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誠光社に行く道

2023/12/16

昼過ぎまでとろとろ微睡んで、今日は滋賀の草津から静岡に帰る日。
京都行の電車に揺られながら、京都に寄っていくか、真っ直ぐ帰るかぐるぐると悩んでいたら、きーっと音を立てて電車が止まった。急ブレーキに車内で立っていた人たちが一斉にぐーっと前に傾く。行先の駅で緊急停止ボタンが押されたらしい。運転再開は未定。しばらくして、ようやく下りることができたのは山科という駅だったから、どちらにしても線を乗り換えて、一度京都の街中に出ることになった。
これは京都でちゃんと遊んで帰りなさいと誰かが背中を押してくれてるのかもしれない。せっかくだから京都で行きたかった本屋、誠光社さんに行こう。

三条で東西線を降りる。泊まりの荷物はロッカーに預けて、地上に上がる。目的地は誠光社。鴨川をひとりふらふらと上流へ歩く。


お散歩が嬉しい楽しい犬。しっぽはぶんぶん。
部活のジャージでおしゃべりする高校生。
遠くの飛び石を渡る家族。スーツのお姉さん。
寒いからか水から出てきた鴨。声が可愛い。
さむ〜い河原で半袖半ズボンの小学生のぼくたち。
サックスを吹く、お洒落なジャケットおじちゃん。
釣具を脇にゲームする男の子たち。
色付くオレンジの実。
止まらない2才。
「止まって!そこの2才!」の声。
お母さん頑張ってる。ふぁいと。
ヌートリアって知ってる?鴨川にいるの。
動物の名前。よかったら調べてみて。
夜に目の前に出てきて絶叫しかけたから私。笑
どこまでも曇り空。風は強い。冷たい。
川の向こうにはぐんぐん自転車で風を切る人。
寒いけど、河原で座って本を読む人。
仲間だなぁと思う。電車の中で本を読む人も。
きいろいじゅうたん!の声。絨毯にはもう少し。
思い思いの着物の着こなし。
石造のクラッシックなFRESCO。
FRESCOはローカルスーパーの名前。
あまりに素敵だから用もないのに少し覗いた。
旧京都中央電話局庁舎らしい。登録有形文化財。
残すために頑張ることもある。保存。継承。維持。
でも使い続けられるものが結局1番残る。
あ、おでんの香り。いいなぁ。
この辺りのはず、誠光社。


誠光社


本屋に行くのに目的は大抵ない。
出会った2冊を手に来た道をてくてくもどる。

オレンジの木があるカフェのオレンジの灯り。
中華の香り。ゴーゴーと換気扇の音。
釣具を片付け始める男の子。
本をまだ読む人。
飛び石飛んでお家に帰る人。
道のこちらからあちらへ仕込みを運ぶ厨房の人。
お散歩がちょっといやなわんこ。
道の葉っぱを掃くおばあちゃん。
たぶん半分寝ているたわし屋さんの店番。
鴨ももうおうちに帰ったのかな。
遠くを飛ぶ鳥の群れ。
さっきは付いていなかったお店の灯り。
サックスを吹き続けるおじちゃん。
行きはまだ開いてなかった銭湯。
サウナの古い看板。いつからあるのでしょう。
日は落ちても曇り空。


思い出した。小学生の頃、こんな風に本読みながら毎日同じ道学校からの帰り道を歩いていた。毎日図書室で新しい本と出会えることが1番の楽しみだった。そしていつも待ちきれずに、通学路の帰り道に歩きながら本を読んでいた。今日みたいに。

よかった。私、今日もいい本と出会えた。

(歩きながら本を読むのは危険です。
真似しないでください。)


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