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カンボジア生活記2🇰🇭

今この記事を書いている私は1ヶ月ぶり2度目の食中毒にかかっている。全く。痛みとはどうしてこんなに辛いのだろうか。トイレが大好きになってしまう。
そんなこんなで3日間ほどダウンしていたのでなかなか更新できずにいたことをお詫びすると同時に本編に入ろうと思う。


カンボジアといえば?
私の中では「アンコールワット」この一択に尽きる。いや、実際に来てみるとよくわかるがアンコールワットはやはり国内でも偉大な存在であることは間違いないようだ。どこもかしこもアンコールワットの押し売り。それだけアンコールワットはカンボジア人の生活を支えている存在なのかもしれない。経済的にも精神的にも。

カンボジアの目的は「アンコールワット」だけと言っても過言ではなかった。事実、アンコールワット以外の情報はほとんど持ち合わせていなかった。

当日早朝4時起床。ドミトリーの部屋に泊まっていた私は静かに腰をあげた。まだ誰もおきていない真っ暗の部屋で準備を始める。静かに、まるで忍者のような忍び足で部屋の中を動く。準備は思ったよりも簡単に終わった。いや、終わらせたと言った方が正確かもしれない。さあ出発だ。宿から「アンコールワット」までは約7キロ。何で行こうか考えた結果「自転車」になった。今思えばこれが地獄の始まりだったのかもしれない。

まだ闇の中。月の灯りだけを頼りにペダルを漕ぐ。日が出ない時間帯は涼しいのがありがたい。スイスイ進む自転車に、暗くて道の全貌や周りの景色の様子が全くわからない状況が重なってあっという間に到着した気がした。時刻は5時を回っていたと思う。

暗がりの中駐輪場を探すも何も見えない。続々と日の出を見に観光客が押し寄せてくるが皆揃ってトゥクトゥクを乗り回している。それらのライトを頼りになんとか入口を発見し、その脇に自転車を止める。そこからは駆け足で進む。地上の様子は何も見えないが星だけは綺麗に見えた。どこがスポットかもよくわかっていないが何と無く人が座り始めた場所の最前列に座ってみた。いまだに何も見えない。
少しぼーっとしていると続々と観光客が押し寄せてくる。良い場所取りが出来たのかもしれない。淡い期待を抱きながらも一向に沈まない月と顔を出さない朝日に少し疲れていた。
観光客の数を考えるとここで簡単に動くことは許されない。小学生の朝礼のように体育座りで1時間ほど待機していると体に異変が。身体中に蟻が這っている。そして噛まれている。バックも蟻の巣窟になっていた。私の体内時計はますますゆっくり時間を刻むことになったのは言うまでもない。

ようやくあたりに光が差し込み出した頃、私はなぜかパンツの中にまで侵入していた蟻と戦っていた。侵入経路はどこなのだろうか。戸締りは完璧なはずなのだが。まるで警視庁捜査一課のような感覚でいまだに捕まえきれていない容疑者「A」を追い込んでいた。

私が「地獄」と先述した一つの理由がこの「A」だ。いざ居場所を突き止め捕まえようとした時、危険を察知したのか私の尻を思い切り噛んだのだ。火事場の馬鹿力とは蟻にも当てはまる言葉なのだろうか。他の部位とは全く別レベルの痛さを感じた。思わず飛び跳ねてしまったくらいだ。
蟻とはかなり良い友好関係を築いてきたつもりであったが、その関係もあっという間に崩れてしまった。

そんなこんなしていると朝日が昇っていた。やっと「アンコールワット」の一部が見えて来た。

「絵になる」とはこういうことを言うのだろう。朝日がよく似合う。おそらく何度も何度も見ているであろうガイドも見とれているように私の目には写った。

しかしここの朝日というものは残酷なもので一瞬の美しさの後は灼熱の太陽に姿を変える。一つの目標を達成した後は遺跡内を回る。大きな大きな敷地だ。足早に見学を済ませ自転車に戻る。さあ、ここからが2つ目の地獄だ。
「アンコールワット」周辺には遺跡が多数存在している。そのため同じチケットで観光ができる。ただ1日で全てを回るのは数が多すぎて非常に難しく、それぞれセレクトして回るのが一般的だ。
そんな中私たちは自転車で次の遺跡まで移動。意外に距離があるのと怒ったような日差しが体力を奪っていく。そういえば前日は興奮していたからか、起きる自信がなかったからかほとんど眠れなかった。
次の遺跡に着く頃には既に眠気が襲っていた。

特に見所と言われる遺跡だけを観光しているつもりがあっという間に昼はすぎていた。舗装されている道は少ないので肌は日焼けと砂で真っ黒。尻は自転車の漕ぎすぎと蟻のおかげでパンパンだ。キツイ。。。。
次の遺跡が遥か遠くに感じてしまう。地獄だ。。。
いつの間にか遺跡を見たいと言う気持ちは消え無駄な「意地」と「プライド」だけで自転車を漕いでいた。

他の遺跡群は写真で割愛させていただくが、興味があるのなら実際に見にいってみると良い。カンボジアなんて今の世の中あっという間に到着できる国だ。

宿に戻ることを決意した時、時刻は14時ぐらいだったであろうか。最も日差しが強い時間帯に特に変わることのない景色の道をひたすら漕ぐのだ。この時点で、いや、もっと以前に決意したことがある。

「二度と自転車では来ない」と。

進んでいるのかわからない帰り道、地味な上り坂。これでもかと言うくらい追い込んでくる。朝の気持ちに戻りたい。。そんなことを思いながらもとてもじゃないが後戻りできる状況ではない。蟻に噛まれた部分が染みる。久しぶりの筋肉痛が既に来ている。行きの時間の倍くらいかけて宿に着いた頃には戦から帰って来たような風貌と逞しさを宿していたのではないだろうか。

そして地獄の続きはこの記事の頭で書いたように食当たりになったことだ。
いまだに何が原因かはわからないが。おそらくこの日に食べたものではないかと予想している。

アンコールワットという魔物に魅了された私はそれなりの対価を払った。払わなくて良い対価まで払った。結局こんなことが思い出に残るのだ。
物や景色じゃなくても体験という財産が残るのであればそれはそれで問題ない。
が、この日の私に何か一つアドバイスをできるとするならば私は迷うことなくこう言うであろう。

「間違っても自転車で行くな」と。