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土砂降りのウエディングパーティー

3年前の秋、ウエディングパーティーをした。
朝から夕方までずっと雨で、ひどい時は土砂降りだった。

雨の日の結婚式はきっと少なくないけれど
私の場合はそれがガーデンパーティーだったので
それはそれは大変な1日となった。
スタッフさん、ゲストの皆さん、それから新郎新婦の自分たち。
雨の中でのパーティーで、迷惑も不便もかけてしまったけれど
雨に濡れて、ちょっと寒くて、お日様が恋しかったけれど
それでも顔の筋肉が痛くなるくらい笑って
たまらなく幸せで、どうしようもなく愛おしい時間だった。

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新型コロナウイルスが世の中にあっという間に広がる少し前に入籍した私たちは、2020年の年明けから「結婚式」の為に動き始めた。
動き始めた、と言ってもそんな大仰なことはなく
式場で挙げる結婚式と披露宴が、自分たちのイメージとは違う気がして
もっとカジュアルで、自分たちのゆる〜い雰囲気に合ったパーティーがしたいと思い、ぼんやりSNSなんかで検索を繰り返した後、人伝に教えてもらった結婚式のプロデュースを行う会社へと足を運んだ。

初回来店日、「式場のパーティーはなんか違う、もっと自分たちの雰囲気に合ってて、堅苦しくなくて楽しめる感じ」「緑の中でのパーティーに憧れている」…そんなものすごくフワッとしたイメージしかない私たちにプロデューサーのKさんは丁寧なヒアリングをして、どのような想いでこの会社が、自分たちが、結婚式づくりをしているかを話してくださった。

ここで契約してください!なんてことは一切言われず
色々見て決めてくださいね、とその日は送り出されたけれど
その帰り道、私は夫に「ここにお願いしたい」と伝えた。
ブライダルフェアにも行かず、他の何にも目を向けず
ただ、この人たちにお願いしたらきっと素敵なパーティーになる。という不思議と確信めいた予感だけで決めた。


お願いしますと伝えてからは、それはもうあっという間に毎日が過ぎ去っていく。打ち合わせ、ドレス・タキシード選び、打ち合わせ、ペーパーアイテムのデザインをし、招待状の準備・・・etc.
とは言え、新型コロナウイルスが世の中に蔓延し出したばかりのあの頃は今よりもっと何もかもが未知で、手探りで、どう動いていいのか、そもそも動いていいのかがわからないような中での、準備期間だった。

まずこんな中で開催できるのか、命を落とす人がいる中で、おじいちゃんやおばあちゃんも来てもらいたいけど、万が一このパーティーでコロナになってしまって、もしも、もしも…。
出席したいけど不安という声も聞きながら、毎日悩む。苦しかった。
お祝いの席で、大事な人たちに楽しんでもらいたいのに
危険に晒すかもしれないと思うと、身勝手なことをしてるのかも、中止・延期にするべきかも、と思わない日はなかった。夫とも喧嘩した。
そんな中、招待状を送った後も、ギリギリまで出欠の確認を伸ばしてもらい
プロデューサーさんたちも、コロナ禍でのパーティー開催に際して
細かいところまで考え、対策を取ってくださった。


最終決断の日、開催を決めゲストの人数も確定。
幸いその年の秋に近づくにつれ、感染者数はぐっと少なくなり、かつガーデンパーティーで換気問題なんかの心配がなかった為、ゲストの皆さんも少しだけ気持ちがやわらいだタイミングだったように思う。
そうと決まれば、最終の準備をどんどん進めるのみ。
仕事、準備、仕事、準備。(加えて何故かこのタイミングで新居探しもスタートしてしまい、結婚式前日が家の契約日だった)
結婚式の準備ってこんなに大変なのねと思う反面、楽しみでドキドキしてしょうがなかった。


そして迎えたウエディングパーティー当日。
朝から、しとしとと雨。
てるてる坊主、効かず。
ちょっと前の天気予報が雨になってから、毎日願掛けしていた。
待ち受けにすると良いことがあるというSHOCK EYEさんをiPhoneの待ち受けに設定し、ロック画面はこれまた幸運を運ぶという鶴瓶師匠のお顔を。

そんな数々の神頼みの虚しく、雨。


幸い前日は曇りで、ガーデンパーティー用のテントは設営完了していたので中止にはならず決行!となったものの、時折しとしとどころでは無い雨の中スタッフさんがレインコートを着て準備に走り回ってくださっていた。


お日様の下でのガーデンパーティーが憧れだったのと、この雨の中動いてもらわなくてはいけないスタッフさんや、来てくれるゲストの皆さんへの影響を思うと、お化粧をしてもらいながら気持ちが少し沈みそうになっていた。
ドレスに着替えてもなお「なんで今日に限って雨なん」と思わずにいられなかった私に、びしょ濡れのスタッフさんが走ってきて、気持ちのいい笑顔で
「雨を楽しみましょう!」と言ってくださった。


その一言で、沈みかけていた気持ちがフワッと浮上した。


他の誰でもない自分たちのウエディングパーティー。
コロナが流行りだして混乱する日々の中、自分たちだけじゃなく、たくさんの人が動いてくれてようやく迎えることが出来たこの日を、感謝こそして落ち込んでる場合か!と気付いたら、後はもうワクワクしか残らなかった。


お昼を迎え、雨の中ゲストの皆さんが会場に集まり始める。
お席へのエスコートカードは、食べられる「クッキー」。
クッキーが大好きな私は絶対このパーティーのどこかにクッキー要素を…を考え、それぞれのお席のアルファベットをクッキーで焼いてもらい、それをエスコートカードにすることを思いついた。
クッキーを焼いてくださったのは、私がスタッフとして働く焼き菓子店の店主さん。ゲストの方がクッキー可愛かった。美味しかった!と言ってくれた時は嬉しくてヤッター!と心の中でガッツポーズした。

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いよいよパーティーのスタートとなり
先に会場に入った夫の元まで、母と歩くバージンロード。
晴れていたら、テントとは別に人前式の場所を作る予定だったけれどそれは叶わず、傘を差しながらテーブルの間を練り歩く神聖感は全然無い新婦入場。笑
それでも母がドレス姿の私を見て泣くものだから、「泣かんといてよ!」と言いながら自分もグズグズになる。

BGMはくるりの魔法のじゅうたん。
この日のために用意していたレースのパンプスはお蔵入り。
ウエディングドレスにスタンスミスで
拍手を贈ってくれるゲストの皆さんの顔を見ながら歩いた。


人前式を済ませ、指輪交換をし、乾杯。
リングボーイは甥っ子。照れながらも立派に運んでくれた。
ゲストの皆さんが代わる代わる高砂に来ては「おめでとう」と声をかけてくれる。コロナ禍で本当に全然会えていなかった皆と会えることが、こうして集えることがすごく嬉しかった。


披露宴と二次会の間くらいのカジュアルなパーティーだったので
ちょっとしたゲームも取り入れたくて
プロデューサーさんにアドバイスをもらって
似顔絵リレーゲームというものに決めた。

テーブルごとのチーム戦で、私たち新郎新婦の似顔絵を
リレー形式で完成させてもらい、新郎新婦に「1番良い!」と判断されたものを描いたチームが勝ち、というゲームをした。(誰がどれを描いたかは目隠ししているのでわからない)
私たち二人は目隠しをしていたけど、あっちこっちで笑い声が上がっていてあの日一番の盛り上がりだった気がする。笑
おじいちゃんおばあちゃんも、小さい子供たちも一緒になって参加してくれたし、私たちの手元にもユニークな似顔絵たちが残って、すごく良かった。



雨で足元が悪い中(そして寒い)迷惑や不便をかけたことの方が多く、私たちのわがままを通してのパーティだったに違いない。
それでも、皆が笑ってくれたり、泣いてくれたり
色んな顔を見せながら祝ってくれたあの時間は
私たちにとって、最高に幸せなひとときだった。


正直なところ、実際結婚式をするまで
結婚式にお金をかけるより、新婚旅行に・・・とか
出席するのは楽しいけど、主催はなんだか照れ臭いなとか
結婚式自体に大きな思いは抱いてはいなかったくせに
パーティーを終えて、数日は思い出して胸が熱くなって
泣けてしまうくらいに、大事な1日として心にでっかく刻まれた。
3年経った今でも、思い出すと心がホカホカとする。笑


足元が悪い中、トイレ行くのも傘さして行かないと行けないし
きっと面倒ばっかりかけてしまったに違いないゲストの皆さんも
びしょ濡れになりながら走り回ってくれたスタッフの皆さんも
みんな、笑いかけて「おめでとう」を伝えてくれた。
あの日集ってくれたみなさんの
優しい気持ちのおかげで、素敵なパーティーになったことを
絶対に絶対に、忘れないでおこうと思う。


青空が恋しかったのも本音ではあるけれど
土砂降りの結婚パーティーだって最高だった。
雨で寒い中にも関わらず出席してくれた祖父が
「結婚式に雨は縁起がいい」
「この先流す一生分の涙を代わりに流してくれてる」
そう教えてくれた。

そのおかげもあってなのか3年後も
私たちはマイペースにのんびり仲良く生活している。
小さい喧嘩(というより私が怒ってる感じ)はあるし
ご機嫌じゃいられない日だってあるけれど
お天気と一緒で、そりゃ生きてたら色々あるから
晴れの日も曇りの日も雨の日もあるか、と思う。

晴れも曇りも雨も、等しく愛しい日々に違いない。
大事に暮らしていこう。



そういえば、あの結婚パーティーの日
ようやく雨があがった夕方に
虹が出てるよ、と姉が写真を送ってきてくれた。
(わかりづらいけれど笑)



これは完全なる余談だけれど
大好きな映画「アバウト・タイム」に出てくる
結婚式のシーンも同じようなガーデンウエディングで
これまた同じように雨が降っていたことを思い出して
より一層、雨も悪くないななんて思ったりしました。

おしまい






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