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大学時代に100近くのイベントを企画した元学生団体代表が考える、これからの学生団体とイベントのトレンド

「先輩、人集めが大変で。。。」
「イベントをやっても人が来ないんです」

 最近後輩たちからこんな相談をされることが多い。
 自分が学生団体をしていた頃は交流会の開催を告知すると3日で40人の定員が埋まることはザラで、クリスマス時期などの大規模なパーティーは2週間で200名が集まったこともある。
 しかしながら、交流会は20人集まったらいい方、50人集まれば大規模なイベントに分類されるのが現在の状況だそうだ。(医療系団体からしか相談されていないので、他分野の団体は該当しないかもしれないが)

 ではなぜ今、人がなかなか集まらないのだろうか。学生時代に大小100近くのイベント企画・運営に関わってきた自分なりに考察してみようと思う。

①現在の大学生の興味はどこへ?
⑴情報収集の主体の変化(HPからSNS中心へ)
(2)学生団体から学生企業・インターン・社会貢献事業の時代へ

②現在のイベントトレンド
(1)SNS・インスタ映えするのは最低条件
(2)圧倒的に尖っていて、非日常感を感じられるイベントである
(3)自己参加・体験型のイベントである

③イベントがイケてるだけでは人は来ない
(1)集客できるイベントの広報は動画・写真のクオリティが高い
(2)デザイン性の高いサイト、SNSページを持っているということ

①現在の大学生の興味はどこへ?
(1)情報収集の主媒体の変化(HPからSNS中心の時代へ)

 私が大学1年生の頃はちょうどスマートフォンが普及し始めた時期で、情報収集の主体はまだメーリスやサイト検索、そして先輩からの口コミがメインで「外部の人と繋がりを持ちたい」「何か活動してみたい」と言えば学生団体やサークルの交流会を紹介してもらうのが主な流れだった。(LINEさえ無かったのだから驚きである。)

 現在は日々SNSに莫大な量の情報が飛び交い、その中で自分に興味のあることを見つけ、飛び込んでいく機会はどんどん増えている。情報が増えれば増えるほど魅力的な活動を目にする機会も増え、その競争に勝てる団体のみが勢いを増し、既存の方式・パターンに頼っているとどんどん痩せ細っていく。つまり、大学生が最も使用する情報媒体であるSNSにおける発信で遅れを取れば、どれだけ素晴らしい活動をしていたとしても必然的に人は集まらないのである。
 活動内容を充実させる前にまずは今どういった広報活動をしているのか、この広報で本当に人が来るのかを再度検討することが重要ではないだろうか。広報に関しては後半の③イベントがイケてるだけでは人が来ないにて紹介しているので、是非参考にしていただきたい。

(2)学生団体から学生起業・インターン・社会貢献事業の時代へ

 SNSによる情報量が増えたことにより、大学の低学年の頃から自分の夢を追いかけ始める学生が増えているのも印象的である。
 過去には実現できそうに無かった夢やアイディアであっても、今の時代はReadyforを始めとしたクラウドファウンディングやETICといった起業支援が充実しており、本気でやることを決めてしまえば大抵のことは実現できる時代になってしまった。また、有能な人物を学生のうちに青田刈りすることが有効であることに気づいた企業は、着々とインターン内容を充実化させている。大人からのサポートが簡単に得られる時代になったのである。

 結果、過去に学生団体をリードしていたような人物達は、学生時代に起業したり、素晴らしい社会貢献事業を一流企業ばりに展開し、時には一流企業と提携し、これまで以上に幅広い活動を行うことようになった。また、スキルアップを図る学生はインターンを利用して自らの実務経験を増やし、企業とのコネクションを学生のうちから強固なものにしている。

 では貧窮した学生団体が今取るべき道は何か。
 1つ目の手段としては、団体の趣旨に合致した社会貢献事業を積極的に取り込み、時代の流れに沿うものへとシフトチェンジしていくことである。もちろん既存の活動はメインの一つに据えてもらっていいのだが、それにプラスして今の活動的で若い大学生を団体に取り込む、魅力的な内容を再度充実させていくことが必要である。
 2つ目はすでにあるコンテンツ内容を今のトレンドに合致したものなのか、もう一度見直すことである。過去に最先端であったコンテンツも、今では当たり前すぎてつまらないかもしれない。本当にそれで人が集まるのか?それを徹底検証する必要があるのではないか。それでは現在のイベントトレンドを紹介していこう。

②現在のイベントトレンド
(1)SNS・インスタ映えするのは最低条件

 では、今のイベントのトレンドとは何だろうか。先に述べた通り、スマホの普及に伴い、オシャレな写真をいかにSNSへアップしてイイねを稼ぐかが、一種の自己ブランディングの手法となってきている。特にインスタグラムの台頭により、容易な写真加工でおしゃれ写真のレベルは急激に向上しており、その中でいいね数を稼ぐにはイベント自体がフォトジェニックであることが求められる。逆に言えば、イベントがダサければSNSに上げる価値なしと判断され、昨日食べた洒落たパンケーキのみがインスタに上がることになるであろう。
 さらに、2016年後半からは各SNSのライブ配信機能を契機に急速に動画の位置付けが高くなっている。今後はフォトジェニックであることに加え、ムービージェニックなイベントが急増していくのは間違いない。


株式会社ハイの手がけるtamapa。大人のためのボールプールパーティを謳い、フォトジェニックであることはもちろんムービージェニックなイベントの先駆けとなっている。

(2)圧倒的に尖っていて、非日常感を感じられるイベントである

  「考えもしなかった発想」「非日常感が感じられる」が2つ目のポイントである。現代の日本人は日常の社会生活の中で疲弊しきり、非日常感が感じられる開放的な空間に日頃のストレスの捌け口を求めている。ここ数年の様々なフェスの大流行はその代表であろう。さらに、発想次第で何でも実現可能となった現代では、思いつきもしなかったぶっ飛んだイベントが「面白くて新しいもの」としてバズる。
 一方で、過去に尖っていたイベントも時代の流れとともにありきたりなものへと変化してしまうことがある。(私が2012年に開催したハロウィンパーティーは当時渋谷のお祭りもなく真新しいものであったが、今はありふれたイベントの一つとなってしまった)
 既存のイベントとは一線を画し、さらに非日常感が感じられるイベントが今後増えていくことであろう。

Afro & Co.さんの手がける、船上のマグロハウス。尖った発想と非日常感の双方を押さえたイベントの代表とも言えるだろう。

(3)自己参加・体験型のイベントである

 最後のポイントは自己参加型のイベントであるということだ。自分がイベントの一端を担い、実際に体験し、主催者及び参加者が一体となって創り上げる。盛り上げる。それぞれの参加者はそのイベントのパフォーマーであり、この点に大きな高揚感を覚える。また、参加者自身がイベントの雰囲気自体を作り上げている点も大事な点である。懇親会やパーティーでも、何かしらの自己参加コンテンツを組み込むことが重要であり(典型例はビンゴ)、そのコンテンツが面白ければ面白いほど集客率も上がるであろう。

こちらもAfro & Co. さんのSlide the City。自己体験型であることに加え、非日常感的な開放感が味わえる。

 でも結局こんなイベント開催しようと思ったら、天才的なアイディアが必要だし現実的には厳しいな。。。と思ったそこのあなた、それは間違っている。イベントのアイディアは自然に沸くものではない。アイディアはやりたいイベントのキーワードから練り上げ洗練させていくものである。(稀にポンポン天才的な発想を上げる人物もいるが、少なくとも私にはそんな芸当はできない)
 これら3つのトレンドを押さえた上で、自分なりに下記のようなイベントを考えたので一例として示す。(仕事の都合上、自分では開催出来そうにないのだがもし興味があれば個人でやっていただいて構わない。)

'フォトジェニック'×'非日常的'×'自己参加型'のイベントをしたいなぁ
→南仏では全身白のドレスコードで屋外でシャンパンを空ける、洒落たイベントがあるらしい
→これ日本verでやれば楽しいのでは?
→じゃあみんなで浴衣を着て、代々木公園とかでスパークリング日本酒空けるイベントやったら絶対楽しいじゃん!インスタにも持ってこい!

 イベントに限らず、様々なプロジェクトのアイディアは無意識であったとしても、必ずこの手順を踏んでいる。もし今手詰まり感があれば、ぜひ初心に立ち戻り、これらトレンドと照らし合わせて再検討してみてほしい。

③イベントがイケてるだけでは人は来ない
(1)集客できるイベントの広報は動画・写真のクオリティが高い

 一方で、どれだけ面白くてイケてるイベントでも広報が伴わなければ人は来ない。どうやって参加させたいと思わせるか、イベントがイケてるかを伝えるかが重要であり、これらが充実していれば内容が多少劣っていても人は集まる。私が考える広報のカギは下記の2点である。

・動画こそが広報戦略の基本。
・写真は一眼レフはマスト。腕の良いカメラマンがいればなお良い。

 先述の通りSNS各社は動画のコンテンツを急速に充実させており、動画の位置付けはより高いものとなってきている。動画は文章を読むよりイベント内容や会場の雰囲気が伝わりやすく、広報を行う上で非常に効果的だ。(正直、広報文を隅から隅まで読むのは、勉強会に参加する真面目な医大生ぐらいであろう)これは上記の例で紹介したようなtamapaやマグロハウス、Slide the Cityの動画をご覧いただければ、ご理解いただけるだろう。
 この際に注意が必要なのが、動画の中で写真を多用してしまうことだ。確かに動画を撮るタイミングは難しく、写真しか残っていないシチュエーションも多いであろう。だが、写真を動画に流すのであれば広報文に写真をつけるのと何ら変わりない。なお、私はレッドブルのFacebookページに流れてくる動画をよく参考にしている。普段からクールな動画をチェックすることが動画編集技術を上げるコツである。

 写真の重要性も一筆しておこう。ここ最近一眼レフやミラーレスカメラの値段は下がり、手軽にクオリティの高い写真を撮れるようになった。それに伴い、広報写真は一眼レフでの撮影が当たり前であり、スマホで撮った写真を載せていては内容が良くても「時代遅れっぽくてイケてない」という烙印が押されてしまう。

 ここで私が提案するのは、広報担当に団体で一つ一眼レフと動画編集ソフトを買い与え、プロ並みの専属カメラマン・編集担当者を下級生の頃から養成することである。コストがかかるとは言え、将来的な集客の増加、広報クオリティの上げ幅を考慮すれば良い投資ではないだろうか。レッドブル社は独自に動画撮影チームを持ち、イベントを事前に魅せることでバズらせているという。一流企業もどれだけ動画・写真コンテンツに力を入れているかが窺われるだろう。

スマホと一眼レフでの撮影比較。似たような構図であっても、一眼の方がイケてるイベントのように見える。

(2)デザイン性の高いサイト、SNSページを持っているということ

 イケてる団体は、母媒体であるSNSページやサイト作成にもしっかりと力を入れている。Webページのデザインは細部までこだわり、写真は一眼レフ撮影のものを使用して、SNSでは週1〜2回のマメな投稿を欠かさない。活動を続ければ続けるほど、これら投稿は億劫なものになり、徐々に雑に、最終的には更新さえしなくなる。
 消費者はこの作業を意外によく見ているものである。サイトやSNSページに飛んだ時に最終更新日が半年前であったり、内容がpoorなものであればそれだけで信頼性は損なわれ、客足は遠のく。また、過去に作成し当時はおしゃれなデザインであったものも今は古く見える場合がある。時代の流れは早いもので、2〜3年で当時の流行は廃れてしまうのだ。面倒であっても、現状のサイト・SNSページの状態のチェックを怠ることなく最新のものへとアップデートしていかなければならない。

 長くなってしまったが、以上が大学時代に100近くのイベントを企画した私の考える、これからの学生団体とイベントのトレンドである。これらは私が学生の頃から意識していたわけではない。数多のイベントをこなし、現在の流行をチェックし続けた結果見えてきたものである。
 イベント業界にいるわけでもないし、その手のプロの方からしたら「小僧が偉そうに何を」と言われてしまうかもしれないが、それでも学生団体の方針に迷っている方や今後イベントの開催を考えている人がいれば、この記事がその一助となればと切に思う。
 最後に、お読みいただいた皆様ありがとうございました!

<追記>
 勉強会の運営に関してもほとんど同様です。内容は各分野のトレンドがあるので省略しますが、開催場所がフォトジェニックであること、広報がマメであること、自己参加型であること等はいいアクセントになるでしょう。

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