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【SABR】得失点差+104のパドレスはなぜ低迷したのか

 鯖茶漬です。いつもお世話になっております。

 過去2回に渡り、主要指標の解説として「wOBA」と「FIP」の記事を投稿しました。今回は、セイバーメトリクスの基本的な分析結果を踏まえながら「野球の構造」といった部分に触れたいと思います。

ただ、読者の中には「そんな基本的な話はいいからもっとホットなネタを提供してくれよ」という方もいるかもしれません。そういった方にも興味を持っていただけるよう、当記事では「2023年のサンディエゴ・パドレス」に焦点を当て、各方面から「不運」と評されたシーズンと、野球の基本的な構造の解説を行います。


□2023年シーズンを振り返る

▼期待外れに終わった一年

前述したように、昨季のパドレスは「不運」とも言えるシーズンを送りました。

Fangraphsによる開幕前の成績予測は92勝70敗でナショナル・リーグ西地区首位。オフにFA市場の注目選手ザンダー・ボガーツを獲得し、NLCSに駒を進めた前年の勢いそのままにリーグ優勝を目指したシーズン…からの地区4位。地区首位のドジャースには18ゲーム差をつけられ、ファンからは失望の声があがりました。

合同note企画パドレス担当、つかみ男さんによるシーズンの総括記事です。各選手の開幕前の予測と実際の成績を比較しながら「なぜプレーオフに進出できなかったかが具体的に説明できない」と振り返っています。また、後述する「ピタゴラス勝率」や「僅差時の貢献を表す指標」に触れつつ、不振の原因に「運の悪さ」を挙げています。

戦力的には上位クラスと目されていたものの、結果が全ての競技において不振に喘いだチームを「不運」で片付けられる根拠はどこにあるのでしょうか。

▼ファン、有識者らの見解

原因を探る前に、シーズンを通してパドレスの試合を観戦していたフォロワーの方へ「2023年シーズンの印象」を伺ってみました。MLBファン合同note企画担当のテルチカさん、つかみ男さん(上に紹介したnoteのまとめ)、インフルエンサー枠(?)のFelixさん、熱狂的ファン枠(!?)のこつ王さん、ご協力いただきありがとうございました。

▽テルチカさん
「スアレスの離脱等も響き、重要な場面での制圧力に欠けた印象。打線も1年通して右投手に苦労していた印象があり、また簡単に初球を見逃したりと積極性が足りなかった。ソトは目立った成績を残したが後続が続かなかった。『運が悪かった』で片付けたいところですが…。」

つかみ男さん
「恐らく運が悪かった。1点差試合での弱さ、得点圏時の弱さが挙げられることもあるが、それらは直接シーズンの勝率に結びつく要素ではない。ほぼ同じメンバーが名を連ねた昨年はチャンスに強かった。風水のラッキーカラーである白いメガネのブランドン・ディクソンをDFAしたからかもしれない。

▽Felixさん
「戦力的には問題なかったがとにかく噛み合わなかった印象。野手陣が好調な時は投手陣が苦しみ、投手陣が好調な時は打線が繋がらない。得失点差を見ればいかに噛み合わなかったかが明らか。」

こつ王さん
「選手層はまさにスター軍団そのもの。それ故に個々の『チームプレー』の意識が足りなかったのが不調の原因ではないか。選手から起用法への不満も出ていたという話などを聞くと、やはり献身性や結束力に欠けていた印象がある。それが結果的に単調な野球に繋がったと感じる。」

数字と睨めっこばかりしている私よりもよっぽど貴重なご意見です。特に目立つのは上に紹介した「運の悪さ」という指摘に始まり、「投打の噛み合いの悪さ」「重要な局面での勝負弱さ」「単調な野球」といったものでしょうか。「戦力が他よりも劣っていた為に…」といった指摘は見当たりません。ファンとしては歯がゆいシーズンだったことが伺えます。

また、この感覚はファンだけでなく現場の関係者とも一致しています。以下のリンクは9月8日のパドレスvsアストロズ戦にて、2-11と大敗を喫した後のアストロズ監督ダスティ・ベイカーのインタビューです。

ベイカー監督は、パドレスはリーグ上位の防御率を誇る投手陣と強力な野手陣を備えている、と認めた上で「なぜ彼らほどのチームが今の位置(パドレスは当時地区4位)にいるのか分からない」と語っており、先ほどの4名の意見とも重なる部分があります。

パドレスの不調はその実力を発揮できなかったことが原因なのか、それとも「不運」であったのか。野球というゲームの構造を改めて振り返りながら、その原因を探ってみましょう。


□パドレスは「不運」だった?

▼「ピタゴラス勝率」からの乖離

ご存知の通り、野球は「相手より1点でも多く得点したチームが勝利するスポーツ」です。1試合単位では「得点が多く失点が少ないチームが強い」とも言えます。当たり前の話ではありますがこの特性はシーズン単位でも発揮されることが判明していて、得失点差とチーム勝率には強い相関があることが知られています。

セイバーメトリクスの雄ビル・ジェイムズは、チームの得点と失点から勝率を予測する「ピタゴラス勝率」という計算式を開発しました。シンプルな計算式ですが驚くほど精度が高く、直近10年間の実際の勝率との相関係数は0.88にも及びます。

強い相関関係。

このピタゴラス勝率に昨季のパドレスの得失点を当てはめてみます。

シーズン得失点差+104
ピタゴラス勝率 92勝70敗 .568
実際の勝率 82勝80敗 .506

https://www.baseball-reference.com/teams/SDP/2023-schedule-scores.shtml

予測とは実に10勝分の乖離が生まれています。Baseball Referenceにはピタゴラス勝率が予測した勝利数と実際の勝利数の乖離を表す「Luck」という指標があります。2023年シーズンのパドレスはこの指標でワーストの数値を記録しており「パドレスが不運であった」と言われる最大の原因はこの部分です。

https://www.baseball-reference.com/leagues/majors/2023-standings.shtml?sr&utm_source=direct&utm_medium=Share&utm_campaign=ShareTool#expanded_standings_overall

Luckにおいてワーストの数値を記録したパドレスに対し、予測よりも多くの勝利数を記録したのは得失点差がマイナスでありながら6つの勝ち越しを記録したマーリンズ。しかし、2022年の両チームのLuckはパドレスが+3勝(全体4位タイ)であるのに対しマーリンズは-1勝(同19位タイ)。多少の選手の入れ替えはあれど「パドレスは常に不運な球団であり、マーリンズは常に幸運なチームである」とは言い切れません。

▼パドレスの戦力は充実していたのか?

実際の勝率だけでなく、選手のパフォーマンスはどのくらいの質だったのかを総合指標「WAR」で確認してみます。野手の評価方法も打撃、守備、走塁といくつかに分類できますが、WARはこれらを包括しており「何勝分の貢献をしたか」をすぐに把握できる点が優秀です。

※括弧内はMLB全体での順位。

失点率から算出される投手rWARこそ目立った数字ではないですが、他の数字は軒並み上位。パドレスを上回るrWARを記録した8球団はすべてポストシーズンに進出しており、101勝を記録したオリオールズに関してはパドレスよりも低いWARを記録しています。

少しだけピタゴラス勝率とWARの関係について解説します。「得点は勝利と強く関係している」というピタゴラス勝率の考えから「1勝分(1WAR)に値するのはおよそ+10点分(年によって変動)の貢献である」という分析結果が出ています。

ざっくりとパドレスの成績をピタゴラス勝率に当てはめると、シーズンの得失点差+104という数字から「平均よりも+10勝分の貢献をしたチーム」ということが分かります。シーズン通して162試合行われるMLBの平均的なチームは81勝。ここに+10勝をすると91勝となり、上述したピタゴラス勝率での「92勝70敗」という成績に概ね一致します。

投打のWARを見ると「戦力的には申し分なかった」というファンの体感は間違っていなかったことが分かりました。そうは言っても実際のパドレスの勝ち越しはわずか2勝に留まっており、勝率.506は全体15位。予測と離れた原因はどこかにあるはずです。もう少し掘り下げてみましょう。


□「予測からの乖離」の要因

▼致命的だった接戦での弱さ

改めて野球の基本的なルールを確認してみます。MLBの野球規則はこちらのリンクから。その中でも一番重要なものをひとつ紹介します。

The objective of each team is to win by scoring more runs than the opponent.
(訳:各チームの目的は、相手よりも多く得点し勝利すること。)

https://img.mlbstatic.com/mlb-images/image/upload/mlb/wqn5ah4c3qtivwx3jatm.pdf

つまり「相手より1点でも多く奪っていれば試合に勝利し、それが10点差であろうと1勝であることは変わらない」ということです。結論から述べると、パドレスのピタゴラス勝率からの乖離は「大差で勝利し、僅差で負けたこと」が原因として考えられます。今回はその「僅差での試合」に注目して、パドレスの不振の原因を分析していきます。

まずはパドレスの接戦時の成績を見てみます。Baseball Referenceの「1 Run(1点差試合における勝敗)」においてパドレスは9勝23敗、勝率.281。一方、ピタゴラス勝率を大幅に上回ったマイアミ・マーリンズは、1点差試合で33勝14敗、勝率.702と驚異的な強さを誇りました。

また「ExInn(延長戦における勝敗)」においても2勝12敗、勝率.143。目も当てられない数字が並びますが、意外にも地区優勝を果たしたアストロズは1勝8敗、勝率.111とパドレスを下回る勝率を記録しています。

しかし、パドレスやマーリンズといったLuckで大きなプラス・マイナスを記録したチームも、昨年と比較すると僅差のゲームでの結果は激しく変動していることがわかります。下の表は2023年Luck上位・下位3チームの昨年との比較です。

括弧内は前年比。

2022年のパドレスは1点差試合において30勝14敗、勝率.682(全体1位)。延長戦においても12勝5敗、勝率.706(全体2位)と僅差の試合において無類の強さを誇りました。また、Luckで大きな数値を記録したマーリンズは、昨年まで1点差試合、延長戦ともに勝率5割を下回るチームでした。

わずか1年間でこれほど差が開いてしまうことを考えると、やはり接戦時の結果は偶然による影響が大きいのでしょうか。

▼接戦時の結果は偶然なのか?

サンプルを増やして接戦時の勝率とシーズンの勝率を比較してみましょう。対象は短縮シーズンを除いた2018〜2023年の各球団の成績です。まずは単一シーズンにおける1点差試合と勝率の関係から。

若干の相関関係。

1点差試合と勝率の関係における相関係数は0.365。若干の相関こそ見られるものの、この結果をもって「強いチームは接戦でも強い傾向にある」と結論を出すのは早計です。

ほぼ相関なし。

こちらは延長戦時の勝率とシーズン勝率の関係を示しました。相関係数はわずか0.09。強豪アストロズが本来の力を発揮できなかったように、延長戦における結果にはほとんど実力が反映されないといっていいでしょう。また同様に、パドレスの極端な不振も運の影響が強いと考えられます。


□「僅差の局面」で重要な要素とは

▼重要な要素を分解して考える

1点差試合や延長戦による結果が運の影響によるものと仮定した場合、僅差時に大きな影響を及ぼす要素もまた偶然によるものと考えられます。

ピタゴラス勝率の解説ページには「それらを含めることはピタゴラス勝率の本質を損なう」と前置きした上で、乖離の原因に「ブルペンの貢献」「クラッチ能力(重要度の高い局面での活躍)」といった点を挙げています。これらの要素が運に左右されやすとしたら、僅差での結果はやはり偶然の影響が大きいと言えるかもしれません。

ここからは、上に挙げた各要素がどれだけ重要度や運の要素を占めているかを、過去の分析結果から検証していきます。

▼救援投手の影響力

強力な救援陣を備えていることはそのまま接戦の強さに繋がるでしょうか。「少ない点差を守り切る」というイメージからも一見筋の通った意見のように感じます。以下のリンクでは、短縮シーズンを除いた2017〜2022年の5年間を対象とし、救援防御率とLuckの関係を表しています。

圧倒的な救援防御率を誇ったドジャースがLuckにおいてマイナスを記録したことに始まり、救援防御率とLuckにはほとんど相関がないという結果が出ています。救援陣が僅差の試合を左右できることはほとんどないと言っていいでしょう。

また、僅差の試合というと「守り切る」という印象が強いですが「終盤に得点を重ねて僅差まで迫る試合」といった様々なケースが考えられ、すべての試合に救援陣の影響が及ぶとも言い切れません。

パドレス救援陣はrWAR全体22位fWAR全体19位。投手陣全体や野手と比較するとやや劣るものの、救援陣が及ぼす影響は他のポジションと比較してもわずかなものです。さらにそれが直接チームの勝利に繋がるわけではないことを考えると、救援陣の不振が大きな要因とは考えづらいです。

▼監督の采配能力

先ほどのリンクでは、Luckで「14」というピタゴラス勝率から大きく乖離した2021年のシアトル・マリナーズを例に挙げ「監督の采配が試合の終盤に影響を及ぼしている可能性がある」と言及しています。

以前からこの「監督の采配」の部分において、ピタゴラス勝率との乖離からその能力を定量的に評価しようという試みはありました。以下に関連するサイトを紹介します。

10年前の記事ではありますが、名称と呼ばれる歴代の監督におけるLuckを集計したものです。トム・ラソーダ監督の-33.1勝からブルース・ボウチー監督の+32.2勝まで、キャリア通算である程度の乖離が発生していることが分かります。

しかし、キャリア通算で+10.6勝を記録したトニー・ラルーサ監督の年度毎のLuckを見るとほとんど一貫性がないことが分かります。ある年は+6のLuckを記録しながら、翌年には−5まで悪化したりと、年度間相関はほとんど見られません。監督の采配が僅差の勝敗に直結するならば、毎年安定してプラスのLuckを記録できるものと考えられます。したがってこの部分の影響も偶然によるものが大きそうです。

また、記事の最後では「まずは良い選手を抱え、それらを育て上げ、役割をしっかり与えること(優れた選手を起用すること)が監督の仕事である」と締めくくっています。

こちらも「ピタゴラス勝率と監督の采配評価」をテーマにした記事です。上の記事と内容が重なるため詳細は省きますが「監督のLuckにおける年度間相関はほとんど見られない」といった内容の記事です。仮に適切な起用法が出来ていなかったとした場合、それらはまず得失点差に表れるものと思われます。そこからの乖離を「監督の采配能力」とすることはやはり難しいでしょう。

▼「Clutch」で見える勝負弱さ

もうひとつパドレスがワーストの数値を記録した指標を紹介します。つかみ男さんもご自身のnoteで触れていた「重要な局面での勝負強さ」に関連する「Clutch」という指標です。

日本語で解説されている1.02には「通常の局面に比べて、重要な局面で良い働きをしたかどうかを表す指標」と解説されています。重要な局面でwOBA.400を記録する強力な打者でも、通常の局面で同様の成績を記録した場合のClutchは「0.00」になるということです。

パドレスの野手は、この指標においてワーストの成績を記録しています。

野手Clutchワースト5球団。

この数字を見ると「重要な局面において、パドレスの野手陣は本来の力を発揮できなかった」と言えます。また、得点状況別の打撃成績も見てみましょう。

https://www.baseball-reference.com/teams/split.cgi?t=b&team=SDP&year=2023#all_clutc

tOPS+はチーム内でのOPS相対評価、sOPS+はリーグ内での相対評価です。2アウト時の得点圏打撃成績(RISP)や、つかみ男さんの記事内にもあった終盤の僅差における打撃成績(Late & Close)において著しく数字を落としています。ゲームに大きく影響する局面で決定打を放つことができていたら、勝率.281に終わった1点差試合をもう少しモノにしていたかもしれません。

ただ、この「クラッチ能力」も、セイバーメトリクスにおいては偶然性の高いものとして考えられています。参考までに、昨年のパドレスは2 outs RISPにおいてtOPS+116、sOPS+112と勝負強さを見せていました。

以下は、セイバーメトリシャンのトム・タンゴが「Clutch」について言及した記事です。

史上最高のClutchを記録したトニー・グウィンを例に「勝負強い打者は存在する」と前置きした上で「難しいのは、その選手を発見することだ」としています。

トニー・グウィンの年度別Clutchを確認すると、その数値に年度ごとの一貫性はほとんどありません。史上最高の勝負強さを誇った選手ですら、ある年はプラスで、ある年はマイナスのClutchを記録しているのです。

規定打席到達者が対象。

上の表は、パドレスの主力級野手といえる選手らの2023年とそれ以前のClutchです。以前からマイナスの数値を記録していた選手は比較的多いですが、トレント・グリシャムやザンダー・ボガーツといった大きなマイナスを記録した選手は昨年まで「チャンスに強い打者」でした。

少なくともパドレスの野手においては、どの選手が勝負強いかはまったく見分けがつきません。各選手の不運が同じシーズンに重なった結果、リーグワーストのClutchを記録したとも考えられます。


□結論

▼「運」か「実力」か

様々な角度からピタゴラス勝率と実際の勝率との乖離の原因を分析した結果、私の結論は「パドレスは不運であった可能性が極めて高い」とします。

ただ、完全な不運だったとは言い切れません。現にパドレスは僅差の試合に競り負けるケースが多く、勝率5割をわずかに上回る成績でシーズンを終えました。ファンや各関係者からの期待が選手へのプレッシャーとなり、重要な場面で本来の力を発揮できなかった可能性もあります。影響力の大きい要素を取り上げ、それらは過去のデータから「ランダム性の強いもの」であるとしましたが、今後数年間パドレスは僅差で勝負強さを発揮できないことも考えられます。

だから私は、つかみ男さんの「『おそらく』運が悪かったからだろう」という意見を強く支持します。完全な結論は出せません。過去の傾向から「おそらくこんなもんなんじゃないか」という結論を出せただけでも、今回の分析には意義があると思っています。

また、世界最大級の電子掲示板「Reddit」に興味深いスレッドがあったので紹介します。

https://www.reddit.com/r/baseball/comments/16xxw49/2023_mlb_standings_if_the_result_of_every_onerun/より引用。

内容は「2023年シーズンにおけるすべての1点差試合がひっくり返った場合の順位表」というものです。ここまでの内容の通り、もし1点差試合の結果がランダム性の大きいものだとしたら、パドレスがポストシーズン枠に入っていた可能性も十分に考えられました。

▼分析することの大切さ

野球は時に「説明がつかない」「数字では測れない」と評される事象や選手が誕生します。それらは野球という競技のランダム性、選手のコンディションといった様々な要素が重なった上で発生すると考えています。また、時にこのような意見はセイバーメトリクスをいう分析手法の批判材料として扱われることもあります。「やっぱりデータばかり見てる人は参考にならない、何の結論も出せないし、出しても的外れなものばかりじゃないか」。こういった意見を今でもよく目にします。

個人的なセイバーメトリクスの魅力は「様々な評価方法で、定量的に選手を評価できること」だと考えています。しかし、それと同様に「分からない部分を明確にすること」も同じくらい大切で、意義のあることだと思っています。私自身も「不運であった可能性が高い」といった結論を出しましたが「分からない部分は分からない」のです。野球ってそういう競技だよね、という部分がクリアになったことが重要だと思います。

改めて今回の分析を通じて「この競技、思ったより運要素が強いな…」と感じました。それを踏まえて「実力」と「運」がどの程度なのか、という点にも興味が湧きました。そういった点を定量化するのも今後の課題です。自分の好きな競技を「データでは語れない」で済ませたくないのです

稚拙な分析ではありましたが、今回の分析結果やその過程が多くの方に参考になれば、これほど嬉しいことはありません。


□補足

▼ファンの体感の答え合わせ

補足的な内容にはなりますが、インタビューにお答えいただいたファンの方々が「不振の原因」と考えた点についても簡単に調べてみましょう。

■右投手に苦労していたのでは?
→シーズン通してパドレスのwRC+は107(全体7位)。特に対左投手相手にwRC+123と滅法強かった一方で、対右投手はwRC+101。平均クラスの打撃は維持していますが、対左投手と比較するとやはり苦戦したシーズン。同じ水準かそれに迫るwRC+を記録できれば、今季のパドレス打線はさらに脅威になります。

■積極性が足りなかったのでは?

→前提としてパドレスのBB%10.8はリーグトップの数値であり、全体的に待球型の傾向がありました。1st Pitch Swing%は28.1%で全体25位。「得点圏の状況」かつ「Heart(甘いストライクゾーン)」に絞ってみると、1st Pitch Swing%は25.8%で全体14位。wOBA.444(パークファクターは考慮していません)は全体11位。チームとしては待球寄りの打撃スタイルではありますが、チャンスの場面においては平均レベルでスイングし、平均以上の結果を残していたと言えそうです。

■チーム内でのいざこざ

数値で表すことが難しく、かつどこまで影響のある要素かを考慮するのかが困難な部分な為簡単に紹介します。パドレス内には明確なリーダーが存在せず、その役目を担うべきマニー・マチャドも「性格的に気まぐれすぎる」と評されています。「クラブの雰囲気が悪かった為、成績が伴わなかった」のか、はたまたそれの逆なのかの判断が難しい問題ではあります。

▼その他の参考文献


※ヘッダー画像はhttps://fox5sandiego.com/sports/padres/padres-fans-reach-new-high-after-breaking-record-for-sellout-games/を引用。
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