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楽しく、効率的にお掃除を!DUSKINモップのお掃除モニタリングシステム

 お掃除。みなさんは毎日お掃除を行っていますか?日本では古くから、お掃除は単にきれいにするだけではなく、魂を掃き清め邪を払うという神聖な意味も込められていたそうです。オフィス、自宅、学校…近年の感染対策の必要性からも、掃除をして清潔を保つことはますます重要になってきました。今回は、自分がどのようにお掃除をしているかの情報を集め、もっと上手に、楽しく取り組めるような研究をご紹介します。

正しいお掃除の仕方とは?

 正しいお掃除の仕方は、どこで習ったでしょうか。どこからどのように掃いたらよいか、どんな動きをしたらよいか、具体的な方法をきちんと教わることなく、なんとなく取り組むことも多いのではないでしょうか。丁寧に、時間をかけて取り組むとよりきれいになるのではないか、という気はしますが、具体的にどのくらい取り組めば十分なのでしょうか。お掃除も、スポーツのように上手にできる、あまり上手ではない、など熟練度があるのでしょうか。また、正しい方法はあるのでしょうか。例えば、テニスでは、フォアハンドストローク、バックハンドストローク、という基本のラケットの使い方があるかと思います。お掃除もスポーツのように、基本的な正しい動きがあったら知りたいですよね。
 小学校のお掃除の時間、箒を持って振り回している…なんて現場を目撃したことはありませんか?振り回すのは、学校のルール、常識で考えて良くないですよね。何より危険です。それだけはなく、実はほこりを空気中に巻き上げてしまい、かえって汚してしまうことにもなります。ほこりを吸ってしまうのも気になりますよね。そんなとき、「違うよ!」と教えてくれるようなシステムがあったらな…。

ダスキン社と協力!お掃除行動をモニタリングしよう!

 中山研究室では、ダスキン社との共同研究で、モップを使ったお掃除モニタリングシステムの研究を行っています。お掃除をするためのモップに取り付けたセンサによって、ユーザがどのような動きをしているのか、道具がどのように使われているか、といったことを解析します。人の動きや道具の利用に関するデータを集めることで、その実態を解明し、より良い行動につなげるような仕組みをつくることができます。

・モニタリングとは?

 モニタリング技術とは、あるものを計測し、そのデータを収集・伝送した上で分析するための技術やシステムのことです。IoT(Internet of Things)技術の発展に伴い、様々なセンサを用いたモニタリング技術が研究されています。
 例えば、効率的な農作物栽培のために、温度や湿度を測るセンサがあります。医療分野では、心拍センサや体温センサを用いて患者の健康状態をリアルタイムに監視するシステムなどがあります。

モップにセンサを取り付け、IoT化!

 研究には、ダスキン社の「ララ」という家庭用モップを使用しました。

スタイルフロア ララ 家庭用

 家庭用のフロアモップです。
床、階段、サッシ、狭い部分など、家庭内の様々な場所のお掃除に使うことができます。

モップにつけた加速度センサはこれ

 柄の部分にTWELITE CUEという無線通信モジュール付きの3軸加速度センサを取り付けました。これにより、モップでのお掃除の動きをリアルタイムに認識することができるようになります。

・加速度センサとは?

 1秒における速度変化(加速度)を測定するセンサのことです。スマホ、タブレット、ゲーム機のコントローラー、パソコンのハードディスクなどに用いられています。3軸(X軸、Y軸、Z軸)つまり縦、横、奥行きを感知するセンサがついているので、水平状態の情報を検出することができます。スマホの歩数計アプリ、傾きによる電源のオン・オフ、カメラの手振れ補正などにも加速度センサは使われています。ボールの打ち返しや、ゴルフの素振りを体験できる家庭用テレビゲームも普及していますね。遊んだことがある方も多いのではないでしょうか。

モップの動きを識別しよう!

 一口に「モップを使った動き」と言っても、実は色んな動きが含まれます。お掃除行動をモニタリングするためには、まずは実際にどんな動きがあり得るのかを考える(問題定義などとも言います)必要があります。最初は「モップの使い方って・・掃除とチャンバラでしょう?」などと思っていたメンバーでしたが、ダスキン社と協力して検討した結果、なんと動きの種類は10にも及びました。ここでは、その内の代表的なものをピックアップしてご紹介してみます。

・モップを押して歩く拭き掃除

 モップといえばこれ!一般的な使い方ですね。モップを使ってお掃除すると聞いて、まず思い浮かぶのはこの動きではないでしょうか。廊下や教室で並んで競争したことがある人もいたりして…?

・モップを箒のように使って掃く動き

 箒ではよく行う動きですが、モップの場合掃くように勢いよく動かすと、ホコリを舞い上げてしまいます。ごみを集める際にこうしてしまいがちですが、正しいお掃除の観点からは、ゆっくり掃いて止めるように使うとよいそうです。

・お掃除以外の行動

 例えば、モップを持って止まっているなど、お掃除以外の行動はここに分類されます。あ…!あちらでモップをもってチャンバラがはじまりました!チャンバラも、お掃除以外の行動として認識されます。お掃除さぼりを発見することができますね!先生に言っても信じてもらえないときはIoTモップを導入してデータを提示しましょう。

 さて、センサによって取得した加速度データから、機械学習の技術によって「今どの動きをしたのか」を識別することができます。つまり、「お掃除を頑張ったこと」や「お掃除をしているフリをしてサボったこと」などが、簡単に分かります。さらに、上手な(=好ましい/オススメの)動きや、逆に下手な(=好ましくない)動きをも識別することができたりします。
 識別してみると、いろいろな動きがあるのですね。正しい動きを知ることができたので今日からきちんとモップを使うことができそうです。お掃除をしたくなってきました。

「君ならできる!」フィードバックがもらえる

 モップの動きのデータをリアルタイムに集めてユーザの動きを解析することで、頑張りに応じて、褒めたり応援したりしてくれるフィードバックシステムを作りました。フィードバックをもらえることで、もっと頑張ろう、とモチベーションがあがりますね!
 このようなフィードバックについては、次回の記事で詳しくご紹介したいと思います。

ダスキン社との打ち合わせ ときどきドーナツ

 ダスキンの本社は大阪府吹田市にあります。オンラインで打ち合わせをすることもあれば、研究室に来ていただいたり、研究室メンバーで大阪に伺ったりもします。学生メンバーも自分で事前に研究の進捗具合を資料にまとめ、発表、活発に議論をできるようにしています。大阪ではダスキンミュージアムを見学し、お掃除の知識を深めるとともに、ミスタードーナツのドーナツ手作り体験もしました。

・ダスキンの名前の由来

 ダスキンは日本で初めて貸し雑巾の事業を始めました。社名は、「DUST(ほこり)」と「ぞうきん」を合わせてDUSKINとなったそうです。

学生さんにお話を伺いました

研究を行っているM2の八重樫さんに、お話を伺いました。

・どうしてフィードバック人形はペンギンなのですか?

 研究を進めて行く中でフィードバックがあるといいね、という話になったときに、研究室にやってきたそうです。実は中山先生が、もともと筆箱になっていて切ったりしなくても中に機械を入れられるような、かわいいぬいぐるみを用意してくださったそうです。

・取り組みの中で大変だったこと、楽しかったことは何ですか?

 人にモップを動かしてもらって、データを集めました。医療系の研究で多いそうですが、実験で人が関わる際は、倫理審査などの手続きが必要になります。これまでの研究ではそのようなことがなかったので、対応するのが大変だったそうです。

 八重樫さんが祖母のお家に行ったときに、ダスキンモップが置いてあったそうです。センサを取り付けられるところですが、センサは取り付けなかったそうです。便利な日常から離れてほっとするので、もとからあるものもそのまま残っていてほしい、ということを八重樫さんがおっしゃっていて、印象に残りました。

現代人にとっての「お掃除」とは…?

 今回の記事では、お掃除をテーマにした研究をご紹介しました。わたしたちは、「お掃除をする」ということを当たり前のように認識しています。が、世界、歴史の中から見てみると、自分で毎日清潔な環境を整えているというのは実は現代、特定の国、人々の特色なのかもしれません。
1932年『すばらしい新世界』という物語の中に、ハクスリーは文化人類学発展により注目された先住民族の生活と当時の急速な技術発展を見て、未来の生活を予測し織り込みました。そのなかに「清潔」がありました。毎日お風呂に入り、部屋を掃除して清潔にする。感染症は敵である、そんな未来になるのではないか、と。まさに今、そんな未来が到来しているわけですね。
 『学校清掃』沖原豊,学事出版(1965)では、学校教育とお掃除について述べられています。学校で生徒自身が清掃を行うのは、実は日本やアジア諸国など一部の国だけと言われています。産業が発展し日本文化が失われていく中で、欧米にはなく日本に残る文化である学校での掃除は教育的な意味があり、人間形成の意味を担っているそうです。禅や武道でも古くから掃除はとても大事なこととされています。下女や書生が行っている時代、場所もありました。
 高度経済成長に伴い清潔に関する意識が向上し、現代、先進国社会でのわたしたちの生活において、清潔に保つことは当たり前のこととなりました。また近年の社会環境の変化によってますます清潔に対する意識、重要性は高まっています。
 そして現在も、お掃除の在り方は変化、多様化し続けています。お掃除ロボットが普及し、どんどん便利になっていく一方、教育、禅などの視点からもあえて自分で手を使い掃除をする文化も残ってほしいと思うかもしれません。今後はどのようになってゆくのでしょうか…。



 面倒になってしまいがちなお掃除ですが、よりきれいに、効率よく、そして何より楽しく取り組めたらとても素敵ですね。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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