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『女子大生マジシャン日記』夏編 (13,960字)

2020.08.10

あー、また寝落ちてたのかー。
電気もつけっぱなしだし、本のページも折れてる。
スマホには通知がたくさんきてる。
あ、オーナーから企画書の修正指示が来ているな。
あと、岡野先生からもなんかたくさん来てる。

うーーーん、二度寝しよう。

なにせ今は朝4時半。8時に起きて9時までに返信しよう。
朝4時に返信するなんて無粋だもんね。(いつも返してる)

とりあえず電気消して寝よう。パチッ。
あ、また間違えた。これでは真っ暗。仕方ない、これでは寝るところまで手探りで行くしかない。いつもこうだ。あ、無事布団だ。寝る。

さて8時。よく寝た。外が明るい。起きよう。

まずは水飲む。
先日「水分はたくさんとった方がいいんだよ!」と言われた。
その人は私と話している2時間の間に紙コップ6杯分の水を飲んだ。
あー、あのときもすごく面白かったなぁ...。

いや、今はそんなことどうでもいい。思い出はいつも突然出てくるから困る。

とりあえず企画書を修正して送信した。
「〇〇を△△に修正しました。ご査収ください。」

とりあえずおっけー。

次に、先生からのLINEを開く。
なんだこれ、えらく長文だなあ…。なんかのコピペか?
…え。え、これって私宛に書かれた文章じゃん。なにこれ。
えーーーーーーー。すごい!送り主は…知らない人だ。もしかしたら知ってるのかもしれないけど、とりあえず分からない。

なるほど、直接連絡すると意味わかんないから指導教員の岡野先生に連絡したのか。

日本図書館研究会?情報組織化研究グループ?なんとなくしかわからんけどうれしー。

うわーーーーーーーー。すっっっっっごい嬉しい。なんで私のこと知ったんだろうーー。

はーーーーーーーー嬉しい。てか身に余るお話だわ、まじで。

うーーーーれーーーーしーーーーいーーーーーーー。

あーーー、この前大声で叫んでたことが現実になるんだな。「図書館の人たち手品に興味持ってーーー」て叫んでたの。

いやーーーー、嬉しいなぁ。叫んでみるものだな。どきどきするけど頑張ろう。

研究会とが学会とか社会見学の一環として1回参加してみたかったけど一生入れないところだと思ってた。

1回、別の先生に「絶対に誰の邪魔もしないし、会場の端っこにいて見てるだけ!現地集合現地解散、一切迷惑かけないから連れてって下さい。お願いします、1度でいいからこの目で見てみたいんです!」って泣きついたことあるけど「それは無理だねー」って言われた。

自力で参加できるようにするには、今の私だと最低2年と250万くらいかかるかなーと踏んでいた。

家庭(金銭的な面)のことと、残りの学生生活と、私の人生を考えるとそんなの待ってられなくて結局諦めていたのだ。

が、なんと好機天来。ちょっと感動。
同時に、「私なんかが!?」という恐怖もあるんだけどとりあえずお受けした。
きっとこんなこと2度とないからね。

あぁ、楽しみだなぁ。


というわけで、ちょっと敵情視察。

うわー。戦闘力高い人達ばっかりじゃん。いや、まって。戦闘力とかいう話じゃなくて、私この人(田窪さん)の本で図書館学を学んだんだけど。今野さんの研究もめっちゃ面白そうだなー。近代なんだー。「思想の保存?」私がやりたいこととドンピシャじゃーん。やだやだすっごくお話ししたーい。えーーーー、こんな人たちの前で何話すの?

こんな足軽二等兵が戦場に出向いていいんですか。
しかも先頭に立って旗降っていいんですか。

もう興奮しちゃーう。


2020.08.11

武蔵野美術大学美術資料、デジタルアーカイブ学会誌、アーカイブズ学研究、国立歴史民族博物館研究報告、博物館研究、人文系博物館資料保存論、ミュージアムの情報資源と目録・カタログ、利用と保存の資料論、朝日新聞のデータベ-ス(聞蔵)などの資料をひたすら読んだ。それらの気になる所を全部スキャンした。これで家に帰っても読める。

とりあえず、ただの自己満足のためにインスタを非公開にして手品美術館つくろう。

2020.08.12

今日は朝から「菜」でアルバイト。お弁当屋さんの朝は面白い。働いている人がみんな元気で楽しい。大学からお弁当の電話。くうさんに連れられ、立松、美容院、JA、学校とお弁当配達のお手伝い。最後に大学に配達。そこで普通のお弁当より少し豪華な生姜焼き弁当をもらってさよならだ。

図書館前のベンチに座って弁当を食べる。おいしい。

そこからずっと図書館にいた。アーカイブズ関係の資料を漁る。
午後4時過ぎくらいに、疲れた+非文字資料の目録の取り方を学ぼうと思って、長谷川先生の研究室を訪ねた。
現在私の目録は、「資料名(タイトル)・資料名(タイトル)(英)・法量(cm) ・重さ・個数・材質・制作年・演じた年・製作者・使用者(演者)・現象名・入手経緯・入手者・備考(状態など)・表記ゆれ(候補)・その他(メモ)・テキスト音声資料」を記入している。最終的にはこれを人に公開する予定なのだが、いざ見せるとなると恥ずかしい。しかも専門家に見せて意見をもらおうとしているだなんて、恥ずかしくて死にそうだ。
見せた結果、「お!いいじゃん!あとはこれに整理番号つければいいよ!」で終わってしまった。
「あとは話をするときに岡村さんがこれを収集してる目的とか意義とかを話せた方がいいね。」と言われた。

「目的とか意義とかそんなかっこいいことはあまり言えないのですが、手品道具に学術的価値をつければ研究してくれる人が増えるんじゃないかなって思ってて。例えば、博物館で展示されてる資料を見たときに、先生はその資料の価値が分かるけど私には分からないんです。先生にはいろんな知識があって多角的な視点でその資料を見れて楽しいし面白いかもしれないのですが、私にはただのモノにしか見えないんです。そのモノを楽しめる教養がないから。見ていて面白いけど、価値は分からないんです。学芸員さんが書いたキャプションを読んで、つまり他人が提示した基準でしかそのモノを楽しむことが出来ないんです。でもこれが手品の資料だとどうでしょうか。手品の資料だと私の価値観、審美眼みたいなものがあるし、自分の価値基準があるからすごく楽しいんです。きっと先生にもある程度なら解説もできると思います。今私が持っている資料であれば、誰が作って、誰が使って、どういう目的で作られたのか、なぜこれを作ったのかまで説明できますし。で、それで面白いなとか、手品師のみんなってこういう意図で道具作ってたんだ!とかになれば、手品を「不思議」以外の側面から楽しめるんじゃないかなーって。手品をもっと多角的に見れるんじゃないかなーって思って…。あぁ、なんか熱くなってきました恥ずかしい。こんなのあんまり人に話さないから…。」とか何とか言った気がする。

すごく熱かった。自分でもなんでこんな話をしているのか不思議だった。あとそれをふむふむって聞いてくれてるのも恥ずかしいし、先生の時間を奪ってるのも申し訳なくなって、とたんに帰りたくなった。
岡野先生助けて、と思った。岡野先生に話すのは慣れてるからあんまり恥ずかしくないんだけどな。なんかすごく恥ずかしかった。
そんなことを話していると、堀内先生がやってきた。私の目録を見て長谷川先生と同じことを言った。この二人の思想は似ている。発言がしばしば重複する。面白い。しばらくすると、二人が私のわからない話で盛り上がっている。この人たちの知識には底がないなと思う。
すると、田浦先生が通り過ぎ、「またお前はこんなところにいるのか」と言われた。「はははー、お疲れ様ですー。」と手を振ったら、長谷川先生の研究室に入ってきた。先生が3人生徒1人になった。ここに来るといろんな人に会える。長谷川先生の人徳なんだろうなと思う。大人たちの話は面白い。私の価値観をどんどん広げてくれる。また先生同士の関係性も垣間見えて面白い。世の中面白いことだらけだなと思う。
そうしたら今度は、谷口先生が通った。教授陣3人に小娘が1人の光景を見て「どうしたんですか、今日はまた。」と驚いていた。善良な人だなと思った。谷口先生のことは間接的にしか知らない。やさしそうな先生だなと思う。知らないけど。

結局7時過ぎくらいまでみんなでわちゃわちゃさせてもらった。帰り道、また遊んでほしいなと思った。

2020.08.13

夜中に昨日スキャンしたやつを印刷して、重要箇所をまとめた。大体の構想が決まった。
聞蔵の1945~1989年 検索キーワード「マジック」で204件分のPDFデータを収集した。ちょっと疲れた。あと40件くらいある。ノイズが多くて「マジックフォン」とか、野球の勝敗を競う「中日マジック」とかなんかいろいろあった。「マジック」という単語の使われ方と一般的にどういうときに用いられるのかみたいなのが少し見えた気がした。
3時半くらいまで作業をしてから寝た。最後にどんな感じで研究発表を進めていくのか岡野先生にLINEをしておいた。疲れた。

9時すぎに起きた。昨日図書館で借りてきた本と印刷した資料の読み直し。

夕方に発表概要を完成させて、岡野先生に送った。「盛りだくさんでいい感じ」らしい。こっからどう削るかだな。

卒論をやるより500,000,000倍楽しいです。と言うと「ドラゴンボールみたいだね、戦闘力のインフレ」と返ってきた。先生はいつもやさしい。


8月14日

今日は午前中に、新しい事業の話があった。ここ6年間くらいこんな話ばっかりだ。高校生のころから、色んな社会人の方々と運よく関わらせていただいていたので、この伊勢の田舎では多少の知識はある方である(同年代を対象とした場合)。私はいわゆる「若い子」なのでこういう話を持ってきやすいのだろう。
今回の話は、いい話だったけど、正直忙しすぎて「3か月後にしか参加出来ない。」と伝えた。そして「その3か月後ではもう遅い。」と分かっていたので、今回の話は私の中で、なしだった。ちょっと残念。でも無理だ。今はそれをやっている時間がない。それに、その話では学生は事業主になれなかった。親の名前を借りるしかなかったので、より面倒だった。身体が3つあればきっとやっていただろう。

さて、この話はもう終わり。次は資料集めの話。

MN7の方たちにメールで研究会発表のことを話した。そして、研究会でMN7の活動のことを紹介してもよいかと聞いた。中村さんを含め、会友の方々が快くOKしてくれた。みんな本当にやさしい。メールの手土産に、6月に皇學館大学文学部コミュニケーション学科の桐村先生に出してもらった2018年以降の「FISM」を含むツイートについての資料を添付した。きっとこの資料は、私が持っているだけではなく会友のみんなと共有した方が多角的な視点で解釈されるだろうし、価値が出ると思う。
図書館や博物館じゃないけど、知識・情報の共有、連携はだいじだと思う。

森下洋平さんからMN7が作っている奇術資料に関する文献目録をいただいた。すごい目録だ。感動的。これを一般の人でも検索できるようにWordPressを使いオンライン化を進めているところだ。東洋文庫のデーターベースを参考にしている。
MN7に入れてもらえてよかったなと、改めて思った。
あとこういうことしてる人たちがいてくれたら純粋な手品師たちは安心して手品の研究(ネタ作り)ができるなと思った。パフォーマーと記録係は別の方が絶対にいい。お互いに負担が少なくて済む。ストレスはなるべく減らした方がよい。手品業界は安心して発展していけるなと思った。・・・書いてて自分でも「てめぇ何様だよ」と思う文章だな。でもまぁ、日記だから許してほしい。

あぁ。そうだ。
15日(金)までにマジック妖(AYAKASHI)の雑誌記事の校正をしなくてはならないんだった。地方紙に載せてもらうんだ~。10月号お楽しみに~。

今日はここまでー。

と思ったけど、そうだ!聞いて!今日、松山光伸『日本の手品史』(東京堂出版、2010)が届いた!これはすごいね!感動したわ。定価6000円(+税)だけど買ってよかったわ。てかもっと早くに買っておけばよかった。今年の下半期はこういうのに投資しようと思った。ちょっと手品に関する知識を増やそう。明日はまた別の本が届く。

ではこれにておやすみなさい。

あ、そういえば今日はこれとは別に「やさぐれ日記」書いたんだった。なんか時々やさぐれたいときってあるよねー。てか体が癒しを欲してるんだなーと思う。弱ってる。きっと生理のせいだ。ホルモンバランスの乱れ。コントロールできたらいいのになぁ。昔調べたんだけどな。上手に付き合っていくしかないね。あと30年くらい。あと30年…。え、あと30年も?やばくね?


8月15日

生理の朝は寝起きが悪い。とにかくだるい。腰も痛い。低血圧!肉を食わねば!

しかし、明日までに発表のタイトルを送らなくてはならない。何にしよう。キーワードとして「手品」と「目録」は入れたい。におわせたい。岡野先生に相談だ!と思いLINEしたらすごくいいのが返ってきた。天才的な発想だなと思った。私の「好きなもの」×「好きなもの」って感じのタイトルだ。「手品と目録のあいだ」これでいこう。サブタイトルは「いつか記憶からこぼれおちるとしても」。2つとも江國香織さんの本のタイトルからとっている。『冷静と情熱のあいだ』。手品と目録の裏に冷静と情熱が隠れているのなんかすごくいい。おしゃれだ。おしゃれすぎて恥ずかしい。「いつか記憶からこぼれおちるとしても」は本のタイトルそのまま。そのままでも十分意味が通る。

今野さんにタイトルと発表概要をメールした。
今野さんのメールはすごく優しい。今までメールしてきた人の中で上位を争う優しいメールを送ってくれる人だ。ちなみに今の上位3名はこの方々だ。まず1人目は長谷川先生。あんな褒め上手なメールを今まで見たことがない。きっといままでいろんな人をいろんな言葉で褒めてきたんだろうなと思わせる文章だ。2人目は柏書房の社長の富澤凡子さん。あんなユーモアあふれるメール見たことがない。冗談は冗談で返してくれたし、すごくおちゃめさを感じるメールだった。年上だけどかわいいと思った。あんな大人に私はなりたい。最後は、原書房の社長の成瀬雅人さん。めちゃくちゃ物腰柔らかく丁寧なメールだった。私の想いを尊重させてくれた、かつ、背中を押してくれるメールをくれた人だ。本当に優しかった。

みんな素敵な方々ばっかりだ。いい大人が周りに多くてよかった。恵まれてる。

思考が適当だからどんどん書きたいことと違う内容が出でくる。

てか、そろそろ手品師インタビュー再開したいなぁ。今日も「お話についての本」とか読んでたけど「語る」ってすごいだいじだな。あと聞き手がいることもだいじだ。みんな、私が聞くから語ってくれないかなー。本にしたいんだよなぁー。国立国会図書館に納本したい。手品史に残ることやりたい。よくよく考えたらこの日記の活動も手品史の史料になるかもしれないよね。みんなもどんどん記録していってほしいなー。手品師さんたちのブログ、私読んでるからね!!!

8月16日

今日は一時休戦。ここ数日の疲れを癒やす。マジック妖(AYAKSHI)の掃除をしに行く。お店が木造建築なので定期的に掃除しないとすぐ痛む。適度な肉体労働は気持ちがいい。それに掃除は精神衛生的にもいい。お店もきれいになるし。一石三鳥って感じがする。

午後からは本と資料を読む。あとちょっとずつレジュメとパワポづくり。
てかね!聞いて!!!河合勝/長野栄俊『日本奇術文化史』(東京堂出版、2017)が届いたの!でね!読んだらまじで感動した。私は日本の手品史について研究したくなったらこれを読めばいいんだって思った。安心して自分の好きな手品道具集めたらいいんだって思えた。歴史学者が書いてるからああいう書き方だったんだね。しかも長野さん、福井県立図書館の司書さんなの!?手品研究してる司書さんいらっしゃったの!?なんでみんなもっと早く出会わせてくれなかったの!?・・・いや、自分の勉強不足なんだけど衝撃すぎて。あーーーーーまじで自分を呪ったね。あと同時に今知れてよかったーって思った。
で、気になってこの方調べたら、私、会ってるね。2017年に同じ会場にいたし、同じ舞台に上がってたね。全然知らんかった。当時はまだ図書館学にも博物館学にも出会ってないし、手品史について何の知識・関心もなかったんだろうな。いやー、まじで図書館学やってよかった。岡野先生に感謝だわー。こんな面白い学問に出会えてほんとに嬉しい。大学来てよかったーーーって心の底から思ったね。この長野さんも図書館学の視点をもって手品を見てるってことだよね。これは話を聞いてみたい。お話してみたい。ぜひお話を聞かせていただきたい。え、もう会いたい。まじでコロナなかったら福井県立図書館に今から電話して会いに行きたい。あーーーー会いたい。これはやばいな。そうだ手紙を書こう。古典的だけど想いを綴ろう。メッセンジャーとかメールとかではダメなんだ。機械的だはダメなの。もっとこう人間味あふれてないと。それに急ぎじゃないんだし。確実にこの感動と会いたい想いを伝えたい。歴史学者なら手紙の重みを分かってくれるはず。あとこれも将来史料になる可能性もあるもんね。とにかく手紙だ、と思って書いた。23時半から書き始めた。結果6枚分になった。自分でも驚いた。書きたいことがスラスラ出てきた。書いてるとき楽しくて、「この手紙を書いている今もすこしどきどきしています。」なんて書いてしまった。急にこんなわけわからん小娘から手紙が届いたら驚くだろうなぁ。お返事くるといいなぁ。話してみたいなー。とりあえず明日の朝、投函だな。寝よう。


8月17日
朝から手紙とお金をおろすために郵便局に行った。別に手紙は近くのポストに出せばいいのだが、8月3日に、近くのスーパーに切手を買いに行ったら、梅の切手を出された。今8月やぞ、なんで梅の切手やねん、正月の使いまわしか。と思った。またそこに買いに行っても梅が出てくるだろうと思って今回は郵便局に行った。さすがに今の時期、梅の切手で手紙を出したくない。8月って感じの切手がいい。期待に胸を膨らませると注文すると梅が出てきた。えええええええ、ここも梅なの!?絶対ほかのあんじゃん!てかなんなら、ここ(受付の横)に夏の切手ってパンフレットあんじゃん!せめて郵便局は季節の切手を販売してくれよー、と思った。なんだか急に悲しくなった。梅が出てくるのは、仕方のないことなのか?これが普通なのか?ちょっと聞いてみようかなと思って「切手の種類ってほかにもございますか?」と聞いた。そしたら驚いた顔をされた。「もしあれば、夏らしい切手に変えていただきたいのですが…。」と言った。慌てて別のを出してきた。好みのものはなかったのだけれど、申し訳なくなって「お手数おかけしてすみません、これで…。」と、青と金の富士山のやつを選んだ。私はこれで満足なのだろうか。自分でもよくわからなかった。なんだかとにかく申し訳なかった。よく見たら名札に研修中と書いてあった。余計に惨めな気持ちになった。詫びとお礼を言って、お金を払って出た。
この日記を書いている今は、私は郵便局に期待していたんだな、と思う。だからあんな悲しい気持ちになったんだね。よくないね。やめよう。せっかく楽しい手紙を出したんだ。早く次のことしよう。
 その足でマジック妖(AYAKASHI)の取引先の「あおき酒店」に行った。地域のお酒屋さんだ。あおきさんとは、4年前からお知り合いだ。地域の酒フェスに出演したときに出会った。元気でやさしいお母さんみたいな人と、ビールとタオルがよく似合うお父さんが経営している。たまに奥から品のいいおばあさんが出て来てご挨拶したりする。
あおきさんのところのお酒は個人商店なの業務スーパーと比べると少し値段が高い。仕入れをするときに、見積書を出したときにオーナー以外のいろんな人から「こっち(業務スーパー、ドンキなど)の方が値段が安いよ!」と言われた。そんなの知ってる、と思った。いくつ酒屋回ったと思ってんだ、と。あなた方は伊勢で飲食店やってる人がどこのお店と取引してるのか知ってんのか、と思ったりもした。原価率計算してから文句言え、と思ったりもした。あと、妖(AYAKASHI)周辺のお店がどこの酒屋と取引してるのか聞いたりしたのかとも思った。なんで私があおきの酒屋さんを取引先に選んだと思ってんだ。あそこの奥さんすごいやり手だし、町のスピーカーだし、いろんな所と取引してるから情報屋でもあるんだぞ。それにお酒全部をあそこで取引してるわけじゃないからね。ソフトドリンク類/ビール・アルコールで取引先分けてるからね。2店舗ともの合意の上で取引させてもらってるからね。合計金額も230円くらいしか違わないのに何を言っているんだ。経費削減もだいじだけどさ、他にだいじなもんあるだろ。それに、情報代と宣伝代と思ったらどう考えても安いよ。地域密着型だしお店自体近いし、何かあったらすぐ来てくれるからね。言っておくけど、妖(AYAKASHI)の店の前、奥さんの散歩コースだからね!
 

あ、でもみんながいろんな意見くれるのすごくありがたいと思ってる。これはほんとに。意見くれるとみんながどう思ってるのかわかるしね。言い方とか比較の仕方とかその他全部ほんとにいい情報。まじで感謝してる。みんなほんとにありがとう。

さて、あおきさんにお金も払ったことだし、図書館に行って資料を読もう。研究会の発表も仕事だ。ちゃんとお金が出てる。やらねば。こんなに楽しいことはない。

そういえば最近学校で新しくお気に入りの場所ができた。前は図書館前のベンチだったんだけど足組んで座ってたり(これは癖)、電話してたり(館内で電話するわけにはいかんので…)、ベンチの上にしゃがんだり乗ったり寝てたりしてたら仲いい掃除員さんから「印象が悪く見えるからやめなさい」と注意を受けたのでずっとほかの場所を探してたんだー。図書館前のベンチには可能性を感じてたのになー。寝てる同志も多かったしー。あそこで仲良くなった友達も数人いる。くだらない政治の話とか、宗教な話、留学生との交流、先生たちとの話、院生との息抜きとか、結構楽しい出会いの場だったのになぁー。あそこは動線だったから結構気に入ってたのにー。(まぁ、今の時期は暑すぎてあんまり人いないけど。)

今回見つけたのは、まじで人が通らないところ!普段の授業ある日はそこそこの交通量だけど今は夏休みだからまじで人いないね!元喫煙所で、あの大きな木が生えてるところ!2号館と5号館のあいだのベンチ!2、3階からは大きな木のおかげで見えないし、壁に沿って4つ(かな?)ベンチが置いてあるから一番端で寝転がってても誰にも文句言われない。それに近くにトイレもごみ箱も自販機もあるの。風は通るし、屋根があって影になってるしあそこはほんとに最高だね。この前3時間いたけど、だれ1人来なかった。あそこのベンチに寝転がって上見るとすごくきれいなんだー。静かで本も読みやすい。この前はたまたま後輩が通って、一瞬通り過ぎたんだけどまた戻ってきて「先輩、図書館にいないと思ったら、こんなところにいたんですか。しかも寝転がって本読んでるし…。」とあきれられた。寝転がってみなよーと勧めたが断られた。ここから見る木漏れ日は最高なのに、見ないなんてもったいないなと思った。せっかく寝転がれる環境と身分なのに。通常授業が開始したらこんなところで寝転がれないのに。学生なら、品のない子と思われたり、少し注意されるだけで済むのに。もし、大人になったら。先生や職員の方々のような身分になってしまったらたぶんもうここで今みたいには絶対に寝転がれないのに。もし仮に寝転がれても今の我々のように悠々と3時間もというのはムリだと思う。もし寝転がっているところを見つかればヒンシュクを買うかもしれないし、どんな噂が立つかわからない。私たちの場合であれば、2~3年で大学を出ていくし、学生なんてたくさんいるからその他の一部として忘れられる。記憶なんてきっとそんなもんだ。
それと。いつまでもこのベンチがここにあると思ってはいけない。図書館前のベンチは雨ざらしで今結構悪い状態だ。(だから私はあそこのベンチに座らずに上でしゃがんでいた。)可能性は低いけど、もしかしたらここのベンチを持っていかれるかもしれない。もともとここは喫煙所でそのために置かれていたのだから。
あーぁ、あのとき君も一緒に寝ればよかったのに。同じ世界を共有したかったなぁ。

あの子に今度会ったら、夕陽がきれいに見えるところを教えてあげよう。

8月18日
SNSの質問箱をのぞくと15投稿ぐらい来ていた。誰かが自分に興味を持ってくれていると思うとありがたい。気が向いたらときどき返そう。
今日は図書館と学科研究室にいた。学科研にいるとあぼうちゃんがやって来た。久しぶりだった。教員採用試験の一次に通ったらしい。二次は小論文があるらしいので、小堀先生に相談に来たらしい。就活か、楽しそうだなと思った。私も就活しないとな。個人事業主だけど、やっぱり社会的な補償ほしいもんなー。やっぱ会社に勤めて固定給もらってみたいもん。会社ってどんなところなのか体験したい。経験としてほしい。知りたい。
学科研であぼうちゃんと色々話していたら、コーヒーを淹れに小堀先生がやって来た。ふたりは小論文の添削を始めた。4分くらいで終わった。とくに直すところがなかったようだ。小堀先生に「岡村さん、新聞見ましたよ。お店はどんな感じですか?」と聞かれた。「8月1日にオープンはしましたが、8月中はコロナウイルス感染拡大防止のため休業中です。」と伝えた。なにやら労いの言葉をいただいた気がしたが、あまり覚えていない。「またお店が再開したら行きます。」と言われたのは覚えている。
小堀先生の授業は1個もとったことがない。近代文学好きだけど、研究まではいかない。受講生に授業プリントやレポートを見せてもらったことはあるが、授業を受けようと思ったことはないな。図書館関係の授業か、何かの授業と被ってた気がする。先生の研究室にもあまり行ったことないなー。3回くらいかなー。「先生~、私いろんな人の本棚を見るのが趣味なんです~。少し拝見してもよろしいですか~?」と入って行ったことはある。あのときは「は、はぁ…。どうぞお好きにご覧になってください。そんなに面白いものではありませんが…。」と少し戸惑いながら言われた記憶がある。並べられた本は、背の高さがそろっていてとても美しかった。すべての本がネクタイを締めているのかと思うほどきれいに並んでいた。几帳面だなという印象を受けた。

図書館にいたら国史学科1年の後輩がやって来た。「先輩は毎日と図書館にいるね。」と言われた。「お互いさまでしょー。」と返した。そしたらなんか人生相談をされた。相談する人まちがってんぞと言いながら聞いた。建設的なアドバイスなんて1つもできないので、適当に心理学の本をおススメしておいた。

なにせあの子は、物事を悲観的に見すぎだ。あと見方が単一すぎ。固定概念強すぎ、自分を圧迫しすぎ、ルールにとらわれすぎ、だった。解釈が一つじゃないことを知らないとつらいと思う。偉そうなこと言えないけど。

さて、いろいろあったけど、学科研で資料を印刷して帰った。今日はデザイン関係の本を借りた。やっぱりデザインは感覚的にやっていてはダメだと思う。きちんと勉強しないと。勉強し始めてから見えてきたことなんだけど、デザインって勉強すれば、その人がデザインやったことあるかどうかがすぐわかるのね。びっくりしちゃった。勉強してよかったとまじで思うね。新しい着眼点を手に入れられた気がする。まだまだ全然みんなみたいに見えてはないんだけど、学ぶ以前に比べたら見える世界がグッと変わったと思う。もし時間のある方は1回デザインの本読んでみてほしいなぁー。

なんと20時30分ごろに長野さんからTwitterのDMが届いた。「お手紙拝受しました―――」と、とても丁寧なお返事を返してくださった。めちゃくちゃうれしかった。文章を読んでいくと、なんと私のことをご存じだったらしい。手品師インタビューの記事を読んでくださったそうだ。すごくうれしい。やってよかったと心から思った。
私が送った手紙の最後に、インタビューさせてくださいって書いたのね。そしたら「手品師ではない私でもインタビューを受ける資格があるならぜひ選んでください」と書かれていた。もうほんとに、ほんっとうにうれしかった。手紙書いてよかった。想いが伝わってよかった。こんなうれしいことはないね。ほんま幸せや。またいろいろがんばろっと。


8月19日
朝から今野さんからメールがあった。研究会の情報が公開されたらしい。そろそろこの日記を公開するときがきたな。あとは毎日のようにSNSで宣伝だな。あー楽しみだな。情報の組織化だなんてすごくかっこいい。タイトルもおしゃれにしたし。あとは中身だね。みんなに聞いてて面白いと思ってもらわないとね。手品業界に興味を持ってもらわないと。こちら側の人間が組織化するのにはやはり限界があるので、あちら側の人たちを巻き込まないと。すぐじゃなくていいから徐々に。境界線をなくしていく感じ。20年後が楽しみだ。
今野さんのFBの投稿にいくつかコメントが来ていた。岡本さんからコメントがあったのうれしいな。参考資料のところにARGのメルマガの記事載せさせてもらったから反応あったらうれしいなぁと思っていたところだった。改めてがんばろうと思った。

11時前にお腹が空いたので炒飯を作って食べた。そして12時前に図書館に着いた。ラーニングコモンズに行った。プレゼンスペースで谷戸先生が崩し字の授業をしていた。面白そうだった。いいなあ、崩し字。また勉強し直さないとなー。普段使わないからもう忘れてしまった。授業が終わったのか静かになった。谷戸先生がとことこ歩いてきたので挨拶をした。「あー、岡村さん、卒論ですかー?」相変わらず声がよく響く。「いえいえー。別のことしてます―。」「へぇー、いろいろやってんだねー。」「そんなことないですー。」「何してんの

ー?」「えーっと、かくかくしかじかでして発表をします。」「へぇー!すごいじゃん!それはいい経験だねー!」「ねー!ほんとにありがたいお話ですー。」「え、岡村さんさぁ、日記書いてる?」「え。なんでですか?(((え、この人もしかして私のブログ読んでんの!?え、どこ情報?堀内先生から?いやいやそんなわけないよな。)))」「いやー、今の話聞いてたらさ、今日岡村さんがここでこういうことしてるのも全部歴史になるわけじゃん?」「そうですねー。」「だから日記付けた方がいいよぉー!」「はははー、そうですねー。実は最近つけ始めたんですー。どのくらい長く続くかはわかりませんがー。」「お、じゃあいいねー。」
という会話をした。優しい先生だ。

そのあと3時間ぶっ通しで文章を書いて、そろそろ休憩がてらブラウジングするかーと思ったら、後ろからツンと背中を押された。びっくりした。おざだった。久しぶりに会った。18日ぶり。うれしくなって、テンションが上がった。卒論の資料を探しに来たらしい。
USBスキャナーとそれを印刷するやり方を教えた。すごく便利がっていた。
 そのあと少し話した。最近読んだ本の話題になったので、『アーカイブズ学会誌』やアーカイブ研究関係の本、『博物館研究』、資料保存論系の本、武蔵野美術大学が出している雑誌みたいなやつ、建築雑誌、情報組織論、おもちゃの歴史、たたずまいの研究、デザインの本、手品史の本、聞蔵ビジュアルの手品の記事が面白いと伝えた。おざは最近何をしているのかと聞いたら、バイトをしているらしい。でも週2日なのと言っていた。それ以外は卒論やりたくないなーと思いながら部屋でボーっとしているらしい。おざらしくていいなと思った。おざは私の良心だ。考えてみれば、もう7年の付き合いだな。きっとこれからも続いていくんだろうな。しばらくすると、おざは彼氏と帰って行った。

私は図書館で続きをやる。しばらくすると隣にだれか座った。こんなに広いのにわざわざ隣に座らなくてもと思った。ほかの席もほとんど空いてるのに。と思ったら、あまね君だった。出席番号が私のひとつあとの子。あまね君は伊賀の子で、家は印刷屋さんだ。3年生の春だったかいつだったか忘れたが、今はもうあまり使っていないけど家に活版印刷機があるよと言われたので、見せてもらいに行ったことがある。壁一面に並べられた活字は圧巻だった。名刺を作ってあげると言われ、自分で文選して、組ませてもらって、印刷までさせてもらった。とてもやさしいご家族で、近くのお店でハンバーグをご馳走もしてもらった。伊賀の市立図書館にも連れて行ってもらったなぁ。いい思い出。
 しばらくしゃべって、ふたりともこの後予定がなかったのでご飯に行くことにした。学校近くのインドカレー屋さんに行った。歩いて帰り、途中まで送ってもらった。別れたあと、のろのろ歩いていたら、せかせかと羽化する前のセミが私の前に歩いてきた。久しぶりに見つけたので拾って帰った。
母から「またなんか拾ってきたの?」と言われた。「今日のはすごいよ、羽化前のセミ。」と言った。「また珍しいもん拾ってきたな、よく見つけたな。」と父。「早くタオル持ってきて。」と言い、ハンガーに吊るしてセミをくっつけておいた。しばらくすると動かなくなって、背中が割れた。きれいなエメラルドグリーン。アクアブルーのような羽も出てきた。あぁ、美しい。宝石みたい。なんでこんなに美しいんだろう。せっかくなのでいろんな角度から光を当ててみた。ある角度から当てると体に金箔がほどこされているのかと思うほど黄金に輝いた。神秘的っ。きれい。
 ずっと観察していたかったけど、整骨院で作業があったので出かけなくてはならなかった。助手席に乗っているときに青白く羽を伸ばしたセミの写真が送られてきたけどとても美しかった。また観察したいな。そういえばオスだったな。元気よく鳴けよと思った。

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