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サクラのお城

前回のお話「夜ザクラの猫をさがして」

四月初旬
少し北へ行ってみた。

もちろん花見猫を探しに。

ここは公園と山に桜がある。
道一つ越えると行き来が出来た。
桜は見事に満開だった。

まず大きな川沿いの数十本連なる桜並木を見る。
TVドラマ「金八先生」で見るような大きな土手だ。
そこを歩いているだけで、
TVドラマに紛れ込んだような気分になった。

公園の遊歩道を一周、
夕方のせいか散歩道として使う常連さんが多い。

回廊をすこし上がった山の上は、
六角形の提灯が所狭しと垂れ下がっていた。
これが花見気分を盛り上げてくれる。

OLさんらしき女性らがシートを広げ、
花見気分でお菓子を食べていた。
ここは屋台が数多く出店していて、
夜になると、もう少し賑わうみたいだ。


後日北の山奥の桜を見に行った。

ここは千年以上前の城跡で、
昨年通りがかりに初めて行ってみた所だ。
夕方だったので帰る人々と行き違いに入場した。
七分咲きの桜を見る。
おそらく場内には私しかいなさそうで、
ほぼ独り占めの桜の風景だ。
一方で、やや日も陰り、
物寂しくもあった。

現在は公園なのだが、
今風の庭園と昔ながらの風景が、
あまり違和感なく共存していた。

ある桜は樹齢が長いのか、
見上げるような高さにあった。
杉の林にぽつりと植えてあるので、
雰囲気がなんというか重厚だった。

城跡の最上部の少し西に巨木のある平地があり、
杉林の暗がりから近隣の田畑が見渡せた。

昔の人はここと同じ場所から、
民の生活を眺めたり、
戦の時は見張りを立てたり、
剣の稽古をつけたりしていたのかなと、
想像は膨らむ。


夜になって北の国道沿いの公園へ。

ここは夜店が多くかなり賑わっていた。
遊歩道に提灯が連なり、
見物人は、やや騒がしく花見らしさがあった。


さらに後日、お山の夜桜を見に。

花びらが側道にたまっていたので、
平凡ではあるが川に見立ててみた。

強風に煽られ、
散りゆく桜の花びらは、さながら雪のよう。

シートを広げる花見客は三組ほどで、
おごそかに花見を楽しむ見物人の、
邪魔にならない程度に宴を楽しんでいた。

そうそう猫はどこにもいなかった。

今春は猫探しを口実に、
花見スポットを転々としていた。

せめて、しっぽだけでも見せておくれ。

サクラにまつわるお話|ナミソラフウモ|note

どうぞよろしくお願いします。