さより

作家・詩人  なのに、短いコラムを得意とする。

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最近の記事

即興詩 あかり

1月17日午前5時46分 わたしが生まれ育った街で 鎮魂のあかりが灯される 令和6年元日の地震を ここの人たちは阪神・淡路大震災に重ねた 「もうすぐ17日が来るというのに」 「まさか、また1月とは」 29年前の傷が蘇る 街がすっかり変わっても 復興の声が聞こえなくなっても 被災地の傷は消えないのだ 能登の人たちに 「大変でしたね」と伝える資格があるのなら わたしは、あかりを灯すだろう 来年も またその次の年も

    • 雑感110 もう凍結しない

       ついつい溜めてしまう癖がある。文房具は最たるもので、机の上に付箋だけでもバラバラ散らばっている。「可愛い!」や「いただきもの」であれば、尚更使わない。というより、使えない。子どもからもらったプレゼントともなれば、一生保存する勢いだったりする。  どうして、こんなに溜めこむんだろうと自分でも思う。幼少期が特に裕福ではなかったのが一因だとは思うが、そもそもの性格なんだろう。モノは溜まる一方で解決しない。  今、目の前に子どもからもらった付箋がある。「気持ち届ける おきもちふせん

      • 雑感109 村野藤吾の建築美

         「好きな建築家は」と問われたら、村野藤吾と宮脇檀と答える。村野藤吾は美術館のスロープで、宮脇檀は書籍に載っていた1/20の詳細図面(部分)を見て、美しいと感じたからだ。この美しさは、いわゆるキレイではない。言葉にならない心地よさとしか言い表せない、感覚的な感動である。  まだ建築の楽しさを知らなかった頃、神戸の兵庫県立美術館王子分館に行った。新設の兵庫県立美術館が建設されていない時で、村野藤吾設計だとは後から知った。  チケットを買い、1階の展示を見て、案内のとおりに進むと

        • 雑感108 モロゾフの福袋を買いたい

           モロゾフの福袋が断然お得だというニュースが目に入った。1,080円という低価格で、もう何年も内容が変わっていないらしい。物価高騰のご時勢に、容量が減りもせず、値段が変わらないとは。チラッと写真を見た限りでは、定番のものが入っているようだ。ほしい。  もう福袋の時期が過ぎたので、狙うのは年末になる。しかし、以前は予約なしでも買えた福袋は、今では予約がないと手に入らないかも、とのことだ。  ちょっと調べてみると、百貨店のオンラインショップやイオンでも買えるらしい。イオンは瞬殺で

        即興詩 あかり

          雑感107 塩むすび

           家に体調不良の人がいるので、いつでも起きた時に食べられるようにと、おにぎりを作った。かつお節と梅干しを漬けてできた赤紫蘇を混ぜたもの、塩昆布の二種類を作った。形は俵型、と言いたいところだが、わたしの俵型は中央がふくらんでいるので、樽型といったところか。  俵型のおにぎりを作れるようになったのは、数年前である。ずっと三角のおにぎりで通してきたところ、本当に美味しそうなおにぎりを作る人がいて、その写真に憧れてから練習したのだった。もっと俵に近い形にするべきかとも思いながらも、樽

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          雑感106 今年の漢字

           何ということだろう。休暇が今日で終わるという日に、家族が倒れた。幸い、休日診療を受けて、投薬もあったので、このまま快方に向かうと思う。  わたしだけが無事(じゃないかもしれないけれども、今のところは大丈夫)なので、タクシーの配車やら食事の変更やら、大忙しである。ここ数日の災害や事故とは比べられないけれど、日常に変化球が入るのは、やはり疲れるもので、日々の平穏の有難みを感じる休日になった。  ちょっと覚えておこうと思ったのは、休日診療に制限があったことだ。ひとつ目の診療所は、

          雑感106 今年の漢字

          雑感105 きっかけ

           最後の洗濯物を干して晴れた空を見上げたら、洗濯槽を掃除したくなった。わたしは不精なので、前回いつ掃除したのか覚えていない。洗面台の下の棚を探す。確か、ずいぶん前に買った洗濯槽クリーナーがあるはずなのだ。  知人が良いと勧めていたクリーナーが、ひとつだけ残っていた。粉末のクリーナーを洗濯機に放り込む。水を張って、ぐるぐる回すこと15分。液体のクリーナーを追加して5分。洗濯機が動けば十分なのに、なぜか見守ってしまう。終了の音が鳴り終わる前に、蓋を開ける。 「わぁ」  つい、声が

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          雑感104 Year Color

           atelier [for me](アトリエ フォー ミー)主宰の草木裕子先生から年賀状をいただいた。先生からの年賀状は、とっておきが1つある。それは、今年の色。もう毎年恒例にもなった、わたしの楽しみだ。  今年は、イエロー・ブルーとのこと。解釈は無数にあるが、まず思い浮かんだのは、三原色(レッド・イエロー・ブルー)の中の2色が入っていることだ。わたしだけの感覚だと思うが、三原色が多いほど、土台を作るイメージが強い。きっと、わたしは土台を作る一年となるだろう。  イエロー・ブ

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          雑感103 わたしの2023年

           年の瀬なので、今年を振り返っておこうと思う。今年だけの特徴だが、3ヶ月ごとに区切りをつけて過ごしてきた。そんな年は今までもなかったし、この先もあまりないと思う。変則的な感触が、一年を通して続いた。  1月から3月は、わたしの採用試験と子どもの受験に追われる。わたしの試験は1月、結果は2月、所属先が決まるのが3月という、気分的に落ち着かない日々が続く。子どもは2月と3月が本番で、合間に卒業式という大きなイベントが挟んでくる。決まったら、すぐに入学手続き。お金と時間が消えてい

          雑感103 わたしの2023年

          雑感102 いつか、どこかで

           絲山秋子著「イッツ・オンリー・トーク」より「第七障害」を読んだ。ラストで、湖と林のシーンが出てくる。そこから連想したことがある。  いつか、言葉の研究所みたいなものを作ってみたいと思っている。研究所よりは工房に近いイメージで。詩歌・物語の作成から、国語力を底上げするという教育的な分野まで、何かできないかと考えている。常々、英語をはじめとする外国語の習得や国際化にとっても、学校の勉強にとっても、日常を豊かにするのも、日本語からはじまると思っているので(主に日本人の場合)、母語

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          雑感101 わたしがタロットカードを引く理由

           どうして、タロットカードに魅かれるのだろうと思っていた。わたしは占い師ではない。なってみたいと思ったことはあるけれど、今のところ占い師は名乗っていない。それでも、折に触れタロットを引き、タロットのサークルに参加している。  初めてタロットカードに触れたのは、小学生の時だった。占い雑誌の付録で、ペラペラの小さな紙のカードだった。大アルカナのみだけど、オリジナルの絵が描いてあったと思う。後にウェイト版を買ったときに、特に絵を覚える苦労をしなかったのは、小さな薄いカードが支えてく

          雑感101 わたしがタロットカードを引く理由

          おこめ日記(2023.12.05)

           わが家で食べた、お米の記録を残しておこう。2023年12月現在、一ヶ月あたり、だいたい15kgくらいを家族で消費している。ひと月に買うお米は、月によって10kgだったり20kgだったり。買う銘柄を決めていないので、買う時の価格や気分に左右される。そのため、「もう一度食べたい」と思っても、どの銘柄だったかわからなくなっている。つまり、記録は自分のため。  わが家の炊き方は硬めで、炊飯器は10年くらい前に買ったPanasonicのW踊り炊き。当時としては、かなり高価格だったと記

          おこめ日記(2023.12.05)

          雑感100 今日、この場所で

           今日、第41回「一万人の第九」に参加した。文字通り、ベートーベンの交響曲九番を一万人で歌う。大阪城ホール・16,000席の半数以上が合唱団で埋まるという、とんでもないイベントだ。  もう何回目の参加なのか、覚えていない。はるか昔、二十代のある夏の日、新聞の広告で佐渡裕監督の名前を見つけ、参加するかどうか、ずいぶん迷った。音楽の授業以外での合唱の経験は無し、楽譜は読める、ドイツ語は大学で少しだけ。有名なフレーズは知っているが全体は知らない初心者が、参加してよいものか。  それ

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          雑感99 師走

           12月になってしまった。秋は、自分でも自覚できるくらいに予定を詰めたから、予定をこなすだけで終わった。楽しかったイベントが多かったので、それはそれでよかったのだけど、やはり休む時間がほしい。  12月は師走と呼ぶだけあって、とにかく気忙しい。気忙しい原因は、準備だと思う。クリスマスも正月も、迎えるだけなら楽しいイベントで済む。のんびり準備だけに心を躍らせるだけの余裕があればいいのだけれど、今年のわたしは無理だろう。  なので、決めた。この12月は手帳時間を取る、と。どのみち

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          雑感98 結婚記念日

           節目の結婚記念日だった。普通の平日で、普通に仕事をして、普通のごはんを食べた。いつもと変わらない毎日のうちのひとつ。  ずいぶん変わったな、と思う。わたしは記念日という響きが好きで、ちょっと特別な一日を感じるのが好きだった。いつもより少しだけ豪華なごはんと、ケーキを用意する。プレゼントがあった年も、遠い記憶にある。  それが、ケーキもない。ごはんも、そっけない。それで終わったのは、初めてだ。確かに、夫との間で「ケーキを用意するか」とは話したけれど、なくてもいいかと思ったのは

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          雑感97 すじ取り

           家族が栗を買ってきた。銀寄(ぎんよせ)というらしい。とても粒が大きく、皮のつやがいい。  わが家で栗といえば、栗ごはん。渋皮煮やマロングラッセを作ったこともあるけれど、手間の割に家族には喜ばれないので、一度で止めてしまった。とても美味しくできたけれど、一人で食べるには甘すぎる。モンブランは面倒くさそうなので、作ったことはない。  作る人の都合でメニューが決まるのは仕方ない。栗ごはんなら、皮むきから。ひと晩水につけて、翌朝に少し煮て皮を柔らかくしておき、年に一度しか登場しない

          雑感97 すじ取り