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営業を、科学してみよう

こんにちは、セールスサイエンスラボCEO / ㈱マツリカ 執行役員 VP of sales & Marketingの中谷です。

私のモットーは、

セールスというアートをサイエンスし、日本の営業をアップデートする

です。

最近、”営業を科学する” というフレーズが徐々に浸透しつつあるように思います。

今回は、どのようにして営業を科学し、営業組織の売上を向上させるか、という手法を解説していきたいと思います。
(営業を科学する、と言っても様々な角度から科学できるので、今回は最も難しい ”商談のパフォーマンス” の部分に踏み込んでいきたいと思います)

営業とは

まずはじめに経営における営業組織の役割とは、

① 最低限のリソースで、最大限の収益を上げること
② いつ、何が、いくらで、どこに売れるかをコントロールすること

であると言えます。

企業は、営業組織が稼いだキャッシュからコストを差し引き利益を確定させ、それをもとに将来の事業への投資をして成長していきます。

なので、営業活動こそが企業の成長の源泉であると言えます。

このように、企業において最も進化しなければならない機能であるにも関わらず、昭和の時代から進化していない営業組織を多く見かけます。

日本の営業職を取り巻く現状

まずは下記スライドをご確認ください。

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日本経済は、資本(設備投資)も労働も減速し、全要素生産性(技術革新)も停滞してきています。
その中では、テクノロジーへの投資を加速し、人材の生産性を高めることでしか、経済の再加速は見込めないとも言えます。

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そして営業職の労働人口に目を向けたとき、現在日本のビジネスを創り出している300万人の営業パーソンは、少子高齢化により20年後には20%減が見込まれます。
(中でも、いまの営業現場をリードしている課長・部長クラスの年齢層の人数は、30%減の試算が出ています)

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つまり、試算すると日本の営業パーソンは一人当たりの生産性を25%以上向上させないと日本経済の再加速には貢献できないと言えます。

起こりがちな営業組織の課題

このように、生産性向上が急務である日本の営業職ですが、

・改善されない営業活動、回らないPDCA
・属人化する情報資産
・育たない営業人材
・期待値を下回る元トップセールス管理職
・現場に運用されない営業支援ツール
・集まらない営業活動データ

このような課題が多くの企業の営業組織で頻発しています。

これでは営業パーソンの進化は難しくなってしまいます。心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

その理由は、

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このような、前時代的な ”営業は気合いと根性だ!” などの言葉に代表される旧態依然とした現状にあります。

ここに、

① データ
② 型

を持ち込むことによって営業を科学し、この課題を解決をすることが可能になります。

前置きが長くなってしまいましたが、営業を科学することの重要性がお分かりいただけたでしょうか。

営業を科学する二つのアプローチ

営業を科学するには大きく二つのアプローチがあります。

① プロセスマネジメント

営業活動にはプロセスがあります。

まず、初めて顧客に接触するフェーズ⇒初回アポイント⇒提案アポイント⇒クロージング⇒申込書提出(回収)など、受注までに生じる各プロセスを切り分けて考えることができます。

この、各フェーズに何%の確率で移行できるかという歩留まりを集計することができれば、『どのフェーズで案件を落とし(失注し)、どの確率で受注できるか』を明確に知ることができます。

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例えば、上記レポートのケースでは、提案アポイント⇒クロージングのフェーズ移行率が受注のボトルネックになっていることが分かります。

(SFA運用においては上図とは少々異なるフェーズ名の設定をすることが多いですが、一旦わかりやすい形にてご紹介しています)

この例においては提案⇒クロージングのフェーズ移行率を50%に引き上げることができればそれだけで受注率は10%程度向上させることができます。

つまり、この営業チームが6名で毎月1億円売り上げていたと仮定すると年間で1.2億円の増収を見込めることになります。

これをやらない手はないでしょう。

しかし、”どうやって提案⇒クロージングのフェーズ移行率を上げるのか”という点がわからない方が多いのではないでしょうか?

そこで、購買心理から逆算した商談の型を理解し、このプロセスマネジメントと紐づけて考えることにより改善が可能となります。

② 購買心理から逆算した商談の型

営業をする際、顧客側の心理として初めて営業と接触したタイミング~”買おう”と思う意思決定の瞬間までの心情の変遷があります。

この”心の動き”を理解し、どのように導くかを設計できれば受注までのステップを”狙って”進めることができるようになります。(BtoBのMid Market~Enterpriseの営業においてはより多くの意思決定関与者が存在するので実際はもう少し複雑になりますが)

その購買心理から逆算した商談の進め方をまとめると下記のようになります。これを私は ”商談のゴールデンスタンダード” と命名しています。

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大きな流れを捉えると、

①Relatoionship:信頼関係構築 
②Needs:ニーズ把握
③Control:ニーズ・商談のコントロール
④Close:提案・クロージング

となります。つまり、

仲良くなって
→欲しいものを知り、
→欲しくなるよう心をくすぐり、
→買っていただく。

という流れです。
各詳細は、

1. 好感獲得 (Relationship)
⇒顧客から最低限嫌がられず話を聞いて貰える状態を作る。理想は、好感を持たれ、且つ興味を持って頂けている状態。

2. プロとしてのポジション獲得 (Relationship)
⇒商品や業界について顧客との間に情報格差があることを示し、中立的にアドバイスすることによってプロとしての信頼を獲得する。

3. ビジョン共有 (Needs)
⇒商品選びというレベルから、理想とする生活、業務、経営、生き方など上位概念に話を引き上げ、顧客の理想や夢を広げていくヒアリングによりニーズを広げる。

4. 問題点共有 (Needs)
⇒現状の不満ポイントならびに、理想と現在のGAPを引き出し、満たされていないニーズを確認する。

5. 期待値調整 (Needs)
⇒“ニーズ把握”で広げた風呂敷を畳むイメージ。理想を描き、購買意欲と商品への期待が高まったところで、夢への第一歩としての商品価値を摺り合わせる。

6. オブジェクションハンドリング (Control)
⇒“買わない理由”を否定せずにハンドリングすることで、買わない理由を解消する。事前に想定反論を洗い出し、応酬話法を用意しておくこと。

7. アンカリング (Control)
⇒商品を選択する際の判断基準を設定すること。自社品の強みが活きる土俵で勝負するための事前刷り込み・合意を行う。

8. 差別化 (Control)
⇒アンカリングで設定した判断基準で他商品と区別することで必然的に自社品が有利となる差別化がなされ、顧客に選択される。

9. イメージ喚起 (Close)
⇒購買直前の不安感を解消するため、実際に使用した際のイメージやメリットを喚起し、更に買いたい気持ちを高めるプレゼンを行う。

10. クロージング (Close)
⇒ここまでの商談のリマインドにてメリット/デメリットをまとめる。デメリットを改めてハンドリングすることで合理的な判断であると確認する。その上に”思い”を乗せ顧客の背中を押す。

以上のようになります。

この流れで商談を進めるとストーリー性ができ、自然と顧客を誘導する事が出来るようになります。

①+② プロセスマネジメントと商談のゴールデンスタンダードの融合

この商談のゴールデンスタンダードと、セールスステップを融合させると下図のようになります。

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関係構築が得意な営業パーソンは初回アポイントを取得するのが得意だったり、ニーズを把握するのが得意な人は提案アポイントまでたどり着きやすい。商談をコントロールできる人はクロージングまで行ける、などです。
(わかりやすい例で言うと、若い女性は好感獲得がしやすく比較的初回アポイントまでのフェーズが強い、といったことはよくあります)

このように、プロセスマネジメントと商談のゴールデンスタンダードを融合させ、各商談のフェーズにおいてやるべきことを明確化できれば、商談のPDCAが確実に回るようになるのです。

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例えばプロセスのKPIを設けて上図のように設定すると、そのKPIの数値が悪化した際に、何が課題で、何を改善すべきかを特定することができるようになります。

これを組織の共通言語として浸透させ、常にプロセス指標を集計できていれば、日本の工場での生産管理と全く同じでIoTで生産管理できている状態を営業組織でも作り上げることが可能になります。

このようにして、営業組織の受注率を上げていくことが可能になります。

営業改革の全体像

最後になりますが、ここまででご紹介したのは ”受注率向上” のための営業の科学です。

これは営業組織全体の生産性を向上させる手法で最も難しい事ですし、最も組織を筋肉質化し長期的に強い組織にするために重要な事です。

一方で、営業生産性向上の全体像を捉えるとするとどうでしょう。

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このように、売上を上げていくには受注率 (成約率) の他にも、商談数、リードタイム、単価と三つの変数があります。

ただ先ほど申し上げた通り、受注率向上を目指すのは最も重要な事です。

なぜならば、
成約率を上げる=商談の質向上 を意味し、
商談の質が向上すると、受注までの期間(リードタイム)が短縮されます。
これにより、こなせる商談の数は増え、商談数が向上します。
また、値引きリスクが下がることにより案件単価は相対的に上昇します。

このようにし、売上生産性に関わる他三つの変数に影響を与えるからです。

ただ、この営業生産性よりさらに上位概念で
企業としてどのように勝っていくか、業績を最大化させるか、ということを考えていくと ”事業戦略” までを視野に入れて考えていかないといけません。

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今回書いたのはいわゆる ”実行フェーズ” ですので、
その前段階のStrategy=戦略(市場環境分析等をした上で、どう攻めるか)や、Targeting(狙った市場の中での顧客攻略の優先順位付け) までを考えられていないと、間違った方向に進んでいるかもしれません。

この戦略やターゲティングを理解していると、実行フェーズで異常値を発見した際、戦略の間違いにも気付けたりします。

このように、営業活動そのものだけではなく、事業戦略やビジネスモデル全体を考えた際のキャッシュポイントなども含めて理解しておくと、より営業活動の生産性は向上させやすくなるでしょう。


さいごに、、

営業は、ネガティブな印象を持たれることも多い職種ですが、
突き詰めると、極めてエキサイティングかつクリエイティブな仕事です。

センスが必要とも思われがちですが、営業≒経営活動であり、極めてロジカルな仕事でもあります。

このnoteを通じて、営業パーソンや営業マネージャーの方に、
営業の魅力や、更なる業績向上の可能性、はたまた難しさを伝えられ、少しでも気付きを得て頂けましたら幸いです。


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