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毎日20時間寝たい。

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もうこの言葉を何百回、いや何千回聞いただろうか。
淀みながらゆっくりと時間が流れていく。ひたすらYouTubeだけを見続けて、今日もまた1日が終わる。

大学は安定の自主休講。雨が降っていたからだ。いや、正確には午後からはびっくりするほどの快晴だったが、それはそれでなんか違うと思って休んだ。つまり、休む理由はなんだっていい。


「好きなことで生きていく」


そんな流行りの言葉に憧れを抱きながら大学に入った僕は、大方の予想を裏切らず、何もしないまま大学3年生になった。

同じメンツと宅飲み、カラオケ、宅飲み、カラオケ、時々バイト。そんな毎日は程よく楽しかったが、それだけだった。


何もしてないわけでもない。
本だけは読んでいた。たくさんの自己啓発本。今でもワンルームの狭い部屋の隅や机に無造作に積んである。
SNSで話題になってたから飛びついて買ったけど、結局読まぬまま飾り物と化した本もたくさんある。

もちろん読んだ設定でTwitterにはつぶやく。
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この本に出会って本当に価値観が変わった。
これで俺も2.0になれそうだ。
この本に関わった全ての人に感謝を送りたい。
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有名人の目に止まりたい一心でつぶやいてみたが、もちろんファボもRTもなし。てか、これ黒歴史だな。後でこっそり消しとこう。

意識高いイベントに参加したこともあった。SNSでいつも見ている人の話を聞きに行けば、自分も何か変われるかなって。
実際は変われないどころか、鬼ほど惨めだった。
周りの参加者は自分でイベントを開催していたり、フリーランスとして独立していたり、オンラインサロンで活躍していたり。
そんななか僕は「僕もこれから色々始めようと思っていて〜」と連呼するbotにしかなれなかった。
それでも大学生だから、まだ若いからという理由だけで、その場での市民権はギリギリ得ていた。全然嬉しくはないけどね。

それでも僕は自己啓発本を読むし(買うだけの時もある)、意識高いイベントにも参加する。
それだけで僕はキャンパスにいる他の学生とは違うんだって思える。僕は特別な存在なんだっていう自我が保てる。


✳︎


YouTubeを見るのも飽きてきたし、お腹も空いてきたので、僕は近くのコンビニまで行くことにした。
外は夕暮れ時。僕は今日初めての外出。それだけでちょっと憂鬱な気分になったが、もう慣れっこだ。

僕の家は駅から徒歩20分だが、コンビニまでは20秒でつく。ちなみに大学まではチャリで20分だ。
「引きこもってください」と言わんばかりの立地で1人暮らしをする僕は、今日も予定調和のようにセブンイレブンにチェックイン。

お目当はカップそば。カップ麺でもカップ焼きそばでもなく、いつもカップそば。なぜか昔からそばが好きで、コンビニではだいたいどん兵衛が定番。
一度ハマるとずっとそればっかり食べちゃう性格は今でも変わらない。

家でお湯を沸かすのはだるいので、コンビニのお湯を拝借して帰路へ、と言っても20秒で家に着くんだけどね。


✳︎


家に帰ってからはそばをすすりながらYouTube。結局、また見ちゃうんだよなぁ。
食べ終わってから、ふと部屋の周りを見渡す。ひどい…。

洗濯物の山、出し忘れたゴミ袋×2、おとといの宅飲みの残骸、脱ぎ捨てられた服、無造作に積み上げられて自己啓発本たち。

さすがにやべぇ…そう思いながらも、食べ終えたカップそばの容器も捨てずにGO to オフトウゥン。

やっぱり食べたら眠くなる。そう思いながら、お布団に入ったその時…


「ぽよ!」


???
ん?おかしい。いま何か足に当たった。柔らかくて生暖かい何かが当たった。そしてなんだ、今の奇妙な鳴き声は。
ネコでも紛れ込んできたのかと思って恐る恐る布団を上げると…


僕のお昼寝を邪魔するなぽよ!


いる。なんかいる。
球体だ。大きさはバランスボールより小さくバレーボールより大きい。オレンジ色の毛がふさふさ生えていて、目は小さい。口も小さい。そしてヨダレを垂らしている。汚ねぇ。見た目はタヌキに似ている。

こんな感じだ。
↓↓↓

また何か喋っている。

「キレイなチャンネーを抱きたいぽよ」混乱。なぜだ。このタヌキはどこで「チャンネー」と言う単語を覚えたのか?そもそもなぜここにいる?

「あ、あの…たぬき…?」

「たぬきじゃないぽよ!ナマケモノだぽよ!」

「ナマケモノ…?ああ、動物の?」

「ぽよ!ナマケモノのハシモトくんだぽよ!」

ハシモトくん…どうやらこいつは見た目はタヌキだがナマケモノらしい。そしてなぜか言葉がしゃべれて、なぜか僕の家で寝ていた。

終わった。ついに僕も怠けすぎて、ナマケモノの幻覚が見えるようになってしまったようだ。

「おい!お前も楽してお金稼いでチャンネーを抱きたいんだろ?あ、ぽよ?」

「(ぽよってなんだ?てか、ちゃんと語尾を統一しろよ…)
え…いや、別に楽したいわけじゃないっす。ちゃんと努力して、それで成功を積み上げて…」

努力してるやつがこんな汚い部屋で1日中YouTube見てるぽよか?

つらい。こいつは存在自体は全くわけがわからないが、なんとなく核心を突いてくる。

そうだ。本当はこいつの言う通りなんだ。
お金はたくさん欲しいし、キレイなチャンネーを抱きたいし、まわりからはチヤホヤされたいし、有名になりたい。
けど、それでも頑張りたくない、楽したいし、怠けたい。
そんな自分から必死に目を背けて生きてきた。

「俺は毎日20時間寝てるぽよ」

「ん?20時間も?」

正確に言うと12時間寝て、8時間はオフトゥンの中でだらだらして、残りの4時間は酒飲んでるか、チャンネーと遊んでるぽよ

「カスじゃないすか…」

「けど、100億円持ってるぽよ」

嘘だ。嘘に決まってる。こんなカスみたいな生活を送ってるクソタヌキが100億円も持っているわけない。しかし、そんな僕の疑いはどこかに吹っ飛ぶくらい重くて冷たい言葉が僕にのしかかった。


お前…口だけぽよね?


やめろ。やめてくれ。

「僕は知ってるぽよ。お前が『俺は就活しない!』とか周りの友達に言い放っていることも、SNSで意識高そうな事ばかりつぶやいて緩やかにフォロワーが減っていることも、それでいて何も行動できていないことも」

泣きそうになる。
そうだ。こいつが言ってることは全部本当だ。
俺は言ってることはいっちょまえだが、何も行動できていない。
何1つ頑張ってこなかったし、何1つ続けられなかった。

「うう…やめてくれ。俺だって変わりたいんだよ!俺だって好きなことで生きていきたい!自分の好きなことで稼いで自由に暮らしたい!

「好きなことで生きていきたいぽよか?面白いぽよね〜。そんなに言うならやってみろぽよ!」

「おおおおおお!」


✳︎


興奮と涙でわけのわからないまま、僕は机に突っ伏して寝た。
そして早朝。珍しく早起き。
もしかして昨日のことは全て夢だったのではないかと疑ったが、あのわけのわからない生物は普通に僕の布団で寝ていた。

「ぽよよ…zzz ぽよよ…zzz」

 あいつは一体なんなんだ。いびきまで「ぽよ」だし。
てか、あーいうキャラって普通は朝起きたらいなくなってたりするだろ。そして、また突然現れたりするだろ。
普通に寝てるってなんなんだよ…

僕はとりあえず目の前に起きている不思議な現象から目を背け、シャワーを浴びて、大学に向かった。
あのハシモトくんとかいう生物を家に1人で置いておくのも気がかりだったが、まぁ悪さはしないだろう。

チャリを漕ぎながら大学へ。
好きなことで生きていく」今までなんとなく思い描いただけで、真剣に向き合ってこなかった。
いざ、考えてみると一体なにをすればいいんだろう…

そのまま答えもでぬまま大学へ到着。講義には出ずに図書館へ。
とにかく調べた。
「好きなことで生きていく」そのままグーグル先生に尋ねて見たが、出てくるのはYouTuberの動画ばかりだ。

他にもいろんな単語でググってみた
「楽しく 生きる」
「自由に生きる」
「起業 学生」

しかし、どれもピンとこない。自己啓発本の受け売りだったり、なんか怪しいメルマガへの誘導だったり。はぁ。どこに答えがあるんだよ。

やっぱり俺もYouTuberになろうかな?けど、いいのか?
本当にそれであってるのか?

答えもでぬまま気がつけばお昼時。
とりあえず飯でも食うか。


✳︎


お昼は大学の近くのそば屋へ。最近できたお店で、他の学生はあまり利用しない。だが、僕はここのとり天そばが気にいっている。
カップそばも嫌いじゃないが、やっぱりそば屋のそばが最高だ。
そばのことを考えていると、さっきまでのモヤモヤも少し晴れてきた。

あれ?
おいおいまじかよ…
「臨時休業」
無残にもお店の前の張り紙にマジックで休業の文字が。

つくづくついてない。しょうがないから近くのマックにするか。そう思った時、お店の中から声が聞こえた。

「ハイパーうまうま!ハイパーうまうまだぽよよ〜」

やつだ。ハシモトくんだ。
なぜ、ここのそば屋に?
僕がおそるおそるお店の扉を開けてみると…

いた。やっぱりいた。
そしてめっちゃ食べてる。

「ぽよよよよよよー!ここのとり天そばは激うまだぽよよよよ。店長!もう一杯!」

「はいよ!」

誰もいないお店に1人。いや一匹?ハシモトくんだけがカウンターにたたずみ、ものすごい勢いでそばを食べている。しかも僕の大好きなとり天そばだ。
そして、やけに店長と仲がいい。
ツッコミどころがありすぎて、どこからツッコめばいいかわからないが、とりあえず話しかけてみることに

「あ、あのー…」

「お!おはぽよ!お前もここのばーそーを食いにきたぽよか?」

「(シースーみたいに言うなよ…)そ、そうだけど何でハシモトくんがここにいるの?てか何でこんなに店長と仲いいの?」

ここは僕がオーナーをしているそば屋だぽよ

おいおい。まじか。このよくわかんない「ぽよぽよ」言ってる奴が、オーナー?もしかしてこいつ本当にすごい奴なのか?

「何で蕎麦屋のオーナーをやっているんですか?もしかして蕎麦屋ってめっちゃ儲かるの…?」

そばが好きだからぽよ

「え?それだけ?」

「そうぽよ。僕はそばがハイパー好きだから、自分のお店を作っちゃったぽよ(・ω・)ノ
自分のお店を作っちゃえばいつでも自分好みのそばを食べられるし、そば屋のオーナーってなんかウケるぽよなぁ?
そば好きだからそば屋作ってみたとかめっちゃおもろいぽよねぇ!

正直に言ってよくわからなかった。けど、確かに大のそば好きの僕からしたら、そば屋のオーナーってちょっと面白いと思ってしまった。

「そういえば『好きなことできていく』はどうしたぽよか?」

「え、ああ。まぁ色々調べて見たけど、よくわかんないって言うか、まぁやっぱりYouTuberとか起業そう言う感じかな。」

ワロタンゴ。ツッコミどころ満載なんですけどー」

「(おい…『ぽよ』はどこいった)なにがおかしいんだよ!そんなに言うなら教えてくれよ!どうやったら好きなことで生きていけるんだよ!」


そもそもお前は、何が好きぽよか?それもわからないのに、好きなことで生きていけるわけないぽよ


確かに。
僕は今でなんとなく「好きなことで生きていく"風"」の人に憧れていただけだけで、自分の好きなことについて考えていなかった。
自分の好きなこと。俺は一体何が好きなんだろう。


✳︎


「じゃ。僕はここでお昼寝してから夜はチャンネーとシース食ってくるぽよ。オフトゥンは僕が使うので勝手に使っちゃだめぽよ。じゃ、おやぷみ」

そう言い残してあいつは寝た。超ナチュラルにあのナマケモノとの共同生活が始まったのだ。解せぬ。まぁとり天そばを食べれたしいいかな。

ただ、今はそんなことはどうでもよかった。
今まで逃げてきた自分の思い、自分が本当にやりたいこと。
良くも悪くもあのナマケモノと出会ってから、自分の本音と向き合えている気がする。


気がするのだが…

僕はまたYouTubeを見ながらダラダラしている。人は急には変われないとはまさにこのこと。
そば屋を後にした僕は、ペンとノートを取り出し、紙に自分の好きなことを書きなぐってみた。しかし、今までなにかに熱中したことのなかった僕はなかなか筆が進まない。

気がつけばお布団へ(ダメって言われたけど)気づけばまた僕はYouTubeを見ている。そしていつもの通り、小腹が空いたので、コンビニへ。

変わらない。自分でも驚くほど変わらない。

そんな自分に情けなさを感じながらも僕はいつものようにカップそばにお湯を注ぐ。

ん?

そういえば、また、そばだ…。
よくよく考えたら、こんなにそばが好きって異常だよな?
だって昼にめちゃくちゃ美味しいそばを食べた後に小腹が空いたからってカップそば食べるんだぞ。こんな奴なかなかいないよな?

俺もしかしてそばが好きなのか?いや、客観的に見たらこれは絶対に好きの部類に入る。

じゃあ俺はそばで生きていけばいいのか?
俺もあのナマケモノみたいにそば屋をやればいいのか?
いや、まて。それはちょっとズレてる気がするぞ。けど、すこし。少し光が見えてきた気がした。

「そば 生きる方法」
「そば 稼げる」
「好きなものを食べて 稼ぐ」

とにかくググった。すると面白い人達を見つけた。

まずは「SUSURU TV」。365日ラーメンを食べ続けるYouTuberだ。大好きなラーメンをとにかく食べ続ける動画をあげて、その広告収入で生活している。

次はアイスマン福留。毎年1000種類以上のアイスを食べるアイス評論家。アイスの食レポブログの広告収入や出版、メディアの出演で生活している。

この人たちこそ、本当の意味で好きなことで生きている人だ…!
そうだ。俺もこの人たちのそばバージョンになればいいんだ。

俺はYouTubeが大好きだし、そばYouTuberになろう!


✳︎


昨日は、あの後も色々なことを調べた。YouTubeの始め方、動画編集の方法、動画の撮り方。
わからないことだらけだったが、とりあえずYouTubeのアカウントだけは開設した。

深夜にあのナマケモノは帰ってきた。
「ぽよよよよよ〜〜〜。水、水が欲しいぽよよよ!フィーバー(・ω・)ノ」

だるかった。
とにかくだるかったが、水を飲ませてソッコー寝かせた。
僕は来客用の寝袋で寝た。

慣れない寝袋で寝たせいで体が少し重たかったが、そんなの関係ない。

僕は今、そば屋の前にいる。
その名も「めもめも庵」
変わった名前だが、僕のお気に入りのそば屋の1つ。ここは天かすとキムチがなんとトッピングし放題。僕は肉そばに生卵をトッピングして、これでもかというくらい天かすとキムチをぶっかける。
すると、まるでラーメン二郎を彷彿させるような、迫力満点の肉そばが完成。しかもこれで600円。考えただけでよだれがでてくる。

しかし、今日はただ食べにきただけではない。動画を撮りに来たのだ。自撮り棒もちゃんと用意してスマホで撮影する予定だ。

「男子大学生with自撮り棒」正直これは痛い。周りの視線が気になってしかたがない。

と、とにかくオープニングを撮らないと。かなり緊張しながら、僕はそっと録画ボタンをタップした。

「ど、ど〜も〜そばそばTVで〜す。きょ、今日来たのは、あ!すいません…」

チッ。何やってんだよ、気をつけろよ

動画を撮る方に気を取られて、スーツのおじさんにぶつかってしまった。こういうのすごく気にしちゃうんだよなぁ…

その後も何回かオープニングにトライした。
しかし…

「え、画面に写ってる俺キモくね?」
「てか、全然セリフ出てこねーわー」
「俺テンション低っ!お通夜かよ…」

死にたくなった。まだそばを食べるところも撮っていないのに、自己嫌悪のスパイラル。
結局、オープニングは食べ終わった後に撮ることにして、まずはお店に入ることにした。

しかし…

(え、俺このまま入るの?自撮り棒もったまま入るの?けどYouTuberってそうだよな?え、違う?え、どうしよう…)

お店の前を自撮り棒をもったままうろちょろ。なかなかお店のドアを開くことができない。

このままじゃラチが開かない。意を決して自撮り棒で撮影したまま入店!

「いらっしゃいませー…?」

「あ、いや、すいません」

店員さんは明らかに不思議そうだ。特に何も言われなかったが、かなり怪しまれているのは表情からわかる。つらい。
てか、これ動画なんだから入店シーンも大切じゃん、なんか気の利いたこと言わなきゃダメだったじゃん…。

とりあえず、いつも通り肉そばを注文。
席に着いてからは自撮り棒は封印。それだけで少し落ち着いた。

その後も水を飲んだり無駄にトイレに行ったり、とにかく落ち着きのない変な客だった。

そしていよいよお目当の肉そばが登場。

ふう。撮らなければ。

「こ、これがめもめも庵の肉そばです〜!これに天かすをぶっかけて…」

痛い。隣の隣のおばさんの目が痛い。
あと、右奥の席にいる女子大生二人組。お前ら絶対、俺見てにやにやしてんだろ。てか、なんで女子大生のくせにそば屋いるんだよ。パフェでも食っとけよ!

つらい。つらい。つらい。


✳︎


僕はいまお布団の中にいる。絶望に打ちひしがれながらお布団の中でただ天井を見上げている。

結局、そば屋での撮影は中断。
周りの視線が気になりすぎて、超速で肉そばをたいらげて帰宅。
泣きたかった。なんならちょっと泣いた。

家に帰ったらハシモトくんがYouTubeを見ながら爆笑していたが、僕の表情を見て察したらしい。

「ま、まぁ使えぽよ」

そう言って、僕にお布団を譲ってくれた。意外と優しいやつだと思ったが、よく考えたら俺の布団だ。ふざけんな。

机に無残に投げ捨てたられた、自撮り棒を見てハシモトくんがそっと口を開く。

「初めての動画はどうだったぽよか?」

こいつ。意外と勘がいい。しかし、僕は何も答える気にはなれなかった。
そっとして欲しかった。が…

「ねーねー!どんな動画撮ったぽよか!?」
「編集はしないぽよか!?」
「やっぱあれぽよか?YouTuberってきれいなチャンネーとオフパコできるぽよかねー?ハシモトもやりたくなってきたぽよよよよよ」

う る さ か っ た。

俺への配慮よりも完全に好奇心が勝利していた。本当に欲望に忠実な生き物だ。
とうとう僕も鬱陶しくて口を開くことにした。

最悪だったよ!1人で喋るなんてテンション上がらないし!周りからは白い目で見られるし、そばを食べるどころじゃなかった!
どうしてだよ…俺はどうすれば好きなことで生きていけるんだよぉ…

好きなことで生きていく必要…あるぽよか?

え?
頭を何かで殴られた気分だ。
何を…何を言っているんだこいつは?

「だって…成功している人たちはみんな好きを仕事に繋げられている人だろ?だったら成功するためにはやっぱり、好きなことで生きていかなきゃ…」

難しいこと考えずにサクッと金を稼げばいいぽよ

「え?」

「なんで、そんなに好きなことで稼ぐことに固執するぽよか?効率よく稼げることを見つけてサクッと稼いで、その金で好きなことをすればいいぽよ

シンプルだ。すごくシンプルなことを言われているはずなのだが、なぜかひっかかる。しかし、言い返せない。

「大富豪アニキと呼ばれている日本人を知っているぽよか?彼はバリ島に会社を29社所有して東京ドーム170個分の土地を持っている超超超大富豪だぽよ。そんな彼はこう言ってるぽよ」

「仕事」=「お金儲け」に置き換えてみるんやて。ようするに、「好きな仕事」ではなくて、「ごっついお金が儲かる仕事」を選択すればええんや。
「お金を儲けてしまったほうが、早い」ってことやねん

「う、うそだろ。まぁけどそもそもお金を稼ぐことだって簡単じゃないじゃん」

「確かにそれは否定しないぽよ。けど好きなことで稼ぐ方が100倍難しいぽよ。その理由は2つあるぽよ。
1つ目は自分が好きなことが、周りから求められているとは限らないということぽよ。」

「いまいちピンとこないけど」

「例えば、僕はお昼寝が大好きぽよ。この世で一番好きぽよ。けど、だからといって僕がお昼寝でお金を稼ごうとするのはちょい難しいぽよ。だって僕がお昼寝したところで、誰も喜ばないぽよね。
まぁ考えに考えを重ねれば、できないこともないかもだけど、それでも得策ではないぽよ」

「た、たしかに。けど、僕はそばYouTuberになろうと思ったんだ!美味しいそば屋さんを紹介する動画をたくさん撮れば、全国のそば好きの人は喜ぶでしょ?」

「そこに2つ目の理由が隠されているぽよ。好きなことで生きていこうとすると好きなことが好きでなくなってしまう可能性があるんだぽよ」

「そ、そんなことないでしょ!好きなことは嫌いになったりしないよ!」

「じゃあ質問するぽよ。
A:普通に美味しいそばを食べにいく
B:動画を回して解説しながらそばを食べる

どっちの方がそばを美味しく食べれるぽよか?」

「う…それはAです。」

「そうぽよな!僕も一緒ぽよ。
例えば僕がこのかわいいルックスを活かしてお昼寝ライブ配信とか始めれば、ワンチャン人気でるかもしれないぽよ。
けど、考えてみろぽよ。
超大勢の人に見られながら落ち着いてお昼寝できるぽよか?
むり!むり!僕だって1人で心置きなく寝たいぽよ。」

ハシモトくんが言っていることは、今まで僕が考えていた常識から大きく外れている。しかしすごくリアルだ。
モチベーションとかマインドセットとか。そういう意識の高い話ではなくてむしろ逆。
サボりたいとか楽しみたいとか、そういう人間の欲求の部分がベースとなって語られている。
僕はもっとハシモトくんに質問したくなってきた。

「ハシモトくん!じゃあ…どうすればお金を稼げるようになるの?」


「それは…」


「それは…?」


「また次回ぽよ(・ω・)ノ」

(続く…かもしれないし続かないかもしれない)


著者:沖ケイタ
Twitter:@namakemono0309
ブログ:ハイパーメモメモ

絵:モモモリメイ 

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