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肥薩線とくま川鉄道、鉄路再開への道#7

#7、部分復旧間近のくま鉄沿線を辿る

ブルートレインたらぎで宿泊した翌日、黒肥地保育園の先生に9時過ぎに迎えに来てもらった後は、多良木から人吉に向けて沿線を見て回ることにした。出発前、多良木駅付近の線路を見回してみたが、幸い路盤はガタガタにはなっておらず、線路の錆を落として表面を磨けばすぐにでも走らせられるコンディションであった。

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線路は湯前まで伸びているが、多良木より東は比較的状態も良好であったので、西に人吉に向けて線路近くの道を走っていく。途中、おかどめ幸福駅で休憩を兼ねて駅前の様子を見ていくことになった。

おかどめ幸福駅は観光列車「田園シンフォニー」が走っていたときでも長時間停車が設けられており、駅前の散策が可能であった。そのことから駅前はお店も営業を再開している。近隣には幸福神社もあり、住民の憩いの場としてその存在は大きい。

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駅前には指宿枕崎線の西大山駅と同じように黄色い郵便ポストが設置されている他、駅長姿のくまモンも鎮座していた。現役の鉄道路線としては唯一の「幸福」がつく駅であるので、黄色いポストや縁結びグッズなど、幸運グッズが揃っていて、縁起をかついで訪れる観光客も比較的多い。

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国内では珍しい黄色い郵便ポスト。

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くまモンは熊本の観光には欠かせないゆるキャラとして定着をしている。

その間、駅前を散策中に先生からカツサンドをご馳走になった。肉厚のあるボリュームたっぷりのカツサンドで途中、立ち寄っても食べて頂きたい一品であるので、途中下車の折には是非お買い求め頂きたい。

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おかどめ幸福駅のホームから。駅名板がリニューアルされていた。

おかどめ幸福駅での立ち寄りを終え、車は道中、肥後西村(ひごにしのむら)に向けて西進を再開する。肥後西村から東側は11月の営業再開に向けて線路の点検や信号関係の補修が行われていた。運行再開の日程はまだ具体的に発表はされていないが、車両の整備を含めて行われているとのことで、裏では着々と準備が進んでいるようである。

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試運転が間近になっている沿線の様子。

肥後西村には球磨中央高校が駅の近隣にあり、ここまででも再開をすれば沿線の高校生の通学アクセスは幾分かは改善がされる。現在の代行バスも通学時間や部活を考慮した時間設定になっているとはいえ、道路事情によっては遅延も発生するなど、効率は必ずしも良くはない。鉄道の定時運行はやはり大きな分がある。早い再開は来年の大学共通テストや入試に向けて、ひいては就職の面接試験などにも影響があるので、鉄路の復旧はやはり地元のみなさんにとってなくてはならない足だ。


しかし問題は肥後西村から先である。全線不通になってしまった大きな要因は球磨川第四橋梁の豪雨による流失である。肥後西村から川村までは僅か1.4km。川を渡る区間としては、阪急神戸線の中津~十三間とほぼ匹敵する距離(1.5km)である。車は川村に向けて、実際の球磨川第四橋梁の様子を遠景から見ることが出来た。その様子であるが、橋の土台が根元から流されていたのである。

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球磨川第四橋梁を遠景から眺める。橋が完全に流されただけでなく、コンクリートの土台も根元から損壊している部分があるなど、根本から作り変えないといけない状態になっていた。

実際、橋の架け替えは3年から4年を要すると見込まれているので、人吉まで線路が戻るのはまだまだ当分先になるとのこと。資金の話については次の回で取り上げるが、政府の激甚災害指定ならびに復旧費用の肩代わりについては必要な支援の一つと言えるだろう。

車は回り道をして川村駅に到着。一勝地駅と同様に駅の様子を撮影することに。この駅は豪雨の被害が沿線で一番大きい駅で、ホームの破損がとにかくひどかった。復旧に際しては作り変えが必要なレベルほどに傷んでいたのである。

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川村駅の様子。駅にあったたぬきの置物も損壊がひどく、ホームは廃線となった路線の廃墟以上に荒廃していた。

年内には部分的に復旧をするとはいえ、球磨地域の生活が元に戻るにはやはり人吉まで鉄路が戻らないと苦しい実態がある。「復旧間近」とサブタイトルには書かせてもらっているが、あくまでも一部が復旧をするのみで、本当の賑わいを取り戻していくためには人吉にエンジン音やSLの汽笛が戻ってきたときである。

車は人吉市内に再び入り、この後は山江村の様子も見ることになる。観光業の今の実態についてもこの度の最後に知る機会が訪れるのである。

(#8に続く)

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