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20,11,21。プロレスから格闘技へ⑤

桜庭に歴戦のダメージが蓄積し輝きを失い始める頃プライドはヘビー級選手の充実から大型選手同士のスぺクタル格闘技路線へと変貌してゆきます。

ヘビー級の日本人としては日本人最強と噂された藤田和之に柔道メダリスト小川直也。そして戦績こそ振るわなかったものの多くのファンの心に響く試合を繰り広げた高山善廣らの活躍が目立ちました。

とはいえ多少疑問が香る試合があったにせよプロレスでは無く競技である以上、民族上の肉体的な差はいかんともしがたく、ヘビー級という階級の格闘技で日本人が連勝を飾るのは不可能である事も露見する事になります。

後に60億最強の男と称されるエメリヤエンコー・ヒョードルの様に「デカくて動けて鬼の様な打撃を持ちその癖バックボーンはサンボ」のような怪物が台頭してくると日本人選手の対ヘビー級戦績の最高値が「善戦した」だったのも無理はありません。

小川同様柔道メダリストの吉田秀彦が圧倒的な強さを発揮できたのは彼の主戦場がミドル級だったからに他ならないと個人的に思っています。

プライドはヘビー級選手をより充実させる為に引き抜きという手段を取った所為でブレーンとして協力体制にあった正道会館石井館長と袂を分かつことになります。石井館長の離脱と同時期に猪木もまたプライドを離れた事が後に格闘技イベント多発という事態を招く事になってゆきます。

長くプロレスを見てきた方であればご存じだと思いますが「多団体時代による繁栄」は一時的な物に過ぎず、その隆盛は決して長くは続きません。

2003年大晦日には「PRIDE SPECIAL男祭り2003」「K-1Premium Dynamite!!」
「イノキボンバイエ2003〜馬鹿になれ夢をもて〜」の3団体が地上波ゴールデンタイムで中継するという事態になりましたが、あまりに多くの料理が並ぶテーブルは視聴者の飽きをまねく自体となってしまいます。

格闘技団体がプライドから枝分かれしてゆく中、高田との師弟関係に亀裂が入った桜庭はK1が母体となる団体「HERO`S」へと移籍します。既にダメージの蓄積と年齢的な衰えから移籍後の桜庭は全盛期の輝きを失っていましたが、「HERO`S」ではK1の立ち技競技から転身して来た一人の天才が光を放ち始めます。

2018年に若くしてこの世を去る天才児、山本“KID”徳郁です。


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