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中国北派武術進化論〜イルカとサメと人間と

イルカは、人間と似ても似つかない。
しかしどちらも哺乳類であり、ある時点において共通の祖を持っている。

イルカは、サメとよく似ている。
しかし、まったく別の生物である。
少なくとも、人間よりは遠い生物だ。

武術の系譜もこれと似ている。

「中国北派武術」は、一見似ても似つかない多様な流派を含んでいるが、「それがどこからやってきたのか」と辿っていくと、共通のベースを持っているのである。

逆に、詠春拳や白鶴拳などの「中国南派武術」は、部分的に北派と似たような動作があったとしても、ベースが根底から異なっている。

なので私は、中国南派武術については語らない。
私にとって一番間違えやすいジャンルだと思っている。

「脊椎動物」を大きく分けると魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類となる。
これと同じくらいの粒度で「中国北派武術」を大きく分けると、

・弓歩ベースの流派
・三体式ベースの流派

に分けられるだろう。

中国北派武術の源流は、弓歩ベースである。
しかし、ある時点で「三体式」が発明された。
発明したのは、形意拳の実質的創始者である李洛能であると見るべきだろう。

この三体式は、中国北派武術における一大イノベーションであった。

三体式ベースの流派は、弓歩ベースの流派とは大きく異なる進化をし始めた。
しかし、とはいえ、弓歩があって初めて三体式が可能になるのであり、その意味では共通の祖を持っているのである。

三体式ベース流派の代表格は、形意拳、八卦掌、意拳である。
流派の数は弓歩ベースより少ないが、その存在感は大きい。

それ以外の中国北派武術は、基本的には弓歩ベースである。

一番わけがわからないのが太極拳である。

太極拳は、本質的には弓歩ベースだ。
しかし太極拳は良くも悪くも柔軟で、後発の技術すらも取り込んでしまう。

そのため、後発であるはずの三体式も取り込んでおり、流派の数も膨大になって、わけのわからない状態になっている。

まあしかし、柔軟で学びやすいが故に太極拳は今日まで発展してきたわけで、中国武術普及における貢献度が大であるのは確かである。

あとは、学ぶ者の姿勢如何だ。

自分が今、何をやっているのか。
見失わないようにしたいものだ。

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