同じであるということは、僕はありえないと思うからです。

色の管理が必要な理由その2は、

2.使う機材のそれぞれが、「違う理解をして」しゃべるから

カメラでも、キャノン、ニコン、ソニーそれぞれのカメラメーカーで、全く同じものを撮ったときに違う色が出ますね。これを多様性や個性と考えれば良いことで、キャノンの色味が好きだとか、ソニーはひどいなんていう意見が出てくるわけです。(僕はソニーはすごいと思っています。)
いずれにしても、ここから色が違うんですから、最後でイメージ通り、同じ色になるのはまぐれ以外にありえない。

そしてモニターごとにも違いますし、使うソフトウェアによっても、その設定によっても、そして、最後にプリンターの壁が立ち塞がり、伝言ゲームのごとく、、、そう!カメラ → モニター → プリンターで勝手に伝言ゲームをしてしまうのです。

ひとつ例として上げてみましょう。

【仮想伝言ゲーム】
まずは、読者であるあなたです。

あなた「厳冬期のある晴れた早朝の、山中湖に映える、やや温かみのある曙光を浴びた逆さ富士」という具体的なイメージで、まさにその現場で写真を撮ります。

では撮影しましょう。

カメラさん「厳冬期の晴れた朝、山中湖に映る、朝日を浴びた逆さ富士」

撮った写真を取り込み、モニターで見てみましょう。

モニター君「冬の晴れた朝、山中湖に映る、陽を浴びた富士山」

それをプリントしてみましょう。

プリンタちゃん「朝の湖に映る、陽を浴びた富士山」

このように機械ごとに一文(色)を伝達してゆくと、具体的だったものが最後には抽象へ、つまり伝言ゲームと同じで、曖昧な劣化したものに変化します。基本これは不可逆なので、これを続けても、たとえば「厳冬期」という言葉はついに復活することはないでしょう。また、富士という言い方をしていたのに、勝手に言い回しが変わって富士山という「山」という言葉がついてしまいました。

そこで、色管理では何をするのかと言えば、言い方は悪いですが、その一文が書かれた紙を、次の人に渡してゆくというチート(ずる)をします!(笑 伝言ゲームしても全く面白くないですね…

しかし、このチートができれば最後のプリンタちゃんが、その紙を読み上げるだけですから、はじめの言葉と全く同じものを口にできる(表現できる)というわけです。もしもプリンタちゃんが「厳冬期」を読めないとすれば、それは低学年のプリンタちゃんなので、高学年のプリンタさんに読んでもらったほうが良いということになります。(比喩が長くなった…)

そしてこのチートを実行するには、知識とテクニックが必要になるので、それをこのマガジンでは解説をしてゆくわけです。
ここまできて、なんとか事前知識の準備完了…

しかしあなたが、最終出力を見て、いつもこれで良いと納得しているならそれで良いのです。現に、僕は試行錯誤を続ける中で、はじめにイメージしたよりもプリントが勝手に出した写真のほうが良いと思ったことが何度かあるくらいです。

しかし、1割未満のホームランバッターより、9割9分での出塁を僕は選びますね。デッドボールでも一塁を踏みます。

「なぜ写真の色の管理が必要なのか」をまとめ

機械任せにしていると、

・データである写真は、それぞれの機器で勝手に解釈をして、
・最後に見るときには、色が違っている

からです。

別の言い方をしてみれば、「色管理をすることで、コンスタントに結果を予測できるように、統一した色の言語を各機材(カメラ・モニター・プリンター)に語らせなくてはならない」ということです。

色の管理が必要であることがおわかりいただけたでしょうか。自分の写真の「ユニフォーミティ」つまり統一性を出すためにゼッタイ的に必要なスキルなのですね。

そして、ここまできてはじめて、「カラーマネジメントの定義」を語ることができるわけです。

今日の内容2:
カラーマネジメントの定義

世界的な定義は、Color management is the implementation of procedures for the achievement of color consistency irrespective device within a digital imaging system.
訳すと、
「カラーマネジメントとは、デジタル画像のワークフローにおいて、デバイスに関係なく一貫した色を実現するための手順を実装すること」です。そう、実装すること。そして、その実装されたワークフロー全体を、カラーマネジメントシステム(CMS)といいます

かんたんにして、「カラーマネジメントとは、一貫した色を実現するための手順」と覚えて問題ないです。
そして、意訳すれば、「自分の出したい色でアウトプットする方法」ということです。
大枠はこれで掴めたのではないでしょうか。

この定義を踏まえて、もう一つ考えておきましょう。
色(カラー)とは何か。
答えてみてください。

色とは、物体(オブジェクト)です。波長としてもいいですが、いずれにしてもオブジェクトです。
色とは、光のオブジェクトです。オブジェクトは客体です。
では、ヒトは色をどう捉えるかというと、光を網膜で受容して主体(サブジェクト)として解釈します。

たとえば想像してみてください。ぼくがここで皆さんに先に挙げたシーン、「富士山の近くの湖畔で見た冬の朝焼けの美しい色」といえば、おなじ日本人であれば、限りなく近いイメージの色を想像するでしょうが、これをカメラやプリンターに伝えたところで、「ああ、これね」と正確には出してくれないのですね。

ややこしいことを言いましたが、ここで言いたいことは、自分の外にある色を正確に機械に伝える必要性です。

これを正確に行う。このマガジンの第5章以降の実践編で具体的に行ってゆきます。

以上になります。

この【カラーマネジメント】シリーズでは、色をどのように扱えば最高品質のプリント作品がつくれるか、ということに焦点を当てて解説を進めてゆきます 。

この記事をここまで読み進めてくれた方は、おそらく熱のある方ですね!写真の作品づくりを見据えておられる方だと思います。

これからも英語圏の教材をベースに、ハイクオリティな写真を制作するための内容を少しづつ記事にしていく予定です。

ぜひコメント・ご指摘くだされば幸いです!

                            中島たかし
              Nakashima Photography 公式ホームページ


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