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コネコビト

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コネコビトのお話。
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コネコとシイナさんの、文学の不在 #文学フリマ 東京37出店告知掌編 #コネコビト

コネコとシイナさんの、文学の不在 #文学フリマ 東京37出店告知掌編 #コネコビト

文学フリマというのは、聞いたことはある。なんでも、いろいろなひとが自分が文学であると信じた何かを作り上げて、紙とかに印刷して、冊子とかにして、売ったり配ったりしているらしい。
行ったことはないけれど、楽しそうだな、とシイナさんは常々思っていました。  
卒業した大学の文芸サークル(ただし所属したことは無い)も出ているみたいだし、知り合いの知り合いのウェブライターも出ているらしい。
しぞーかのソエジ

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コネコとシイナさんとお盆の話6:花火とご先祖様

コネコとシイナさんとお盆の話6:花火とご先祖様

慌ただしかった今年のお盆も、今日が送り火だそうです。
「フィナーレにゃ。花火なのにゃ」
コネコが見に行きたいというので、日が暮れるのに合わせて歩いていくことにします。毎年音だけは聞いていたけど、見にいくのは初めて。
「川の向こうで上がるのにゃ」
「コンビニでビール買っていい?」  
「シイナさんは、迎え火といえばビール、お祭りでもビール、花火でもビールですにゃあ」
コネコが文句を言うので、レジ横で

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コネコとシイナさんとお盆の話5:むかしと今

コネコとシイナさんとお盆の話5:むかしと今

「きうり、帰っちゃったのかにゃ…」
一抹の寂しさを覚えて、コネコはふたたび魚屋のおばあちゃんの家に向かいます。この前と同じように、シャッターの横の細い階段を昇ります。  
「コネコちゃん、よく来たねえ」
今日出迎えてくれたのは、生きている方のおばあちゃんです。
「今日はスイカあるわよ」
「にゃにゃ? もうひとりのおばあちゃんはどこにゃ? 帰っちゃったにゃ?」
「まだうちにいるよ」
がらり、と押し入

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コネコとシイナさんとお盆の話4:空飛ぶ盆踊り

コネコとシイナさんとお盆の話4:空飛ぶ盆踊り

今夜は盆踊りです。
シイナさんは飛べない胡瓜を懐に入れて、夕涼みがてらふらっと行ってみることにしました。
「コネコ、綿あめ買って欲しいのにゃ」
「あんな原価の安そうなもの」
「原価よりロマンなのにゃ」
会場に近づくにつれ、どんどんという太鼓の音がだんだん大きく聞こえてきます。  
ここは町内で一番大きな公園で、夏の間はラジオ体操の会場にも使われています。
真ん中に櫓が組まれ、その周りでちらほら踊る

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コネコとシイナさんとお盆の話3:迎え火

コネコとシイナさんとお盆の話3:迎え火

いよいよ今夜は迎え火。朝からコネコはそわそわしています。
「早く帰ってきてにゃ。いっしょに火をつけてほしいのにゃ」
「わかったわかった」
お膳の上に用意されたチャッカマンを遠巻きに見つめて、コネコは日暮れを待ちます。
「どんなきうりが来るのかにゃ…。ずっきーにかもしれないのにゃ…」  
あいにくの雨も日が暮れる前には止んで、涼しい風が吹く頃には燃えるように真っ赤な夕焼けでした。
縁側にアルミのお皿

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コネコとシイナさんの、素晴らしき人生

コネコとシイナさんの、素晴らしき人生

なにかの拍子に
「シイナさんの人生はつまらないにゃ」
などと言われてしまい、まあでもその通りだよな、と思ったので特に反論もせずにシイナさんは二本目の缶チューハイを開けました。
つまらないのに、けっこう辛いのです、人生ってやつは。
ぷしゅう。
炭酸の缶飲料を開ける音を聞く時、新発売の酎ハイの最初の一口目を飲むとき、だらだら飲んでそのまま昼寝する時、くらいがシイナさんの最近の幸せなのではないでしょう

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夜更けにトイレットペーパーを買いに行く(コネコとシイナさんと生活といううすのろより)

夜更けにトイレットペーパーを買いに行く(コネコとシイナさんと生活といううすのろより)

生活といううすのろは、夜が更けてからやってくる。

ある晩のこと。
「シイナさん、トイレの紙がもうないにゃー」
なんということ。お夕飯も食べ、食器洗いも終わり、残りご飯でおにぎりを握って、あとはお風呂に入って寝るばかりという時刻です。
「らすいちだったのにゃ」
「えー」
こればかりは無いと困りますので、アジア風に水と手で洗うというのも気が進まないので、シイナさんはしぶしぶ靴を履いてトイレットペーパ

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コネコとシイナさんとお盆の話:2 二人のおばあちゃん

コネコとシイナさんとお盆の話:2 二人のおばあちゃん

おばあちゃんの魚屋さん、今日は臨時休業みたいです。
シャッターの横の細い階段をきしきし登って、コネコは勝手知ったる風に二階にあがります。
「おばあちゃん、コネコ来たにゃー」
声をかけても返事がありません。
「出かけてるのかにゃ?」
「すぐ戻るから、座ってなさいな」
「誰にゃ?」 
いつものおばあちゃんにすごくよく似てるけど、ちょっと違うおばあちゃんです。
「あの子は買い物にいったよ、あんたが来るか

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コネコとシイナさんとお盆の話:1 帰れない精霊馬

コネコとシイナさんとお盆の話:1 帰れない精霊馬

おぼんぼんぼぼん…おぼんぼんぼぼん…。
お盆のテーマソングを歌いながらコネコが帰ってきました。
「ターミネーターでは?」
とシイナさんは力なく突っ込みます。夏バテ気味なのです。
「道できうり拾ったにゃ。齧るにゃ?」
コネコが握りしめる胡瓜には、竹ひごで脚が4本、ついています。 
「これ、精霊馬じゃないかなあ」
「にゃにゃ?」
「お盆で帰ってくるご先祖様を乗せる馬だよ」
「きうりなのにゃ?」
早速冷

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コネコとシイナさん、熱海のうろんな温泉にゆく【第4話】 #コネコビト

コネコとシイナさん、熱海のうろんな温泉にゆく【第4話】 #コネコビト

大きなうろろん

花火の匂いと海の匂い、温泉のふわんとした湯気の匂い。ボイラーの石油みたいな懐かしい匂い。いろんな匂いに包まれて、コネコとシイナさんは細い坂道を登ります。
「お宿に大きなうろろんいるかにゃ。こわいにゃ」
シイナさんも東海道線の中で不気味な夢を見たので、なんだか不安です。  
いろいろ熱海の美味しいものを食べたのでお腹が重いのと、坂がけっこう急なのと、それに何より噂に聞いた大きな、お

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コネコとシイナさん、熱海のうろんな温泉にゆく【第3話】 #コネコビト

コネコとシイナさん、熱海のうろんな温泉にゆく【第3話】 #コネコビト

熱海では海に向かう斜面を下り、海沿い飲食店が点在しており、まずはコネコが空腹を訴えるので目についた海鮮丼ののぼりのはためく店に入ります。
丼以外に刺身や焼き物もあり、酒類の品揃えもなかなか。
「コネコ、お食事券があるから海鮮丼にしますにゃ」
「とりあえず、海鮮串盛り合わせとー、サーモン昆布締めとー、老舗豆腐店の厚揚げと、ぐり茶割り、でお願いします」
「ぐり茶? ぐら茶もあるにゃ?」
たぶん、ありま

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コネコとシイナさん、熱海のうろんな温泉にゆく【第2話】 #コネコビト

コネコとシイナさん、熱海のうろんな温泉にゆく【第2話】 #コネコビト

この山猫峠という宿は、かつてはもっと山の方にあって商人向けの旅籠を営んでいた当時の主人が、熱海にうろんの落ちる良い湯が湧いたと聞いて買い上げて旅館とし、やがて山の旅籠の方は引き払って一族で熱海に移住してきた、ということだそうです。
泉質は熱海の他の湯に比べるとどろりと濁り、源泉は熱すぎるので掛け流しではなく適宜加水しているものの、それでも十分に熱海の温泉特有の潮っぽい匂いは、浴場の外まで溢れてきま

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コネコとシイナさん、熱海のうろんな温泉にゆく【第1話】 #コネコビト #4月17日はシイナさんの日

コネコとシイナさん、熱海のうろんな温泉にゆく【第1話】 #コネコビト #4月17日はシイナさんの日

※「シイナさんの日、不思議な列車の話」から改題(2022.5.16)

旅にもいろいろある。
楽しみな旅、気が乗らない旅。
自由な旅、行かなくてはならない旅。
鉄道の旅の良いところは、そんなこちらの気持ちには関係なく、乗り込めばどんどん体を運んでくれるところだな、とオレンジ色の東海道線下り列車に乗り込んだシイナさんは思いました。 

奇しくも今日は4月17日。シイナさんの日。
だからといって盛大に

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コネコビトと超猫猫祭2022

コネコビトと超猫猫祭2022

【コネコ、久々の登場】
「ウルトラスーパーねこの日、はーじまーるにゃー!」
久しぶりの登場でこのハイテンション。
コネコビトのご帰還です。
「コネコはどこにも行ってないにゃ。みんながどっか行ってたのにゃ」
はいはい。
「超猫猫祭、猫も子猫もコネコビトも集合にゃ」
と言って、またどこかに行ってしまいます。 

【祭の準備】
何年に一度か分からないけれど滅多にないことに変わりはなく、ウルトラスーパーね

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