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【最強の写真学習】これで基礎を固める  第1章. 見る目を養う

おはようございます。
アラスカの中島たかしです。

今日も、今回も、米国で写真学習しつづけている僕が、欧米の情報をベースに、日本語で解説をしてゆきます。

10回にわたって行っているのは、海外の写真参考書 Creative Nature & Outdoor Photography という最強の写真教科書についての解説です。

なぜ最強かといえば、この本は、テクニックだけでなく、「何を伝えたいのか」という、撮影をする上で根本に添えるべき考えが身につく本だからです。詳しくは、前の記事を見てください。

今日はその第1章、Learning to See 見方を学ぶ。 つまり、撮るよりも重要な、「見る目を養う」ことについてお話してゆきます。160ページある本の中で、たった3ページしか割かれていませんが、「撮影対象をどう見るのか」という、とても重要な内容が書かれています 。

ちなみに、この全章にわたって著者ブレンダの本書のゴール「撮影の前に感動のワケを考え、それを伝える術を学び、いま読んでいるあなたがそれを習慣にすること」を見据えていきます。

カトマイの


【まえおき】

撮影する時に考えるべきこと、そして撮影のあと、自分で写真を評価するときに使うものとして、この章の中でとても重要なリストを彼女があげていますので、先にご紹介したいと思います。

・What do I want to be dominant in the scene? 
このシーンで目立たせたいものは何?

・What do I want in the frame. and what can I eliminate?
写真の中に何を入れて、何を排除する?

・Where do I need to be for the best angle of view?
最適なアングルを得るために、どこに(カメラを)位置すればよいか?

・How much depth of field do I want or need?
ピントが合う幅は、どのくらいにすべきか、あるいはしたいのか?

・Do I need a slow or fast shutter speed?
シャッタースピードは速くするか遅くするか。

・Would a tripod help?
ここでの三脚の使用は効果的か?

・What's the range of light?
光の階調はどの程度か?

・What's the color of light?
光の色はどう?

・Would a filter help?
ここでのフィルターの使用は効果的か?

・Is there a creative technique that would better express my vision?
自分が想定している表現に加担するような有効なテクニックはあるか?

出典:Creative Nature and Outdoor Photography by Brenda Tharp


以上、基礎です。
多すぎですか?(笑

初めはそう思うかもしれません。しかし、これでもまだまだ少ないのです。米国の風景プロフェッショナルともなれば、この10倍以上の項目をあげるでしょう。しかし、上のリストの項目は、基礎の基礎になるので、ほかの項目はここから派生してゆくことになります。

また前置きが長くなりました…

結論から言ってしまうと、、、

【今日の結論】
いったん立ち止まり、「なぜそれを撮る気になったのか」を上のリストを用いて考えよう。これを繰り返すことで、「自然を見る目」が養われる。

ということになります。気にする項目を増やしていくことは、はじめは面倒くさいかもしれません。しかし何度か繰り返しているうちに、勝手に頭に上ってくるようになります。


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【記事ジャンプ用】


今日の内容1
【現実を拡張せよ!】

この項目で重要なことは本書の中で、

You can expand your reality by developing new ways of perceiving.
(出典:Creative Nature and Outdoor Photography by Brenda Tharp)

と書かれています。

▶こちら日本語での記事ですが、原著の英語で汲みとれる方は、そのほうが入ってくると思うので、それも含めて、たまに原文のまま引用しますね。

ぼくは基本的にすべて英語のまま理解して、書いている人の考えというのをなるべくそのまま汲み取るようにしています。

「英語の意味は全く知らないよ」っていう方はご安心ください。その文を読んだあと、かならず日本語訳を入れていきます。

それでさっきの、一文 You can expand your reality by developing new ways of perceiving. ですが、「あなたが見ることというのは確かに現実だが、あたらしい見方(感じ方)を発展させることで、あなたの現実を拡張することができる」ということを言っています。


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↑ 南アラスカの海でブリーチングをするザトウクジラ ↑


現実を拡張をするために、まず重要になるのが、

何か写真を撮りたいと思う対象に出会った時に一度立ち止まって、その対象のどこが自分に撮りたいと思わせたのか、ということを考える必要がある、と言っています。

でも、もちろんこのそういう瞬間というのは、街角のスナップとかスポーツ写真とか、タイミングが重要になってくるような撮影の時は、いちいち撮っている時に考える暇なんてないと思います。なので、そういう時はさすがに考えずに撮って、後でかならず、「なぜ撮りたいと思ったのか、あるいは自分にシャッターを切らせたのか」を考えるようにすると良いと言ってます。

この習慣によって自分の好みと趣味(これは自分の対象に対する興味ですね)この問を繰り返すことで、それがより具体的に見えてくるということを言っています。

実際その傾向が見えてきたら何をするのかというと本書の中ではこう言ってますね

その撮ったものは自分にとって何を意味するのか

これはとても難しい問題だと思いますけども、追求していくことでゆっくりと何を撮って何を撮らないのかが明確になっていくわけです。

僕はというと、はじめはアラスカに到着してがむしゃらに撮りました。見るものすべてが新しいのですから、仕方ありません。しかし、見る目が備わっていない、準備できていない者がそういったシーンをいくら撮っても、「自己満足の世界からは脱出しないんだ…」とあるときから気が付きました。

そうして徐々に、僕自身のフィルターを通しつつ、見てくれる人を想定して撮影するようになっていきました。しかし、ここで重要なのは、楽しむことを忘れてはならないということです。自分の好奇心、動物に対する興味も同時に養ってゆきました。それは今でも続けています。なにせ、そこが僕の想像力の源泉なのですから。


今日の内容2
【意識から無意識へ = 習慣にすること】

※このパートは、本書とは直接の関わりはありません。わかりやすくお伝えするために、また、行間にこめられたブレンダの想いを、僕のオリジナルの知識をもとにお話しています。

まず、習慣にすることは最強です。(格言ですね…笑)

先程の、本書のなかでブレンダが強調しているリスト、すべてを考え撮影していると、まず瞬間を狙うような写真な撮れません。僕もそうでした。チャンスをいっぱい逃しました。しかし、それでも意識して撮影するのです。

継続してスポーツなどの練習をされたことのある方はイメージしてください。僕はアラスカに来る前、テニスのコーチを5年していたのでそれでお話をしましょう。

たとえば、ラケットのスイングひとつとってみても、様々な要素に分解できます。それを、人間の体の可動域や力の入りやすい角度というのと照らし合わせて、原則的なベースフォームをつくってゆきます。これはいちばん初歩の初歩にやっておくと、その後の上達が早くなる、近道の法則であり、何にでも言えることです。すべてのことには原理原則があります。

では、テニスのスイング、フォアハンドストロークの原則を考えるとき、いくつかの要素に分解する必要があります。順に行くと、構え、テイクバック、振り出しの初動、ラケット軌道、フォロースルー、構えへの戻り。ざっくりこんな感じです。

この分解したものを、はじめは一つづつ意識して「素振り」をしていきます。イチローが、「素振りをしていて全く飽きることはありません」というのは、意味がわかります。つまり、かれは究極的に動きを細分化して、それを一つ一つ体に染み込ませていっているわけです。まるで宮本武蔵のいう稽古のようです。

これを毎週2回続けることを習慣にすると、早ければ半年で物にでき、あとは楽にこなせるようになるでしょう。そして次のステップですね  (^-^)


今日の内容3
【本書から学んだ僕の作例3】

僕が撮影した写真を例に、今日の内容をおさらいしてみましょう。
※ここから口述筆記になります。

note作例3

この写真はセスナから撮影したものですね。なので空撮の写真になります。 今日のブレンダの話をまとめながらこの写真についてお話をしていくと、

まずこの写真を見て、青の綺麗な海?あるいは湖?だなと分かると思います。

しかし森から出てきている砂州、砂の浜ですよね。ここが写真のポイントになっていることはわかるものの、これは正直、なぜこういう風にできたのか、この浜は何?というのはあまりわからないと思うんですよね。

浜から煙のように海に流れ込んでいるものもよくわかりません。

僕がアラスカに来た当初このシーンを見たとすれば、この写真は撮れませんでした。なぜかと言えば、この砂浜の意味することがわからないんですね。

通常、森と海の関係では、森がぎりぎりまでせまる浜辺が続いているところから、ほぼ直角に別の浜が突き出てくるということはありえません。日本の天橋立も特殊な成り立ち(土砂の堆積)でできている自然風景です。

わかるようにお話をしていきますと、この写真の左奥の方には氷河があります。そして今は温暖化によって地球が暖かくなっている時代です。氷河というのは後退していて、つまりどんどん溶けてなくなっていってるんですね。そして今見えているこの写真の浜は、昔(1750年頃)氷河の末端がここにあったことを示しているものです。この砂浜は氷河がブルドーザーのように砂を推し進め、その土砂が堆積してできた砂州です。 また、木々が生えていないことから、干潮の時間帯にのみ現れる浜辺であることもわかります。

そしてこの写真は、「自然を見る目」がないと、そして背景に氷河の知識がないと、この事実に気がつかないことになります。ある意味、特殊ですよね …。 しかし、ただ綺麗だという写真で終わってしまう写真というのは、やはり深みはありません。

さてここで、皆さんにも投げかけたい問いです。言葉で説明しなければわからない写真というのは意義ある写真でしょうか。難しい問題です。ここには、撮影した自分ではない、見る人の問題がでてくるからです。写真哲学というほどの大それたものではありませんが、僕の中では、「深く読み取れる人が見てくれることを想定して撮影する」ということこそ、より写真を撮る意義がでると思っています。 そして、撮り尽くされたと言われる自然写真ですら、僕らが生きているこの時代に、僕らが写真を撮る意義は、十分に残されているのです。

では、展示会で写真に添えたストーリーをご紹介して終わりにします。

【作品展のときに展示した撮影ストーリー】

 いつも船から見ていただけのプリンス・ウィリアム湾を、今日はセスナ機に乗り、上空から眺める。飛行前にルートを知っておきたかったので、パイロットに指で地図をなぞってもらった。太陽の位置、山の高度、影になる場所の推測、いろんなことを考える。
 セスナ機は地面から少なくとも二百メートルは離れて飛行する。今回はセスナの窓を開けることはできないので、窓の反射が入りやすい広角レンズの使用は限られる。標準からやや望遠のレンズで風景を切り取っていくことに決めて準備をした。
 氷河と海の関係。そんな事がわかる一枚の写真というのはあるだろうか。アラスカの海といえば、氷河の融解水が大量に流れ込んでいる豊饒の海というのが最大の特徴である。それを暗示できる写真は見つかるだろうか。
 無数の氷河と海を同時に眼下に眺めながら、決定的なものが見つからないまま飛行を終えようとしていた。ブラックストーン入江に入り、最後のスペンサー氷河を超えれば、このフライトは終わる。そのとき、遠くに氷河堆積が見えてきた。その堆積は、氷河が土砂をブルドーザーのように押し出してできた灰色の砂の山で、過去にそこに氷河の末端があった事を示す。堆積には多くのミネラルが含まれており、植物プランクトンの体を作るための材料となる。これこそが海を肥沃にしている理由である。こんな具体的なことを、撮影の時に考えられたわけではない。なにか直感的に、これだと思いシャッターを切った。


以上になります。
最後までありがとうございます。

カメラをどこにでも持ち歩き、「撮る際に一度立ち止まって考える習慣」をつけていきましょう!

この記事をここまで読み進めてくれた方は、おそらく写真の作品づくりを考えられている方だと思います。

これからも英語圏の教材をベースに、ハイクオリティな写真を制作するための内容を少しづつ記事にしていく予定です。

ぜひコメント・ご指摘くだされば幸いです!

                            中島たかし
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