見出し画像

オニはマ行しか喋れない2018:恵方巻きの儀式と柿ピー

「えーっほ、えっほ、えっほ、えほーまきー♪」
コネコが恵方巻きの踊りを踊っています。
手に恵方巻きを持って、踊り終わったら最後に恵方に向かって一礼。
そしておもむろに丸かぶります。
「まま!」
「み!」
それを見ていたオニたちも、同じように踊り始めました。
オニたちには、恵方巻きは大きすぎるのでふつうの細巻きです。
具はかんぴょう、きゅうり、など、低予算のものです。

「シイナさんも、えほーまきの儀式に参加するにゃ」
「…遠慮しとく」
だって、海苔巻きってお酒のつまみにならないのです。
その代わり、スパイシークミン味の大豆フライをぽりぽり。
これは近所のインド料理店でご飯を食べた際、なぜかもらったものです。
「ジャパニーズヤクシャは、ダールがきらいです」 
と、浅黒い肌の青年が真剣な顔で渡してくれました。

「ま、め」
「ままま!」
「め?」
オニたちは、シイナさんが食べている大豆を、遠巻きに眺めています。
オニなのでマメがこわいのです。
「シイナさん、オニたちにこれあげていいにゃ?」
とコネコが出してきたのは、柿ピーです。
「ぽりぽり気分だけでも味わいたいのにゃ」

「柿とピーと交互に食べるのが作法にゃ」
「ま!」 

「うーむ…」
年の数だけの赤い花から痛みの棘を摘み取るようなこともなく生きてきたシイナさんですが、この年になると年の数だけの大豆を食べるのもお腹が苦しいものです。
「精神年齢ってことにしてくれないかな…」
「16粒にゃ?」
そう、心はいつも16才なのです。
「ま!」
「ま?」 

おもに日々の角ハイボール(濃い目)代の足しになります