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歯医者さんも知らないフロスの新常識

自分で書いといて、アレですが。だいたい「新常識」って怪しいですよねw
もちろん「知ってる歯医者さん」もいますよ。私も含めて。でも大半は知らないですよ。知っていても、”事実を受け入れることが出来ない”歯医者さんがほとんどです。私の主観ですが、(日本において)知っている歯科医師1%、事実を受け入れている歯科医師10%なので、「歯医者さん1000人に聞いたら、1人くらい受け入れてるかな~」って感じです。←エビデンスレベル6以下w
今回の記事では、「現状でのデンタルフロスの事実=科学的根拠」をメインに、「なぜ受け入れる事ができないのか」、「専門家がこぞって否定する場合の科学的考え方の提案」を話そうと思います。
今回は結論を先出ししますので、記事を読んでられない人は最後の「まとめ」を読んでください。

まずは結論

「フロスを使用する科学的根拠が薄すぎる!」

この記事を書いてる時点で2019年ですが、この話って実は2016年にアメリカで騒がれた話なので、知っている人もいると思いますが、が!知ってる歯医者さんは少ない現実。残念ですね。
ちなみに、アメリカでの事の顛末を簡単にお話すると


AP通信が米国政府に「デンタルフロスの使用を勧める」科学的根拠を訪ねたところ、「フロスの有効性を裏付ける研究がないこと」を認めて米国政府が発行しているガイドラインからも「デンタルフロス使用の推奨」の項目が削除された!!
ついでに、米国歯周病学会(AAP)も「フロスの科学的根拠が弱い」事を認めている。
記事リンク

ということですが、
私の記事を読んでくださる方々には「じゃあ、もう、決定的じゃん」と結論を出して欲しくないんです。

「本当に科学的根拠ないの?」あるいは「AP通信が『フロスの科学的根拠弱い』とする科学的根拠はなんだろう?」

と考えて頂いた方が私の記事を読んでくださる方には多いんじゃないでしょうか?そうであって欲しい!
このAP通信の記事のあとにも、エビデンス1の論文も出てますが、AP通信が決定打としているだろう論文を紹介します。(エビデンスレベルについては、過去の記事こちらを御覧ください。)

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1111/jcpe.12363

こちらの論文エビデンスレベルはレベル1で信頼性としてはもっとも高いランクに入ります。この論文はシステマティックレビューという、そもそもエビデンスレベル1の論文をまとめて分析した内容になります。
ドイツ、クリスティアン・アルブレヒト大学キール、Sonja Sälzer先生の論文で、395論文から6つのシステマティックレビューが行われて、そのうちの2本の論文がデンタルフロスの有効性を評価したもので、デンタルフロスの結論は簡単に言うと以下のようになります。

①フロスがプラークを減らす科学的根拠はなさそう。
②歯肉炎を減らす科学的根拠はかなり低い
③専門家が使うと虫歯予防に効果がある

上の結論がスッと頭に入ってこなくてもOKです。このあと分かりやすく説明します!歯科医師・歯科衛生士の方はこの結論で十分なはずです。

質問です。「フロスは何のために使いますか?」

いろんな答えがあると思いますが、下の図のどこかに入ると思います。

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プラークは一般的には「歯垢」とか言われますが、
このどこかに効果があると思ってフロスを使うわけです。

さて、ここからが大事なところです。
フロスでプラークを除去することで、歯周病や、むし歯、口臭に対して効果があり、それらは生活の質(QOL)の向上に貢献すると考えられます。←ココ!!「考えられる」ってところポイントです。

ヒトは、このような単純化したモデルで、いろいろと考えがちですが、
「こんなに世の中単純じゃない」
ので、単純に「プラークを減らした」から「むし歯予防」にならない可能性があることを頭においておいてください。

例えば、フロスでプラークを除去すると、他の菌が増えて、実は「むし歯が増える」なんてことが起こらないとも言えない。

さて、論文では
「むし歯の予防効果」を「プラークの減少」
「歯周病の予防効果」を「歯ぐきの炎症の程度」
で判定しています。

まぁ直接、むし歯の数を数えるのは大変ですからね。
ちなみに、口臭予防や、生活の質を計測した実験はなかったようです。

以上を踏まえて、結論を言い換えると、めっちゃシンプル

フロスしても、歯周病予防にも虫歯予防にも効果薄そう。残念。

でも、歯医者さんや歯科衛生さんが使うと、効果があるって事は、ちゃんと練習したら効果は出るかも。ということです。
が、「かも」は「かも」ですね。そんな実験はありませんから、仮説は仮説のままですね。

ということで、私が歯科医師として話をするとしたら、

【まとめ】

①フロスの科学的根拠薄すぎ。
②でも練習したら、効果が出る可能性もあるかも。
③でもでも、フロスのマイナス面もチラホラだから
④「使いたかったら、使ってみても良いですよ。『あなた』で効果が出てるかは計測して今後続けるかは考えましょう」

って感じです。
あまりに長くなったので、「なぜ受け入れる事ができないのか」、「専門家がこぞって否定する場合の科学的考え方の提案」は次回の記事にしますね。

ではまた。


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