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「変えられないものは『自分の武器』として活かせ」 新社会人に贈る、働くヒントをくれる本5選 (前編)

新年度が始まり早くも1ヶ月が経とうとしています。オフィス街へ行くと、ピシッとしたスーツに身を包み、緊張した面持ちで歩く新社会人とすれ違う機会も多いです。

今年の新社会人たちはストレートで4年生大学を卒業していた場合、大学生活の大半を新型コロナウイルス禍で過ごしたいわゆる「コロナ世代」といわれる人たちです。入学早々、完全リモートの授業で、サークル活動なども自粛がつづく。やっと世の中が正常化し普通の学生生活を送れるようになった頃には、就職活動が本格化していたといいます。就活時に企業に求められる「学チカ」を作る機会すらなく、苦労した学生が多かったと当時はよく耳にしましたよね。

最近とある記事で、「コロナ世代の新社会人は上司や同僚とのコミュニケーションに苦手意識を感じる」と書いてあったのに少し関心を持ちました。確かにコロナ禍では授業は基本リモート。教授や先輩などと直接話す機会は少なかったため、そんな傾向を持っていても不思議ではありません。

実際に今年入社した世代に軽いアンケートを取ってみると、コミュニケーションのほか「研修で全出社しなければいけないことが辛い」「コロナ禍の学生生活で飲み会が少なかったので、新入社員になって同僚との飲み会ラッシュがきつい」など、コロナ世代ならではの悩みがちらほらありました。

一方で、「上司から『コロナ世代』と一括りにされて悔しい」といった声も。思い返せば、コロナ世代でなかった約10年前の新社会人・奥井も職場でのコミュニケーションや週5日間フルタイムで働くこと、連日の飲み会など全部キツかった!私たちが新社会人を「コロナ世代」と一言で片付けていること自体が、彼らのストレスにさらに拍車をかけているのかもしれませんね。

私がとあるアパレル企業に新卒入社したてのときは不安でいっぱいで、仕事が辛くてたまりませんでした。今でこそキャスター、MC、モデルなどさまざまな仕事を経験し、自分なりにキャリアを築いてきたつもりではありますが、自分の社会人人生を振り返り、一番しんどかった時期は新人時代だったかもしれません。

私は仕事で行き詰まると、よく「本」を読みます。書籍の中から今の自分を打破するヒントを得ているのです。アパレル時代は、休憩時間が来ると毎回、テナントの本屋に駆け込み、気になった本を読みあさってました。同僚とお昼と共にしたことは数えるくらいしかありませんでしたが、この時の私は、本からのヒントの方が必要だったのかもしれません。そこでそこで今回は、「新社会人の自分に読んでもらいたかった本」を5冊ピックアップしてみました。

社会に出て数週間が経ち、だんだんと悩みや不安を抱き始める時期だと思います。ここ数年でたくさん苦労をしてきた今年の新社会人だからこそ、少しでも晴れやかな気持ちで仕事に望んで欲しい。この記事がその一助になれたら嬉しいです。

  1. 話す力 心をつかむ44のヒント 阿川佐和子

累計1701万部を超え、新年度になると必ず書店で見かけるベストセラー「聞く力 心をひらく35のヒント」シリーズの一冊。著者・阿川佐和子さんが自身の報道キャスター、インタビュアーの経験を生かし、初対面の人とのコミュニケーション術を分かりやすく紹介しています。

機嫌よく、にこやかに挨拶をしよう。それだけで、たいした話題が浮かんでこなくても、コイツとお喋りをしたいという気持ちが湧いてくると思うのです。

(117ページ)

自分がバリバリ活躍する姿を思い描き入社したはずが、雑用すらろくにこなすことができない。大半の新社会人はそんな「理想と現実のギャップ」に直面し、挫折を味わうのだろうと思います。

あえて誤解を恐れずいいますが、新社会人が最初からできることなど、たかが知れています。だって、つい数日前まで学生だったのだから。何十年も働いているビジネスパーソン たちと最初から対等に渡り合う人などほとんどいないのです。

では新社会人ができることは何か?私は阿川さんのいう通り、「ニコニコと笑顔で、話しかけやすい雰囲気を作り出す」ことができれば、それで十分だと思うのです。

いつも笑顔でいれば自然と周りに人が集まってきます。話しかけやすい人であれば
上司も仕事を頼みやすい。頼まれる仕事の数=球数が多ければ、成果を上げるヒットの打率もグンと上がるはずです。

他にも、「オジサン上司の心をつかむには」と少しびっくりするサブタイトルで書き出している章があります。ここだけ読むと「ごまをする、迎合する」などの印象を抱きがちですが、そうではありません。阿川さんは「褒める」ことが人の心つかむヒントとなるといいます。

何でもいいから褒める。(中略)いくつになっても、どんな地位に就こうとも「どうだったかな、自分の仕事ぶりは」と密かにドキドキしている。

(134ページ)

職場の先輩や上司がバリバリ仕事をこなしている姿を見て圧倒されている人も多いはず。そんな彼らを、社会人一年目の自分が「褒める」なんておこがましい。そう感じるでしょうが、とんでもない!

社会人歴が長くなり仕事の責任が重くなるにつれ、自分の成果物(アウトプット)に対する不安はどんどん大きくなるものです。立場が上になればなるほど、周囲に自分の仕事ぶりを評価してくれる人は少なくなる。そんな中で、新入社員に素直に褒めてもらえたら、どれだけ心強いことか!

私の例で恐縮ですが、NewsPicksのキャスターをしていた時は、番組のゲストをパッと見た際に気付いたファッションの「こだわりポイント」を褒めて、そこから話を広げていくことを意識していました。例えば革バッグではなくリュックでスタジオに来たゲストには「スポーティーで素敵です、運動はお好きなんですか?」といった具合です。こだわりポイントは他にも、ネイル、名刺ケース、メガネなどに表れている場合が多いです。

また、ゲストが本を出版している場合は、できるだけその著書を読んでから収録に望むようにしていました。本は著者が並々ならぬ努力をして生み出した成果物なので、「こだわりポイント」が詰め込まれているに違いないからです。

読んで自分が感動したり勉強になったりした箇所があれば、必ず本人に伝え、褒める。これを実施して嫌がられたことは一度もありません。本の執筆に限らずどんな仕事であれ、本人が情熱を注いで築き上げたものであればあるほど、褒められたときに嬉しく感じるはずです。

相手を観察し、褒めるポイントを的確に捉える。この「観察力」や「気づく力」は仕事にも必ずいい影響をもたらします。社会や経済の動きを観察し、ものごとの本質に気づくスキル磨きを人を褒めることでできるなんて、一石二鳥じゃないですか?

2.対峙力 誰にでも堂々と振る舞えるコミュニケーション術 寺田有希

著者の寺田有希さんは俳優として活動していた最中、実業家・堀江貴文氏のYouTubeチャンネル「ホリエモンチャンネル」のMCに抜擢されました。一方、寺田さん本人は司会の経験はありませんし、そもそも根は人見知りで小心者な性格。そんな彼女が数々の著名人と「対峙」したことを通じて学んだスキルをこの本では紹介してくれています。

変えられないものは「自分の武器」として活かした方がいいんです。

(146ページ)

寺田さんは以前、「身長が低いことで演じられる役の幅が狭い」「アナウンサーの経験がないことでうまくMCができない」など自身の特徴や経験をコンプレックスとして捉えていました。しかし、こうしたコンプレックスは自分の力だけではそう簡単には変えられない。ならば逆に武器にして活かしてしまおう、と考え方を変えてみたといいます。

私もNewsPicksのキャスターを始めたばかりの頃は地声が低く、朝の情報番組に出ている女性アナウンサーのような高くて美しい声を出せないことがコンプレックスで、わざと裏声で話していました(笑)。

しかし、自分に合わない発声方法をしていると、不思議と言葉も重みと力を失い視聴者に伝えたいことが伝わらない。これでは本末転倒だと悩んでいたときに、テレビでフリーアナウンサーの有働由美子さんの一言が心に刺さりました。「自分の低い声を活かして、落ち着いた調子でニュースを読むことで視聴者に信用してもらえるようにしている」。私の低い声も、経済ニュースを読む上で強みになるかもしれない、そう思えるようになりました。

そこから取り繕うことなくありのままの声で一言一句力を込めて読むようにすると、自然と自分が発する言葉全てに納得感を持って伝えられるようになりました。嬉しいことに視聴者から「声のファンです」といわれることも増えました。

自分ではコンプレックスと後ろ向きに捉えていたことも、他人から見たら唯一無二の強みである可能性は大いにあります。コンプレックスは言ってしまえば人との違い。だからこそその違いを磨いて、武器にしていけばいいのです。

と言われても、自分がネガティブに感じている特徴をポジティブに捉え直すのは、一人では難しいですよね。私は周りの人たちとのコミュニケーションを通じて、自分では気づけなかった長所を教えてもらうことが多かったような気がします。新社会人になり、周囲の人々が一新された今をチャンスと捉え、どんどん対話を通じ新しい自分探しをしてみてもいいかもしれません。

また、今置かれている環境では生かせない個性が、環境を変えることで花開くこともあります。私自身も新卒で入社したアパレル企業を2年弱で辞め、個人の武器に重きを置いたからこそ今のキャリアがあります。「置かれた場所で咲きなさいや」「石の上にも三年」などはよくいわれたものですが、私はもう古い考えだと思っています。自分が一番のびのびと個性を発揮できる職場が一番いいに決まってます。
(後編に続く)

構成:大竹初奈

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