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“Casually Days”

こんにちは、Tetsu.Iです。
今回は最初に作ったフォトブック「Casually Days」について。
2冊目のOrdinary〜も無事制作から頒布まで一通り終えたので、前回から少し掘り下げたいと思います。
(かなり長くなりますので時間のある時に読んでくださいね)


“Casually Days”をまとめるに至った背景

もともとこの趣味を続けて7〜8年、どこかで自身の写真について纏めたポートフォリオが欲しいと思っていました。
ただここ2年は事業で立ち上げに参画し、ろくにプライベートも送れないような忙しい状態になっていたため、やりたいと思ったことはなかなか取り掛かるきっかけもなく、私の精神状態はかなり悪い状態でした。
仕事も一向に片付く気配はなく、むしろどんどん新しい仕事が増えていく始末...このままでは、もう創作活動はできなくなるのではないか?そんな危機感が私を襲いました。
そんな閉塞した状態が続いた2019年9月ごろ、ちょうど年末年始に向けての大きな仕事が2つやってきて、私の精神状態はおかしくなり、とうとう吹っ切れました。

それからは、必要に迫られた仕事以外は距離を置き、休日にはひたすら「楽しい」と思えることを無理やり強引にこなしました。
ドールの着せ替えと屋外撮影、気になったスイーツを食べに出かけ、癒しの音楽を浴びせ、人とのバカみたいな戯れに興じました。

先のことなんかどうでもいい、ただ今を楽しく生きたい。
些細な幸せを積み重ねることで、捻じ曲がった自意識を再構築したい。

そんな時に撮った写真が複数種類作られました。
幸い11月ごろにはその行為が奏功してか私の精神状態は回復を続けており、その勢いのままにフォトブックを纏めたのが“Casually Days”です。

つまり、当時の私の精神状態を反映させ、形にしたものがたまたまドールを題材にしたフォトブックであった。ただそれだけの話。



Casually Daysのコンセプト

こういう背景の元に生まれたものなので、「基本は閉塞感を伴うダークな世界線のもと、理不尽さ・傲慢さ・圧迫感からもたらされる苦しみや逃避のような感情表現と合わせて、エッセンスとしてかすかな希望を持たせたもの」が今回のコンセプトになります。
ただ、このフォトブック上ではモデルたちに救いはありません。
今ある状況に苦しみ、もがき、でももしこの状況を打破できたら...というところで止まっていますので、ここから先はご想像にお任せしますよ、と。

ではなぜ“Casually Days”という題名なのか?
それは、あくまで「カジュアルな衣を纏っているドールを題材にした、日常の写真を集めたもの」だからです。上記のコンセプトを前面に出して厨二的な題名にしても良かったのですが、他人に見せることを少なからず意識して制作したものなので、気軽に見せられない題名にするのは少し気が引けました...。


撮影環境

お持ちの方は書いてあるのでご存知かと思いますが、基本はFujifilmのミラーレス「X-T1」に「XF35mm f1.4 R」で撮影したものになります。
一部「XF27mm f2.8」で撮ったものもありますが、ほとんどが35mmです。
この時はちょうどこのレンズで写る世界がとても気に入っており、どこにいくにもこの組み合わせを持って行きました。
さすが、神レンズと呼ばれるだけはある...。
背景ですが、ほぼ家から近い屋外で撮影しております。一部自室内もあります。ライティングは行っていません。全て自然光。昼間の屋外なので必然的に光を読んでモデルに反映させないといけないのですが、よほど意地悪な光とかコントラスト激高な環境でなければだいたいはLrのスライダ調整でなんとかなります。
かつ、こういうコンセプトのため、多くは曇りの日に撮影していますのでそんなに小難しく考えなくてもだいたい均一に光は回ります。辛いのは全体的に光量が不足気味であり、高感度撮影もしくは絞り開放気味になりがちという点ですかね。


作品解説1

近くの歩道橋階段で撮影しています。
時期は秋、10月の中頃。モデルは06/DD。確か一体型ボディ装備。
衣装自体は一応晩夏くらいの想定です。この時期になると陽の角度もキツく無くなってくるので、日中でもまだまともなコントラストで撮影ができます。
この撮影で久々に順光の撮影をしましたが、ライティングもしていないため、顔に影が落ちまくっています。普通のドールオーナーさんなら4枚目なんか確実にボツになるはず。

「荒れた街中で自身も荒み、悶々とした想いを抱えつつも眼光は鋭く狼のよう」

Twitterでは4枚の組み写真が投稿可能なので4枚でまとめましたが、少しだけ未来を向かせるために、補足として以下の写真を作りました。

一連のツイートのボツです。没後の空と組み合わせ、過去これまでとの決別を示唆させています。


作品解説2

名古屋市有数となる某有名観光地の横、Maker’s Pier内で撮影しています。
時期は夏真っ盛りの9月初頭。モデルは09/DDS。
秋風が吹く爽やかな絵面を醸していますが、4枚のうち2枚で影を主役とし、内側で揺れる感情を表現しています。

「こんなことをしていて、何になるのかな...?」

2枚目の壁画と影、見る人によって凄く評価が分かれそうで...かなり気に入っています。


作品解説3

これがTwitterでは一番評価が高かったですね。
特に3枚目...女性の髪がたなびく様子はやはり美しいと感じます。
撮影は9月末。モデルは2と同じく09/DDS。晴れだか曇りだかの微妙な天気。

「自分1人で立っているけれど、本当はそばに居てほしい、気づいてほしい」

という気持ちをモデルに込め、4枚で表現しました。
結構ストレートに表現できたような気がします。


作品解説4

これは今までのものと異なり、ただ単純に秋のお姉さんコーデがうまく行ったので作品群に入れたものになります。つまり、箸休め的なお姉さんです。なので解説もクソもありません。なのにいいねは多いという...。
強いていえば1枚目、暗闇の中で向こうに光が見える感じ...くらいですね。
撮影は10月上旬。1の撮影場所とほぼ同じ。モデルは07/DD一体型。
画像劣化されて投稿されたのであまりリンクを貼りたくなかったのですが...


作品解説5

私の得意分野、雨にまつわる写真群です。
後で紹介するツイートの後ろにくるお話です。
こちらも歩道橋、主に踊り場を使って撮影しています。
撮影は10月下旬。モデルは06/DDS。文字通りの雨上がり。

「この雨が過ぎたら、きっと、晴れるから」

この4枚が一番未来を向いている気がします。特に最後。
時間が経てば心の傷は癒える、時が解決してくれる、とはよく言ったものです。
じっと辛抱し、時を待つ。それが最も良い方法であることもままあることだとは、なかなか実感できませんでした。


作品解説6

先の5と連続しています。時系列はこちらの方が先になります。
5は先を見ていましたが、この6は負の感情をダイレクトに入れています。
撮影情報は5と全く同じ。唯一1枚目のみ多重露光を用いています。

「報われず途方に暮れ、たまらず天を仰ぎ、祈りを捧げる」

1〜3枚目で己の内面にある負の感情を表現、4枚目で助けを求める構図です。
1枚目は多重露光で濡れた葉を加えて、2枚目はあえて傘を手から外し、3枚目は自転車越しに撮影することで、それぞれ内面の不安定さ・憂鬱さを表しています。
まぁ正直いうと2枚目は本当に外れていたのですが、ドールさんは笑顔なのに傘を落としかけているところに感情表現が見えたため、あえてそのまま流す暴挙に出ました。ものは言いよう。


作品解説7

こちらは今までの作品と違い、力強いイメージで現状を打破しようとする意思をテーマにしています。
撮影場所はまたしても歩道橋階段。しかも1と4、5とも違う3つ目の歩道橋です。どんだけ歩道橋好きなん私。時期は11月初頭。モデルはセラムンヘッド/DDS。
ちょっとレトロ感ある可愛い系のヘッドでどれだけかっこいい写真が撮れるかが副次的なテーマ。

「手を拱いていても仕方がない、やれることだけでもやるしかない」

イメージは路上パフォーマー。悩みはあってもそれを音楽というはけ口にぶつけることで発散し、平静を保つ。2枚目の手の形で影を作ることで瞳を強調し、ブレない姿勢を表現しました。
ちなみに、私はあさっての方向を向かせるのが結構好き(つまり真正面からジッと見られるのが苦手)で、ドールさんは大体視線が真っ正面を向いていません。この作品群では冒頭の力強いイメージを出すためにあえて真っ正面を向かせています。そのためかめちゃくちゃ撮りづらく、かなりボツ写真が多くなりました...コーデは簡単だったのに。


作品解説8

努力と挫折がテーマです。全体的に赤色を配し、血流というか、血を流して感情にじわじわ蝕まれていく感じを表現しました。
撮影は10月末。モデルは09/DDS。曇り。人気のないコンテナ埠頭での撮影です。

「何がいけなかったの? どうして?」

3枚目のコンテナの傷を発見したときはちょっとだけ小躍りしました。羽っぽくありません?これで羽ばたける!かと思いきや...という流れができたので結構満足できました。2枚目のような顔を見せずに写す手法は好きです。色々と想像力を掻き立ててくれるので。


作品解説9

顔以外のパーツを主に写すことで、想像力を働かせる。
それを3枚+1枚で組み合わせてみました。
ほぼ自室内での撮影です。撮影時期はバラバラ。春〜夏まで。モデルもバラバラ。唯一顔出ししてるのが07。
この作品群では“特定の誰か”を相手取り、自身の揺れる内面を発信させています。造花は感情のありか。2枚目を見ればわかるかと思いますが、想定は1枚目のような男性、つまり異性です。4枚目でどう感じるかは人それぞれ。


作品解説10

このフォトブックの隠れたキーワード、造花とドールです。
造花も、ドールも、「生物と違い誰かに造られた本質的に変化をなさないもの」。年を経るごとにそれなりの劣化はしますが、基本的には10年後もそのままの姿で残ります。人間とは違い、造られたままの美しさを保つことは容易なのです。
人間は変化しながら生きていくもの。ドールのような美しいものを見ていると、時にはその不変の様が、羨ましく思うことがあるのです。

このフォトブックのキービジュアルは作る前から決めていました。
不変の美しさを保つ彼女らに、一抹の望みを託して。


いかがでしたでしょうか。
いつの頃からか、ドールを撮る際はこんな小難しいことをなんとなく浮かべながらやるようになってしまったので、昔の単純に「うちのこかわいい」だけで撮ってた私はどこへ行ってしまったのか...。
ドールに関して言えばかなりドライ傾向な私ですが、ことドール写真に関しては結構ウェットな人なのかもしれませんね。
長くなりましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
では、また。
                                   Tetsu.I

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