これで時代に追いつける!2019年最新マンガ傾向

明石焼きの店主が教えてくれた人生への格言

以前、移店を控えた明石焼き屋さんに頼まれて、新しいお店の壁にイラストを描いたことがあったんです。そのときに初老の店主が、これだけは若い世代に伝えておきたい、として教えてくれたことがあります。

上手くいってる人とそうでない人とどうしても差がつくが、長い人生の間には、それがリセットされて一斉にスタート地点に並ぶ時が来る。その時に気をつけなくちゃいけない。そういう時はズルは効かないんだ。ズルして来た奴は、そこで必ずしっぺ返しを食らう。

一斉にスタート地点に並ぶ時、例えばそのときは「アメリカの同時多発テロ」のことを言ってました。大事件によりみんなの気持ちや雰囲気が揃ってその時代の傾向が鮮明になる、ということは確かにあると思います。

時代の流れ掴めてますか?「2019年、最新のマンガ傾向」

2015年10月から始めた漫画ストーリー専門の教室&研究室「東京ネームタンク」もおかげさまで3周年!支えてくださったみなさま、本当にありがとうございます。

良いタイミングですのでマンガの現場で感じ続けた3年間の漫画傾向を振り返らせてください。漫画の傾向、時代の雰囲気、これって思いのほか大事と思います。なぜって極論すれば漫画は社会に出していくもの、と思うからです。時代の波に乗れるのか沈むのか、この情報で変わるかもしれません。今回はここ3年の潮流を約3分でお伝えします!

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2015年秋「おそ松」再来には何があったのか

2015年秋、東京ネームタンクは「おそ松さん」の大ヒットと共に始まりました。時代、という観点から「おそ松さん」を考えると、

「まったく現実を感じさせない」

ということがポイントの一つだと思っています。誰一人働かなくてもいいパステルカラーの理想の世界。絵柄もシンプルで誰でも描ける、難しいことなど何一つない世界。これがその当時の世相に響いた…と僕は思っています。

「社会現象」とまで言われる作品は、その時代の大多数の人間に響いた、ということです。その作品のジャンルが抱えている一定のファン数を超え始めた段階から、さらに一跳ねして「社会現象クラス」になるかどうかは、そのときの社会の雰囲気や要求に合致するかどうかで決まる、と感じます。

この時がどんな世相だったのか、もう少し過去に遡って時代を振り返ってみましょう。経済は詳しくないのでとんちんかんなこと言ってたらすみません!でも時代って経済抜きに考えられないですものね。

2008年 リーマンショック
2009年「進撃の巨人」
2011年 東日本大震災
2013年 1ドル100円超 東京五輪決定

まず2008年に「リーマンショック」があり世界的に大不況に陥ります。そして2009年に始まったのが「進撃の巨人」。2010年代はまず絶望からのスタートでした。

2000年〜2010年を象徴する「けいおん!」「らき☆すた」など「萌え系作品」は影を潜め(駆逐され)ここから強い感情の時代が始まったと感じています。シビアな現実にゆるゆるふわふわしていられないという感覚でしょうか。

さらなる悲しみに襲われるのが2011年、東日本大震災。冒頭の話でいうと、ここで日本は一度リセットされた感があると思います。

そこから少し時間が経って、流れが変わり始めたのが2013年。第二次安倍政権発足、一気に100円を超える円安になった年です。また東京五輪が決まったのも2013年。このあたりは「絶望からのゆっくりとした脱却」が始まり「どうなの?変化が来るの?」とみんな不安だったのかもしれません。「ありのままでいい」とアナ雪で歌っていたのも2013年です。

相次ぐ過労自殺で「ブラック企業」という言葉が流行語になったのが2014年。世界で頻発するテロなどにより不安が広がった、という理由で2015年の漢字は「安」でした。という感じで2008〜2015年はわりと暗黒の時代だったと思います。

続く2016年は未来を見る覚悟を決める

北朝鮮からのミサイルが降りそそぎ、トランプ政権の樹立と、2016年も大荒れでしたが、ここで大流行したのが「君の名は」と「シン・ゴジラ」です。あとはじわじわと「この世界の片隅で」もヒットしましたね。2015年〜16年のおそ松さんでは現実から目を逸らせ気味でしたが、ここにきて変化も見え始めます。

「君の名は」も「シン・ゴジラ」「この世界の片隅で」も明日を生きていく、という強いメッセージ性を感じます。この3作品、過去の消化ということが共通項ではないでしょうか。過去を乗り越えて辛い現実に目を向けよう。それがこれから必要なんだ、と言われた気がしました。

「ポケモンGo」の大流行も2016年です。いつもの現実が楽しいものになるかもしれない…という期待感。しかしこちらはわりと早めに夢から覚めましたね。

僕は「FGO」は詳しくないのですが第一部の終わりのイベントで盛り上がっていたのが2016年末らしいです。焼け野原となった歴史からの再生…でいいのかな。ここまでの文脈の中で、みなさんどう捉えるでしょうか。

こうやって取り上げると「確証バイアス」には気をつけたいものの…このあたりの「再生したい感」すごくないですか。震災から5年が経ち、みんなの気持ちがそう動いてきたのかなと感じます。

2017年は動物に癒されて力を蓄える

しかし急に辛い現実を見ようと言われてもまだ心が消耗していて耐えられません。そのためにまずは癒して回復する必要がありますよね。

2017年は「けものフレンズ」「こぐまのケーキ屋さん」「タヌキとキツネ」「スマホ版どうぶつの森」と大動物時代がやってきます!

「大動物時代」…僕は研究会などでずっと主張しているんですが3,4個しか例がないのにどこが時代なんだという、みんなの懐疑の目をひしひしと感じております…。癒しの象徴という意味での大動物時代です!

また「けものフレンズ」は面白いなと思うのが、物語が進むと少し不穏な現実、世界観が見えて来るということです。ただただ優しい世界じゃないんですよね。これも今っぽい演出に思えます。

一瞬現在、2018年の話をするとヒプノシスマイク」が次に来る作品として話題にあがってます。一見楽しげなラップバトルプロジェクトですが、この作品も実は背景に女尊男卑の荒廃した世界観が隠れていそう…と聞きました。

「けものフレンズ」と同様にこの、いきなり現実を突きつけず徐々に世界観に興味を持たせていく、という手法はまさにこの現在の時代感覚に合っていると感じます。

そして今年、2018年はどんな年だったか

僕はいまマンガ新連載研究会の活動の一環で、オンラインで読める漫画新連載の第一話をほとんどすべて読んでいますが、2018年上半期はとにかく「異世界転生モノ」が多かった…全新連載の4分の1くらいは異世界関係だったんじゃないかと思うほどです。異世界転生専門のレーベルもできましたしね。

大動物時代はさておいても大異世界転生時代は同意してもらえるんじゃないでしょうか…最終的にはプーチン大統領が異世界行ってましたよ。

異世界転生作品はなぜここまで増えたのでしょうか。
異世界転生を現実逃避と捉える向きもありますが…結局転生した先は新たな現実なんですよね。どちらかというとリセットして新たな現実と向き合いたい、という感覚があるような気がします。

この先「名探偵コナン ゼロの執行人」「いじめるヤバイ奴」「カメラを止めるな」の話を少しするので、がっつりネタバレはありませんが気になる人は飛ばしてください。

映画では100億の男、安室がすごかった…。「名探偵コナン ゼロの執行人」東京ネームタンクのスタッフも7回見たと言ってました。この作品は大人気のトリプルフェイス安室さんがほぼ主役ですが、この国を、この現実を、愛すると言い切る人がいるんだな…という、ここに新鮮さがあったように感じます。

マンガ新連載研究会の中で「安室の魅力研究班」が立ち上がったのですが、レポートの中に「劇中でのRX-7のドラテクに現実でぎりぎりできそうな魅力を感じた」というものがありました。あれが現実にできるか…ちょっと疑問ですが、言わんとすることは分かる気がします。マニュアル車の運転って現実の魅力の一つですものね。

社会問題を取り扱う作品が現れた。

漫画に話を戻すと、ぽつぽつ現れた傾向として、社会問題を取り扱う作品が出てきています。LGBTの問題を想起させる「性別『モナリザ』の君へ。またいじめを題材にした「いじめるヤバイ奴など研究会でも話題になりました。

とくに「いじめるヤバイ奴」は構成が上手くできていて、設定をひっくり返すことで現実へのストレスコントロールができていることに感心しました。裏から描くことで真実の姿を見せていく、という作りは他作品でも見られ、最近注目の手法です。

犯人たちの事件簿」や「カメラを止めるな」のように、裏側から見せることで犯人やゾンビに襲われるストレスなくミステリーやホラーを味わうという…こうやって現実のもう一つの側面から楽しませる系作品はまだ続くと思います。

そして2019年に向けて、時代は何を求めるのか

あきらかに2015年から2018年にかけて、徐々に現実に目を向ける流れがあると思っています。この流れで考えると、より「しっかり現実を見つめていく」作品が増えるのでは、というのが僕の予想です。

最終的にはノンフィクションに行き着くのかもしれません。ただ今のところは「フィクションなのかノンフィクションなのか曖昧系作品」が注目です。「MMR」からもちょうど20年。埋蔵金とかUMAとかもう一度来るんじゃないかな…

「府中三億円事件を計画・実行したのは私です。」
「小説家になろう」に投稿された作品。真犯人なのではと信じる人も。
(現在作品は取り下げられています。追記:2018年10月17日)
ゼロから始める事故物件生活
事故物件に住むマンガ。実在の企画と登場人物を描く。

また現実と奮闘する&ファンタジー漫画も増えているように感じます。「仕事」とか「就職」とか、これまで考えたら負けだ…と思っていたものに向き合いつつ、しかしそこにちょっとだけファンタジーを入れて、辛さを緩和しつつ、というのが今ちょうどよいバランスなのかも。

若女将は小学生!
背景の圧倒的現実感もポイントの一つなのかもしれない…
スギナミ討伐公務員
阿佐ヶ谷辺りに発生したダンジョンに討伐に行く「お仕事」
ホウキにまたがる就活戦争
就職に奮闘する系の物語は他にも見られるようになってきます。
乙ゲーにトリップした俺♂
乙ゲーの中の人たちの仕事への姿勢が偉い。

異世界転生はどうなったかというと…こちらもついに現実にたどり着きましたよ。

クラスが異世界召喚されたなか俺だけ残ったんですが
何十周も回って学校がテロリストに襲われたらなっていう厨二妄想に戻った感が新鮮。

あとはこれから増すだろうなと感じているのがLGBTなど社会がもともと持っている問題に切り込む作品。社会や世の中を見ていく強さが戻ってきている感じがします。災害・政治・労働・いじめ・格差・高齢化…現実の問題は山積みです。いいことなのかどうなのか…漫画家からすればネタも山ほどあるということです。

りんごの色~LGBTを知っていますか?~
大分県が配布している人権啓発のための冊子が話題になりました。
さよならミニスカート
社会にある無意識的な性差別に迫る。リボン編集長からのメッセージも
檻ノ中のソリスト
記事執筆中にまだ一話なのでどうなるか分かりませんが…犯罪や管理社会について真っ向から描く大作の予感。重いですがこの重さに耐えられるようになってきたのでは…

あいかわらず「癒し」も求められると思います。動物系は引き続きワンチャンあるのでは。逆に学んだのが「けものフレンズ」第2期ですね。たつき監督降板騒動など、みんなが求めていた「フレンズとしての肯定感」を真逆でいく対応は悪手だったんじゃないかな…時代に合ってないと感じました。

49歳、秘湯ひとり旅
ノンフィクション+癒し。リアル目な背景描写需要は今後高まっていくのかも。

◎ ◎ ◎

これから求められる作品まとめ

ここまでお付き合いありがとうございました!正直今回は、ほぼ主観です!
時代感というのはどうしてもそうなってしまうんですよね。いまこの世界に漂ってる空気をどう感じるか…ということなので。異論反論あって然るべきと思ってますのでご感想のツイートなどぜひお願いします。

まとめ
「現実に目を向けて行く」という発想が2019年のポイント!

■ノンフィクションなのかな…と思わせる作品。
■ドラテクなど、現実で再現可能な魅力を伝える作品。
■仕事や労働、社会問題など、いま目の前のものに取り組む作品。
■しかし辛すぎる場合はファンタジーを入れてストレス軽減。
■癒しは引き続き求められる。こちらもより現実寄りになるか…?

個人的には「埋蔵金」「M資金」「UMA」などこのあたりにベットしておきたいです。ドローンやスマホの発達で新たな迫り方ができる時代にもなっていますしね。「フリーメイソン」や「ロスチャイルド」もいいな…ビットコインに怯える「ロスチャイルド21世」とか流行りそうじゃないですか?

2019年に向けて、何かみなさまの漫画制作のヒントになれば幸いです。
また「東京ネームタンク」4年目もどうぞよろしくお願いいたします!

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東京ネームマガジン

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コメント2件

表現規制問題を取り扱ったエグゼロスも今後来そうですね
すごい濃密でおもしろかったです。
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