思い出と歩く

第三章

「ホワイトハウス」から帰宅して、少し経つと私の電話が鳴った。相手は父親からだった。

—もしもし、のどかか?元気にしてるか?—
—うん。あっ、バームクーヘンちゃんと送るねってお母さんに言っておいて—
—わかったよ。そっちの暮らしはどうだ?—
—懐かしいね、お父さんにはもっと懐かしいかな?—
—うん…実はなのどか?お父さんとお母さんもそっちに行こうと思ってるんだ?—
—ふふっ。なんだそんな事?はじめっからわかってたよ—

祖母は常に「のどかは少し繊細な所があるわね」と私に言った。そんな私にだからこそ感じ取って欲しい事があったのかもしれない。この家で一本の漫画を描いた。時代設定を現代ではなく、明治時代にし、一人の裕福な家庭に育った女性が絵描きを目指し留学した異国の地で現地の男性と恋に落ちるのだ。その時代の国際結婚の難しさ、言葉や信仰の壁を時には感情的になりながら乗り越えていく…という内容のストーリーだ。

一年半、父の故郷で漫画を描いていた私は久しぶりに両親と三人で暮らした。短い様で長い様な不思議な時間を過ごした。その後、父は趣味の陶芸のお店で働きながら焼物を作ったりしている。母は「TUTA洋菓子店」で働き始め、私は東京へ帰り新しく住む場所を探し相変わらず漫画を描いている。中くんには「やっぱりさびしかったんじゃん。一年半ぐらいで帰ってくるなんてさ」と言われたけれど笑ってごまかしておいた。
この場所で描いた漫画は正直あまり売れなかった。私にしては自信作だったのでちょっとがっかりしたけれど私の中の思い出の作品で今は一番大切な漫画だ。
                 おわり

この物語は架空の物語です。

6

思い出と歩く

東京から祖母の家に引っ越しそこで漫画を描き始めた「のどか」が感じ取った不思議な感情…
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。