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今の日向坂46に感じる「2回目の滑走期間」 〜定量・定性の両観点から〜

先日の餃子パーティ生配信で10thシングルのリリースが発表されましたね。節目となる10枚目はどんな仕上がりになるのか、とても楽しみです。

そんな日向坂ですが、東京ドームを通過し、たくさんの4期生も加入した今、過渡期にあるなと感じます。客のいなかった初期の握手会を「滑走路」と例えていますが、それになぞらえてこれまでの日向坂を飛行機でたとえると、個人的にはこんな印象です。

  • 2016:「ひらがなけやき」便に乗り込み、

  • 2017:滑走路へ移動し滑走開始、

  • 2018:全力で進み離陸決心速度まで加速、

  • 2019:テイクオフと同時に「日向坂」便に大変身。

  • 以後、乱気流などありながらも2022に中継地・東京ドームへ着陸。次の目標へ向けてトランジット中。

では、「日向坂46」というグループは現在、どういう機体で、どこに向かおうとして、どういう想いでメンバーは乗り込んでいるのか?みなさんもそれぞれいろんな視点でいろんな捉え方をしていると思います。

この記事も同じく、そんな現状を量的・質的の両面から、個人的な観点で整理するものです。整理した上で一体何が気になるのか、一体何がこれから楽しみなのか、そんな話をしています。

現状を整理する上でポジティブな話もシビアな話も両方ありますが、いたずらに不安を煽るつもりも、かといって楽観視を促すつもりもありません。ただの現状分析としてフラットに見ていただければなと思います。僕自身はただの日向坂のファンなので、「こういう見方をするファンもおるんか」くらいに見ていただけると幸いですし、僕自身これからの未来にとても期待しています。

※1万8千字あるのでお気をつけください

定量的視点

まず、現状の日向坂がうまくフライトできているのか(うまく商売できてんのか)どうかについて見ていきたいと思います。それにはやはり市場の反応である定量的な指標を観察するのがよいでしょう。良いフライトが出来ていれば各種指標は良い傾向を示すでしょうし、もちろん逆も然りです。
ここでは「日向坂ちゃんねる」と「CD売上枚数」、さらにいくつかの「楽曲デジタル指標」を見ていきます。

日向坂ちゃんねる

YouTubeにおいては、「再生回数と登録者数の比」を見ることで、現在のチャンネルの状態をある程度把握できるようです。こちらの記事によると、おおよそ以下のようなことが言えるそうです。

  • 再生回数/登録者数 = 10%程度:「特定の動画だけバズった」or「過去人気あって今落ち込んでる」

  • 再生回数/登録者数 = 20%程度:「運営に苦戦している」or「過去の人気が落ち込んでから復活してきた」

  • 再生回数/登録者数 = 50%程度:「有名人でない場合、投稿動画の内容に高需要」、「今後も伸びが予想される」

  • 再生回数/登録者数 = 75%程度:「ノリに乗っている」

では実際に「日向坂ちゃんねる」における、各動画の再生回数と登録者数の比を見てみましょう。今回は2023年6月15日時点の登録者数25万人を分母にし、開設記念人狼以降の動画4本、ライブ配信4本を対象にします。

以下がそのデータになります。

「日向坂ちゃんねる」における各動画の再生回数と登録者数の比

以上の通り、最低127%、最高440%、平均247%と、意味分からん高さを見せています。一応、先述した10%から75%のラインを参考までに引いていますが、はるか下です。
カジサックで有名な梶原雄太さんがこちらの動画で、「ほとんどのチャンネルにおいて、再生数における登録者の割合は2〜3割」と仰ってます。ということは、7〜8割は「登録外」の人が見てることになります。人狼や富田鈴花さんの動画は100万再生を超えましたが、同じ水準であれば「70〜80万回再生分は登録外の人にリーチした分」ということになります。ちなみに櫻坂チャンネルも同様にかなり高い水準で推移しています。

なんでこんな事が起こるんでしょうか?あまり自分はこの辺に明るくないですが、「ファンの母数が多く、かつ熱量も高くて動画公開と同時に一気に再生数が上がるため、おすすめに載りやすく回遊効率がいい」とかでしょうか?だとすれば、登録者数の順調な伸びも鑑みると、「ファンの熱量が動画の回遊性を高め、それによって登録外の視聴者に届き、内容を見て登録する」という、「楽曲以外の入り口で新規獲得ができている可能性」がありそうですね。シンプルに動画のクオリティも高いので(音声がめちゃくちゃクリアなど)、その点もプラスに働いている感じはします。スタッフさんありがとう。

CD売上枚数

次にCDを見ていきます。
実際に数値を見る前に、そもそもCD売上枚数が何を意味する指標なのかについて考えたいと思います。

以下は、日本レコード協会が公開した「音楽メディアユーザー実態調査 2022年度」の内容の一部を抜粋したものです。

音楽メディアユーザー実態調査 2022年度から引用

上記画像の左側、「CDなどを所有したい楽曲」に注目すると、「応援しているアーティストの楽曲」が最も高くなっています。日向坂ファンの場合はその購入理由として、「ミーグリなどに参加する権利を獲得するため」や「特典映像を見るため」、「購入することが応援の気持ちになる」などが挙がるでしょう。なんにせよ、「応援熱量が高いほどCDを買う傾向にある」というのは言えると思います。「応援熱量が高い」とは言うなれば「お金を払う用意があるほど好きである」ということですね。日向坂においてもCD売上枚数は、「日向坂ファンの熱量の総量」の指標として使えるものだと思います。

以上を踏まえて、これまでのシングルについて、「One choice」までの初週売上をグラフ化したものが以下の図です。

9thまでのシングル初週売上枚数推移
https://anosaka.com/hinatazaka46-single-sales よりデータ引用して筆者作成

ご覧の通り、コロナ禍に入ってからリリースされた「君しか勝たん」から落ち込み始め、「ってか」以降やや横ばい傾向が続いたのが「One choice」で回復傾向にあります。大きい要因は「4期生のミーグリ枠拡大」「リアルミーグリ」の実施かと思います。また、オリコンとBillboardとの乖離が大きいですが、どうも調べるかぎり、オリコンでは複数枚購入がそのまま売上枚数に反映されるわけでは無さそうな噂が多いので、リアルミーグリを狙った買い増しがしっかり反映されているBillboardとそうでないオリコン、ということなのかなと推測しています。

何にせよ数値は改善傾向であるので、「日向坂ファンの熱量は高く存在する」と言ってよいのではないかと思います。つまり、いい感じですね。先述した「日向坂ちゃんねる」の指標からも熱量の高さが予想されましたが、それを裏付けるような結果かと思います。

楽曲デジタル指標:その意味

ここからは楽曲に関するデジタル指標を見ていきます。
先述した「音楽メディアユーザー実態調査 2022年度」の内容の一部を再掲します。

音楽メディアユーザー実態調査 2022年度から引用

今度は逆に画像の右側、「所有せずデジタルで聴ければよい楽曲」に注目すると、「応援しているアーティストの楽曲」は半分以下に下がり、以下の項目が顕著に伸びています。

  • 「知って間もないアーティストの曲」

  • 「知らないアーティストの曲」

  • 「初めて聴く知らない曲」

  • 「SNSや友人などから勧められた楽曲」

これらを見るかぎり、もともと知らないか知って間もない曲に関する項目が増えているため、「所有のないデジタルは、新規参入の主な間口」ということが言えるかと思います。人から勧められるなりアルゴリズムで推薦されるなり、とにかく何らかの理由で新しい曲に出会う時というのは、デジタルが主な窓口になっていそうですね。もしそこで気に入らなければもう聴かないでしょうし、そこで少しでも興味が惹かれれば「知って間もないアーティスト」に格上げされ、何度か聴いているうちに「よく聴くアーティスト」になり、さらにどんどんとハマってゆき、熱量の高いファンになっていく、という道があるんだと思います。このようにデジタルでの体験は、「将来的に高い熱量を持つファンになり得る人たちを連れてくる、重要な入り口」であると言えるでしょう。

では現状の日向坂において、デジタル指標はどうなっているのか。まず、どのデジタル指標に着目するかを考えるため、同じく「音楽メディアユーザー実態調査 2022年度」から「音楽の聴取方法」を確認してみます。

音楽メディアユーザー実態調査 2022年度から引用

これを見ると、全世代においてYouTubeが突出していることが分かります。それに続くのが定額制音楽配信サービス全体、いわゆる「ストリーミングサービス」ですね。つづいて本来は若年層で高い割合を示す TikTok も確認しておきたいところですが良いデータが無いため、代わりに「ダウンロード型有料音楽配信サービス」、つまり「デジタル買い切り」も含めて、合計3つを押さえておこうかと思います。

以降は、YouTubeおよび、デジタル買い切りの iTunes Store、ストリーミングサービスであるApple Musicのデータを見ていきます。
「ジャン・アレチボルトの冒険」という個人ブログでは、坂道全体の様々なデータが継続的に記録されていて、上記3つの動向もその中に含まれています。めっちゃすごい。まさに坂道考古学。なので今回、そちらのデータをお借りしたいと思います。

楽曲デジタル指標1:YouTubeのMV

先程見たように、音楽の聴取方法としてYouTubeは突出していて無料でも利用可能なので、シンプルに「色んな人に聴かれているかどうか」、すなわち「音楽にお金を払う・払わないを問わず、広く新規を獲得できているかどうか」が見えてくる指標だと思います。

次のグラフは、「表題曲MVが公開されてからの経過日数ごとの累計再生回数推移(140日まで)」になります。

日向坂の空 ~ 日向坂46楽曲の動画・配信指標 [13Jun23] から引用

上記からは、以下のことが分かるかと思います。

  • 「キュン」から「ドレミ」では再生回数増加速度が上がっていたものの、次の「こん好き」で鈍化

  • 「ソンナコトナイヨ」「アザトカワイイ」ではスピードが持ち直し「ドレミ」を超える勢い

  • 「君しか勝たん」で再度鈍化

  • 以降も再生回数の増加速度は鈍化傾向。とくに「One choice」は極端に悪い

上記グラフは140日まで、つまり公開後4-5ヶ月までのデータなので、より長い期間で見てみたいと思います。次のグラフは週単位での累計再生回数推移になります。こちらは公開全期間が対象です。

日向坂の空 ~ 日向坂46楽曲の動画・配信指標 [13Jun23] から引用

長い期間で見ると、さらに以下のことが分かります。

  • 140日で見ると「ドレミ」よりも勢いのあった「ソンナコトナイヨ」「アザトカワイイ」は、40週を過ぎたあたりで逆転し抜かれている

  • 140日までは「ソンナコトナイヨ」に先行していた「アザトカワイイ」が、40週付近からはっきりと「ソンナコトナイヨ」に差を付けられるようになっている

  • 元々YouTube公開前に公式サイト上でMV公開があり、初速が低かった「キュン」が猛烈に追い上げ、70週あたりで「アザトカワイイ」を抜き、100週あたりで「ソンナコトナイヨ」に追いつきデッドヒート、150週あたりから引き離し始めている

  • 「こん好き」も健闘し、140日では負けていた「君しか勝たん」「ってか」を逆転している

これを見るに、よく待望される「ドレミ・アザカワ路線」ですが、YouTube再生回数増加速度を長い目で見ると、

キュン・ドレミ > ソンナコトナイヨ > アザトカワイイ

ということになり、同じ路線でも徐々に苦しくなっていってるのが分かります。そしてそれ以上に5th以降が厳しいです。

先述したように、音楽の聴取方法として突出しているのがYouTubeです。くわえて、デジタル指標は新規獲得の重要な間口です。そんなYouTube指標がリリースごとに下がってきているということは、すなわち「新規獲得で最も重要なチャネルでの獲得能力が慢性的に減退傾向である」ことを示唆するように思います。

楽曲デジタル指標2:デジタル買い切り

次に「デジタル買い切り」を見ていきます。
デジタル買い切りはCDのように物理的な媒体を所有するわけではなく、CDに付属する特典などを期待するわけでもなく、曲単位で購入できるので、「純粋な曲への需要」を表しやすいと言えるかと思います。

以下は同サイトにおける iTunes Store、つまりデジタルの買い切りにおける表題曲のトップソングランキングの順位推移のデータです。

日向坂の空 ~ 日向坂46楽曲の動画・配信指標 [16May23] から引用

グラフ化されているものが「ソンナコトナイヨ」以降のみですが、これを見るかぎり、「アザトカワイイ」からは同じような傾向を示し、「ソンナコトナイヨ」を超えられていなさそうであることが分かります。

このままでは感覚的な比較になってしまいますが、これを比較しやすくするため、同サイトでは独自に「ランキング順位をポイント化」し、その合計値で比較することをしています。「こちらの記事」に解説がありますが、やってることは「グラフの面積を求めて比較してる」ということかなと思います。つまり「グラフの積分」ですね。より長い期間を高い順位で維持し続ければ面積は大きくなるし、低い順位であり続けると面積が小さくなるので、その面積で比較しようということです。以下がイメージ図です。

ランキングの比較手法のイメージ

もちろん、一生ランキング圏内に入り続ければ面積が増え続けますし、何かの拍子に圏外から圏内に入る可能性もありますので、最終的な値は確定はしません。しかし、ほとんどの場合においてどんな名曲でもいつかは圏外になりますし、一度圏外になってしばらく経過したらもう戻ることもほぼ無いので、順位の推移から「ほぼ確定」といえる状態はある、という感じですね。

以下がその指標での比較のグラフになります。

日向坂の空 ~ 日向坂46楽曲の動画・配信指標 [13Jun23] から引用

こちらには「キュン」からのデータも入っています。結構衝撃的ですが、「キュンをピークにそれを超えられていない」という現状があるようです。特に「アザトカワイイ」は、YouTube再生回数増加速度では圧倒的に勝っている「こん好き」よりも低く、同じく圧倒的に勝っている5th以降と同じ水準です。これについては、「コロナ禍に入って、買い切りからサブスクにユーザが流れたからでは?」という指摘もあるかもしれません。しかし、ユーザが流れたとしても、これはあくまで iTunes Store内でのランキングであり、しかも買われた絶対数そのものではなく、買われた絶対数の相対位置を示しているだけなので、iTunes Storeのユーザ母数が変化しても相対的な順位に大きな変動が起こる可能性は低いと思います。もちろん、日向坂ファンのみが他のユーザに比べて極端に移動していれば別ですが、その可能性も低そうに思います。
さて、そんな「アザトカワイイ」から続いていた横ばい傾向ですが、「One choice」でもう一段減速が進んでしまっている印象です。

これらを見るかぎり、「楽曲そのものの訴求力が実はずっと低減傾向である」ことが疑われます。

余談:One choice のMV再生回数について

ちなみに先述したYouTube指標において、「One choice」の推移が極端に悪く、前作「月星」と比べると半分以下の再生回数となっていることを見ました。これは楽曲への評価が同様に半分以下に下落したことを意味するのでしょうか?
デジタル買い切り指標を見るかぎり、たしかに「月星」よりも下落してますが、半減まではしていません。となると、他の要因がありそうです。これまでのMVと明らかに違う点でいうと、「冒頭と末尾に長いドラマパートがあること」です。そこから推測すると、

  • ドラマによって、ファンすらもMVを回すのに躊躇

  • ファン以外へ関連動画等でリーチしても、ドラマ部分によって離脱増。最悪の場合、MVと認識すらされてない可能性も?

  • 再生回数が伸びない事で関連動画等にも出づらくなり、ファン以外へ余計にリーチせず

とかでしょうか。なんにせよ、YouTubeは重要な入り口なので、この結果はかなりもったいないなと思います。もしかするとYouTubeでの新規流入が減ったため、それがダイレクトにデジタル買い切りの低下に繋がっている可能性もあるのかもしれません。

楽曲デジタル指標3:ストリーミング指標

次はストリーミングです。
ストリーミングは定額でどんな曲でも聴き放題なので、デジタル買い切りのように曲へのピンポイントな需要というよりは、「お金を払って広く音楽に触れたい層に対し、どれだけ広くリーチし定着しているか」の指標になるかと思います。

同様に同サイトから、Apple Music トップソング(200位まで)の推移データを引用します。

日向坂の空 ~ 日向坂46楽曲の動画・配信指標 [22Apr23] から引用

こちらを見ると、デジタル買い切りに比べて「アザトカワイイ」の下落は比較的マシですが、「君しか勝たん」から顕著に下落傾向にあることが伺えます。さらに「月星」以降は配信開始直後から常に圏外という厳しい状態です。

以下はデジタル買い切り同様、Apple Musicでのランキング推移グラフを積分し比較可能にした指標になります。まずは先ほどとは違う、デイリートップ100についてです。

日向坂の空 ~ 日向坂46楽曲の動画・配信指標 [09Jun23] から引用

こちらは「ドレミ」からのデータが入っています。まず目立つのが、「ドレミ」以降の落ち込みが大きいです。次に「アザトカワイイ」ですが、デジタル買い切りと比べると「ソンナコトナイヨ」からの下落はマシで、「今好き」よりも高い値です。その一方、今度は「君しか勝たん」からの下落が大きくなっています。特に「僕なんか」以降は一度もデイリートップ100に入ることなく、0ポイントが続いています。

続いて以下は、冒頭に推移の折れ線グラフを示したApple Musicトップソング(200位まで)のデータになります。

日向坂の空 ~ 日向坂46楽曲の動画・配信指標 [09Jun23] から引用

こちらでは、順位の幅が広がったこともあり「僕なんか」も入ってきますが、こちらでも「月星」以降は常に圏外で0ポイントとなっています。つまり下落傾向が続いていることになります。もちろん、「月星」と比べて「One choice」が改善傾向である可能性はありますが、YouTube指標およびデジタル買い切り指標のどちらにおいても前作比マイナスなので、あまり期待はできないんじゃないかなと予想しています。

これらから見るに、「お金を払って広く音楽に触れたい層で見ても新規獲得は減少傾向が続いていて、少なくともドレミ以降に大きく下落したあと、しかたんから再度下げが大きくなった」ことが伺えます。

定量指標が意味することまとめ

以上で、「日向坂ちゃんねる」とCDおよび各種楽曲デジタル指標を見てきました。ざっとそれらが示唆するところをまとめてしまうと、

  • 日向坂ちゃんねるとCD売上枚数:既存ファンの熱量は高く存在し、楽曲以外を入り口とした新規獲得の可能性が見える

  • 楽曲デジタル指標:楽曲の訴求力の慢性的な減退により、楽曲による新規ファンの獲得力が下がっている

という感じでしょうか。

特に「One choice」でCD販売枚数が回復したこともあって見えにくくなっていますが、デジタル指標を見ると水面下では結構苦しい戦いを「実はずっと」強いられていることが分かります。特にコロナ禍以降、世界的にもストリーミング等が伸びている中、デジタルはとても重要な領域なので、ちょっとこれは早くなんとかしたいですね。

※(2023/07/01追記)デジタル指標についていくつかツッコミどころがあるかと思いますが、いくつか補足を以下の記事で書いてますのでご興味があればあわせて御覧ください。

議論:楽曲指標はこのままの構造ではダメなのか?

ここで一つ議論になりそうなのは、「曲についてはCD売れてるならいいんじゃね?」ということです。
個人的にはハッキリと「NO」で、なぜなら以下の理由からです。

  1. CDが売れてても業界内でのプレゼンス(存在感)が高いとは限らない

  2. いずれCD売上にも影響が出る

1つ目、「CDが売れてても業界内でのプレゼンスが高いとは限らない」件ですが、たとえば、AKB48は2020年に紅白に落選しました。ところが、2020年3月18日にリリースした「失恋、ありがとう」は118.1万枚を売り上げています。同時期である2020年2月19日に発売した日向坂の「ソンナコトナイヨ」は64.4万枚。2倍近い差があります。なんなら2020年のオリコン年間シングルランキングで「失恋、ありがとう」は第2位です。さらにAKBは2011年2月16日リリースの「桜の木になろう」から「失恋、ありがとう」まで10年間、常に100万枚を超えています。一方、日向坂は未だに100万枚に到達したことはありません。それでも日向坂は紅白に出て、AKBは落選しました。これだけでも、CD枚数だけでは色んなことは測れないことが分かるかと思います。

2つ目の「いずれCD売上にも影響が出る」件ですが、「そもそも今はCD売れてるかもしれんけど、新規獲得が出来ないと今後CD売上も伸びなくなるほどにファンが減っちゃうよ」という懸念があります。
どんな商品やサービスでも、新規獲得(流入)の裏には常に一定の「ファンの離脱」があります。これを常に

流入>離脱

となるように頑張ることで、商品・サービスは成長していけます。これがだんだんと

流入=離脱

になると成長が止まって「相対的衰退(他が成長するので置いていかれる)」が始まり、果ては

流入<離脱

となると、本格的な衰退期になってしまいます。

これらのことはよく、「穴あきバケツ」として例えられます。たとえばこちらの記事では、以下のように表現されています。

「サービスとは穴の空いたバケツであり、マーケティングという蛇口から新規ユーザーを流し込んでいる」

「穴あきバケツの成長モデル」の話より引用
穴あきバケツのイメージ。「穴あきバケツの成長モデル」の話より引用

商品やサービスの穴を完全に防ぎ切ることは不可能ですが、できる限り穴を小さくして離脱を最小限にし、それ以上のスピードで流入させることで成長していきます。

しかし現状の日向坂においては、楽曲デジタル指標から示唆される「楽曲の訴求力の慢性的な減退」ゆえ、バケツの上の方にも穴が空いていて、初めて曲に触れて入ってきてもすぐ穴から出てしまい定着率が悪い状態が懸念されます。このままでは水が溜まっていかず、いずれ枯れる恐れがあります。もちろん「日向坂ちゃんねる」からの流入もありますが、グループの本分は原則として楽曲とそのパフォーマンスであり、流入量の絶対値はそちらが多いはずなので、本流についての構造を改善する必要性は高いと思います。

これらのことからやっぱり、CDが売れてればよいというわけではないと思うんです。

では、これらの定量指標から見える現状に対し、グループ側にどういう動きが見えるのか?それを次からの「定性的視点」で見ていきたいと思います。

定性的視点

A&Rの変遷から見る楽曲への取り組み

先述のデジタル指標からは、「楽曲どないすんねん」というのが一番気になるところだと思います。それを考えるにあたって、「A&R」というポジションについてまず整理していきたいと思います。

A&Rとは「Artists and Repertoire(アーティスト・アンド・レパートリー)」の略で、以下のようなことをする人のようです。

アーティストと打ち合せをしたり、どのようなコンセプトで楽曲を制作していくか、あるいはアーティストのコンセプトそのものをどうするか、という重要な売り出し戦略を決定する役職です。

楽曲1曲1曲やアルバムの制作にも関わっていますが、見据えているのはもっと長期的な展望です。すなわち、担当するアーティストをどうやって市場で残らせていくのか、レーベルそのものの色をどうやって出すのか、といった俯瞰的な視点で業務を行っているのです。

音楽業界の憧れ!A&Rの仕事が必要とされる理由とキャリアステップを解説

池田 「コンセプターであり、ブランドマネージャーだと自覚しています。アーティストの一番の魅力は何なのかにひたすら向き合い、その魅力をどう伝えればヒットに繋がるのかを想像・予測し、計画を実行していくんです。アーティストが世の中に認知されていくための道筋をつくることがA&Rの仕事だと思っています」

アーティストと伴走するA&Rの覚悟とプライド

音楽制作のサポート(どんなスタジオで録音をするか、どんなアレンジャーに依頼するかなどを考える)から、イメージ戦略やプロモーション(どんなテレビ、ラジオ、ライブに出演するか、話題になるためにどんなマーケティングが必要か考える)など、担う領域がとても広いようです。人によっては、音楽制作をフォローするのが得意な方や、宣伝が得意な人もいる。どこまでをA&Rの役割とするかは、さまざまなようです。個人的には、A&Rは、担当するアーティストをサポートするアーティストの一部のような存在という認識。僕の意見を聞きながら、困った時に助けてくれて、意見を出して正しい方向に導いてくれる方というイメージです。

音楽業界の“A&R”って何してる? 岡崎体育が「条件」を語る

以上を見るに、「アーティストの近くにいながら、表現活動全体に大きく影響を与える人」って感じですね。秋元康さんとのバランスがどうなっているか詳細は分かりませんが、しかしA&Rというポジションがある以上、その人が楽曲の雰囲気や方向性などに大きく関わっているとは思います。

では、日向坂、ひいてはひらがなけやき時代からこのA&Rのポジションはどう推移していったのか、それをまず整理してみます。このポジションはCDの歌詞ブックレットの最後のスタッフクレジットに載っていて、その順番は秋元康さんの次など、かなり序盤になります。影響の大きさを伺わせますね。

以下がA&Rの変遷です。濃い緑は欅坂46名義、黄緑がひらがな名義、空色が日向坂名義でのA&Rを表します。

ひらがなけやき時代からのA&Rの変遷

「世界には愛しかない」から加わったひらがなけやきですが、その頃から「ガラスを割れ」までは欅坂46とともに(せかあいを除き)今野さんと森槙一郎さんの2人、アルバム「走り出す瞬間」からは、これで最後になる今野さんに加えて森槙一郎さんと疋田靖和さんの体制になり、「黒い羊」で初めて、クレジット上で明確に欅坂46のA&RとひらがなけやきのA&Rが分かれました。欅坂46は森槙一郎さん、ひらがなは疋田靖和さんです。そしてデビューシングル「キュン」では再度疋田靖和さん・森槙一郎さん体制になり、「ドレミソラシド」からは中藏亮斗さん、「ってか」からは森川亮さんとなります。

「走り出す瞬間」から加わったことと、「黒い羊」でクレジットが分かれたことを見るに、ひらがなを主に見ていたのは疋田靖和さんかもしれません。そして、そんなひらがな時代から一緒にやってきていた疋田靖和さんと森槙一郎さんが、デビューシングル「キュン」を最後に交代になっています。「なんでデビュー直後に交代?」というところですが、おそらく「元々ときめき草が表題曲予定だったから」じゃないかなと思います。

「日向坂46ストーリー」でも明かされているように、元々は「キュン」ではない別の曲でデビューする予定でMVまで作っていたものの、急遽秋元康さんの意向で「キュン」に変更となりました。そして、その元々の曲というのが、加藤史帆さんのブログでも明らかにされているように「ときめき草」です。

この曲はどちらかというとクールな印象のある曲で、ひらがなけやき時代にリリースされてきた楽曲と似たような方向性にあると思います。一方で「キュン」は一気にガラッと雰囲気が変わって、非常にポップでキャッチーなので、方向性が大きく変わりました。なので、ひらがな時代からやってきた二人ではなく、「キュン」のような方向性に強い人へセカンドから代わったんじゃないかなぁというのが僕の推測です。「キュン」の差し込みが急遽だったので、「キュン」はこれまでの二人のままだったんだろうと思います。

ともかく、「ドレミ」からは中藏亮斗さんに代わりましたが、「君しか勝たん」を最後にその中藏亮斗さんも森川亮さんへと交代しています。「走り出す瞬間」からの追加や「ドレミ」からの交代もそうですが、人が代わるってことは「何かを変えたい」って意図があると思います。実際、欅坂46も櫻坂46になったタイミングでA&Rは齋藤祐太さんに交代しています。では、「君しか勝たん」を最後に交代したのはどういう意図だったのか。

ここからは先述した定量指標からの推察です。デビュー以降ポップでキャッチーないわゆる「ドレミ・ソンコト路線」でやってきたものの、CD売上は一定の成果を上げつつも実はデジタル指標は芳しく無く、同様の路線であった「アザトカワイイ」でもデジタル指標において前表題「ソンナコトナイヨ」を超えるような結果が出せず減少傾向は覆せなかった。今後も同じ路線のままでは傾向を変えられないと判断して少し雰囲気を変えた「君しか勝たん」でチャレンジするも、指標はより悪化。なにか抜本的に方向性を考え直す必要があると判断し、6thからはA&Rを交代していろんなチャレンジをするようになった、っていうことかなぁと思っています。
実際、6thの「ってか」からは、明らかにそれまでの雰囲気とは違う楽曲が連続していますよね。森川亮さんにはその辺の、「新しい日向坂の発見」が期待されてるのかなぁと推察しています。

このように、外からも観測できる事象やデジタル指標と呼応するように、A&Rも変遷をしてきています。つまり運営側も現状を認識し、手を打ってきているということかと思います。そうなると、まさに今は先述したように「新しい日向坂の発見」のためのフェーズであるので、「めちゃくちゃ産みの苦しみがある期間」だと想像します。これ多分めっちゃしんどいんじゃないでしょうか。僕なら多分毎日寝れないくらい悩むと思います。でも同時にチャレンジングでやりがいのあるフェーズだとも思います。

よくある言説として、「ドレミとかアザカワ路線に戻せばいいんだよ」というものがありますが、CD売上はともかく先の楽曲デジタル指標を見るかぎり、「実はその路線は1st-2ndがピークであり、最後のアザカワ自体も指標的には前表題ソンコトから下落し減退傾向を覆せていないため、必ずしもその路線に戻せば復活するとは言えない」ことが分かります。そうです、「戻せばいいという、そんな簡単なことではなさそう」なんです。だからこその現在の「新しい日向坂の発見」フェーズが必要であり、重要だと思うわけです。

もちろん、だからといって世の中は永遠には待ってくれませんし、競合も次から次に出てきます。同じ秋元康プロデュースのグループですら、「乃木坂公式ライバル」と「IDOL 3.0 PROJECT」が新しく誕生します。それに業界全体で見ればライバルはアイドルだけでなく、全アーティスト、全娯楽にまで広がります。幸いにも、ファンの熱量自体は今のところ高いです。その熱の高さがあるうちに、一刻も早くこの状況は乗り切りたいところです。

と、そんな事を書いてる間に10thシングルのリリースが発表されました。7月26日です。2019年並の早いペースで、年末にかけてまた何か動きがあることも予感させます。
これについて個人的に思うのは、「6thからのチャレンジもすでに4シングル終えていて未だ光が見えていないので、チャレンジを素早く回すためにもライブを削ってリリースを増やすのは悪くなさそう」ということと、「そのためにはアルバムよりシングルの方が素早く動けそうだし良さそう」ということです。なので年内にまたシングルとして11thが出るんじゃないかな?と個人的には予想します。

なんにせよ、次は10枚目という節目のシングルになりますし、この時点で「あ、これが次の日向坂か」と思えるようなものが確立されていると嬉しいなぁとは思います。10thじゃないにしても、とにかく早い段階で確立してほしいなと願うばかりですし、それが達成されたときには、驚くような素敵な表現がそこにはあると思います。

気になっていること

ここまで、定量的な視点と定性的な視点から現状を整理してきました。ここからは現状整理とは別に、日向坂の今後に関わる要素について、個人的に「どうなるんだろう?」と気になっていることについて述べていきたいと思います。

グループのアイデンティティ

今は「新しい日向坂の発見」フェーズだろうと先述しました。そうなると、自ずとグループのアイデンティティに向き合う必要も出てくるかと思います。「日向坂ってどんなグループなんだっけ?」が、楽曲の雰囲気に大きな影響を与えると思うからです。

「One choice」でセンターに立つことになった丹生ちゃんは、横浜スタジアムで以下のように語りました。

「一期生のみなさんが作りあげてくださったひらがなけやきに加入して、そして日向坂46としてデビューして4年がたちました。新しい仲間がたくさん増え、その分もお別れもあり、日々変化を感じてます。それでも私は、私たちは絶対に初心を忘れずに、そして感謝の気持ちを忘れずに世界中のみなさんにハッピーオーラを届けたいです。」

日向坂46、初の横浜スタジアム2daysで7万4000人動員。新曲「One choice」を初披露

今野さんによって言語化され、ひらがな初期に模索していたアイデンティティへの回答として一筋の光となった「ハッピーオーラ」という言葉。しかしいつしかメンバーの中でも、「自分たちからハッピーオーラと言っていいものか」とか、「ハッピーオーラは他のグループにもあるのでは」とか、いろんな迷いを生む言葉にもなり、ことさらに語られることも減ってきていました。

しかし今回丹生ちゃんは「ハッピーオーラ」と明言しました。これが単なる丹生ちゃんの気持ちであるだけでなく、グループが抱えている課題に対し「結局、日向坂がいうハッピーオーラとはなんなのか?」という向き合い方を仮にするのであれば、ちゃんと言語化しないといけません。「ただのハッピー」でも「ただの楽しげな雰囲気」でもない「ハッピーオーラ」を言葉にし、表現に落とし込むというプロセスが必要ですね。

その場合に個人的に思うのは、今野さんは一期生の様子を見てZeppツアー期間頃に「ハッピーオーラ」と表現したはずなので、「ハッピーオーラ」の真髄に迫るなら、それは自ずと「一期生とは何か」に迫ることになるような気がしています。
金村美玖さんは一期生についてこんなことを述べていました。

「私は一期さんの雰囲気を継承しなきゃいけないと思ってます。日向坂46は一期さんがいたから成り立っているグループで、いまでも圧倒的な存在だから。突然一期さんがいなくなるようなことがあったら別のグループになってしまう」

BRODY 2023年6月号

たしかに独特な雰囲気を一期生が持つのは確かです。現状はそれを土台にグループの雰囲気が作られているとも思います。もし「ハッピーオーラ」に迫るなら、やはりその正体を言語化し、表現に落とし込むことは必要かと思います。

ただそれは、あくまでグループのアイデンティティとして元来の「ハッピーオーラ」にこだわる場合です。そうではなく、現在の1期生から4期生までのメンバーを俯瞰し、そこから新たなアイデンティティを抽出・再定義する方針もあります。そもそも「ハッピーオーラ」という言葉も、「今度からハッピーオーラでいきます!」という取って付けた看板ではなく、あくまで一期生から醸し出される雰囲気を今野さんが言語化したものであって、元々帰納的な概念であり、一期生の雰囲気が色濃く反映された呼称だと思います。なので「ハッピーオーラ」やそれに類する言葉に縛られない、グループの雰囲気を表す新しい言葉を模索するのも一つの手です。同じグループといえど人は変化しますし、ずっと同じアイデンティティである必要は必ずしも無いと個人的には思います。実際、6thからの動きはその方向性のように思います。やってみた結果、抽出されたアイデンティティが「これはハッピーオーラと名付けていい雰囲気では?」というものであれば名前を踏襲してもいいですし、違う言葉の方が適切な雰囲気なのであれば思い切って「ハッピーオーラ」に別れを告げることもありだと思います。どちらにせよ、「ちゃんとそのグループが真に表されている事が大事で、アイデンティティを先行させてその通りに振る舞う必要は無いのでは」というのが個人的な考えです。

今後どうしていくのかはもちろん分かりませんし、あえて言語化しないことになるのかもしれませんし、何が正解とも言えませんが、この辺どうなるのかな〜と気になっているお話でした。

グループ目標の統一感

もう一つ気になるのが、グループとしての目標です。
2022年まではシンプルで、「東京ドーム公演」でしたね。メンバーもスタッフもファンも全員が共通して持っていた目標だったと思います。ドームの最初の映像だけで溺れるほど泣きました。
ではその東京ドームを終えた今、次の目標は何だ?というと、まだハッキリと定まっていないように感じます。

一応、「BRODY 2023年6月号」などでくみてんから、2022年末に「五大ドームツアー」への目標を定めたような言及があったりしますが、傍から見るかぎりは東京ドームのようにその目標で一枚岩になってる感じがしません。発信がそもそも少ないですし、言ってる人も限られているように感じますし、何より人によって言ってることがバラついてるように感じます。たとえば先日の生配信では加藤史帆さんが「国立競技場が夢なんです私達」と言っていたり、リアルサウンドのインタビューでは齊藤京子さんと上村ひなのさんは以下のように話したりしています。

齊藤:最近、みんなで次の目標について話していたことなんですが、東京ドーム公演では私たちにとっても大きな夢を叶えることができましたし、本当にいい経験になったので、「次はドームツアーができたらいいよね」というちょっと大きすぎるくらいの目標を掲げていて。それが達成できたらいいなと思っています。ドームやスタジアムでのライブが続くことで、だんだんと私たちにも「もっとこんな見せ方ができるんじゃないか」というアイデアも芽生えてくると思うので、いずれ達成させられたらと考えているところです。

上村:まだ日向坂46でライブをやったことのない都道府県もたくさんあるので、私は全国各地に行って歌やダンスをお届けしたいなと思っていて。そこから、おひさまの輪をたくさん広げていけたらなと思っています。レギュラー番組(テレビ東京系『日向坂で会いましょう』)も全国で放送されているわけではないですし、すべてのおひさまを置いてけぼりにしたくないので、全国のおひさまと一緒に同じ景色を見ていきたくて。なので、とにかく今はいろんな場所でライブができるようになりたいです。

齊藤京子&上村ひなの、日向坂46として重ねてきた時間の大切さ 頼もしく優しい初センター・丹生明里への“憧れ”も明かす

これらの事から個人的には、「東京ドームのような共通目標はまだ定まってなさそうやな〜」と感じました。もちろんすべてホントに目指したいことでウソではないのは分かりますが、「最も優先する確固たる目標」は存在していないように感じます。

実際、ドームツアーについて「BLT2023年7月号」のインタビューで高瀬愛奈さんはこう言ってます。

一期生はドームツアーをやりたいと思っているんですけど、それがグループ全員に共有できているかって言うとまだそうじゃないので。ちょっと前まで東京ドームを皆で目指していたように、また改めてひとつの大きな目標を持って、チームとして前に進んでいきたいですね

BLT2023年7月号

メンバー自身もこのように思ってるわけで、だとすればファンの我々からしても揃ってるように見えないのは頷けます。

(2023/06/20 追記はじまり)
なぜドームツアーという目標が揃いにくいのかについて、元々は以下に長ったらしく書いていたんですが、本質を外してると思うので別記事にまとめました。こちらの方がまともかと思います。

一応、これまでの文章も以下に残してはおきますが、ピントは外してると思いますし、あくまで「グループ目標の統一感」についての結論は上記の記事になっております。

(2023/06/20 追記おわり)

なぜドームツアーという目標が揃いにくいのかを考えた時に、たぶん「東京ドームと質的に狙いが同じ」だからな気がしてます。東京ドームって、要は「規模の拡大の象徴」として存在してたじゃないですか。「滑走路だった握手会から、東京ドームを埋められるくらいファンが増えたぞ!」っていうワクワクするような規模拡大の成長物語がそこにはあったんですが、ドームを2日間埋められる規模に到達した今、ドームツアーは「同じく規模拡大路線」のままで、ドームまでの道のりと質が似てるんですよね。さらには、滑走路から始まった東京ドームに比べて、現状すでに結構な規模がある状態です。そこからさらに「規模を追いましょう」ってなると、なんかあんまりピンとこないんじゃないでしょうか。「そこに愛はあるんか」じゃないですけど、「そこに意義はあるんか」という気持ちになるというか。

なので、上村ひなのさんの気持ちもよく理解できて、仮に東京ドーム規模が「局所的に深くファンを獲得する」ことでも達成可能だとしたら、上村ひなのさんの言ってることは「大域的にファンを広げていく」ことになり、東京ドームまでの道のりとは少し質が違うんですよね。総量は他のアプローチより増えないかもしれないけど幅は広がるという。それゆえにそっちの方が魅力的に見えるというのもすごくよく分かる。なんなら僕も「その方がおもろいかも」とちょっと思う。こういう「規模の質を変化させて広げる」方向であれば他にも、たとえば雑で適当な例ですけど「家族連れのイベントで幕張を埋める」とか「シンガポールでライブをする」などの方向も考えられます。
あるいは単純に規模を追うなら、加藤史帆さんが言っていたように単一のキャパが他のドームよりもデカい国立競技場とか日産スタジアムを目指すという考え方もあります。

さらには「規模の拡大」という観点から「表現の広がり」に観点を移していく道もあるように思います。たとえば昨今は「東京 03 FROLIC A HOLIC feat. Creepy Nuts in 日本武道館」などのように、音楽とその他の要素を新結合させて新しいエンタメを生み出すような動きも見られます。お笑いコンビ(っていうくくりを超えてそうですが)のキングコングも音楽を絡めて家族も楽しめるような、既存の盆踊りをアップデートするとても野心的なイベントを企てていて、聞いていてワクワクします。日向坂は冠番組のバラエティがとても優秀だと思いますし、となるとそれを興行にも活かしていく道があるかもしれません。ラジオもたくさんやってたり、運動が得意なメンバーも多いので、そういったこともヒントになるかもしれません。握手会やミーグリで直接ファンと交流する機会を設けていますが、あの形以外にも交流のやり方の正解があるかもしれません。そもそも日向坂自身、「日向坂46 × DASADA LIVE&FASHION SHOW」という、音楽だけでないイベントを過去に開催しています。これめっちゃ良かった。マジで良かった。謎イベントすぎてチケット余ってたけどマジで良かった。

とまぁこんな風に方向はいくらでもあると思うんで、「うわ、なにそれ!楽しそう!」っていう何かが設定されると個人的には嬉しいなと思います。しかし、とにかく「メンバー全員が腹落ちしてること」が何より大事です。他でもないキャプテン・佐々木久美さん自身もこう言ってますから。

佐々木久美:あとやっぱり、一緒の目標ってのが大事じゃない?

(中略)

佐々木久美:考え方とか道筋は違っても、同じものがゴールに見えてるっていうのは、チームとして大事な気がする。

日向坂46キャプテン 佐々木久美が語る、後輩との適切な接し方「一緒の目標を持つことが大事」

早く目標が定まり、またファンを「共犯者」として巻き込んでくれたら、こんなに楽しいことはないなと思います。

まとめ

現状の日向坂を、定量的な視点と定性的な視点から整理してみました。
定量的視点から見ると、ファンの熱量は高くありつつも、主に楽曲の訴求力の点で新規獲得の力が慢性的に減退傾向にあるように思われます。定性的に見ると、定量的視点から伺える減退傾向に対し、A&Rの変遷などから手を打とうとしていることが感じられます。今は「新しい日向坂の発見」のフェーズだと思いますが、昔への回帰ではなくそれが実際に必要であることも定量指標から理解できるので、とにかくやり遂げてほしいと願うのみです。グループの目標やアイデンティティについても同様に、みんなが腹落ちするものを定め、ファンも含めてまたみんなで歩みを合わせて進んでいけるといいですね。

まさに今が、「第二の滑走期間」だと感じます。佐々木久美キャプテンは「今年は勝負の年」と形容しましたが、色々と現状を整理していくうちに、僕自身も「確かにそうだな」と感じました。これからまたしっかりと速度を上げて離陸し、充実したフライト期間を迎えられるよう、今後の動きやリリースに大いに期待したいです。特に節目の10枚目。本当に楽しみです!

最後に、「その解釈は変じゃね?」とか「この観点が抜けてる」とか「自分はこう思う」など、気になる事や感想などあればどしどしコメントをお寄せ頂けると嬉しいです!

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