死神の精度4

「死神の精度」レビュー/傍観する死神 伊坂幸太郎・著

音楽が好きで、CDショップの試聴コーナーに入りびたる死神、千葉。素手で人間に触れると気絶させてしまうので、触れる時は手袋をする。
千葉の仕事は、指定された対象者を調査し、一週間後に生死の可否を決めること。死神といっても、千葉が寿命を決めているわけではない(たまに見送る=寿命を延ばす場合もあるが)。

千葉が仕事をする日は、たいてい雨が降っている。

画像1

そんな死神の千葉が、調査対象者とすごす日々を切り取った短編集。それぞれが独立したストーリーだけど、そこは伊坂幸太郎、ちょっとした仕掛けも楽しめた。
千葉は一緒に行動するだけで、行きがかり上何かを手伝う事はあっても、基本的には何もしないし、ほとんど感情も動かさない。人々の人生の一場面の傍観者として、話は進んでいく。
ちょっとした言葉や比喩がわからず、とんちんかんな受け答えをするシーンは、ユーモラスで笑える。

ごくまれに、千葉が人間ではないことに気付く人もいるらしい。死のにおいを感じ取る人も…。もし私が出会い、自分の死期が近いことに気付いたら?
クールで物事に動じなくてどこかユーモラスな千葉と一緒にいるのは、けっこう居心地がいいように思う。私が何をしてもそのまま受け止めてくれるような…。まあそれは、物事に関心がないということなのだけど。音楽以外には。

自分の寿命がわからないからこそ、未来に向かって頑張ったり迷ったりするのだろう。
やはり、出会ったとしても死神だということに気付きたくはないな。ただ、人生の最後に、そばに千葉という変わった人(人じゃないけど)がいて、私の人生を傍観されているというのも、悪くない気がする。

死神の精度/伊坂幸太郎(文春文庫)


-----
ちなみにこの投稿は、絵が先です。
装丁コンペ用に描いたものがあり、ちょうどハッシュタグ企画があったので感想文を付けてみました。

画像2



この記事が参加している募集

読書感想文

シェアやスキやサポート、ありがとうございます!note会員でなくても♡は押せますので、気にいられましたらよろしくお願いします。