見出し画像

友からの教訓

その日は、この夏一番の暑さだった。
男は大事なお客様との接待で、ゴルフの真っ最中だ。
ゴルフ場には日陰など殆ど無い。
吹き出す汗を拭いながら、コースを歩いていた。
男とは、私の友人である。仮に名前をヨシオにしよう。

「ナイスショット!」
ヨシオは大声で讃えた。
今回のメンバーは、四人のうち三人が得意先である。
つまりヨシオは、メンバー全てに気を使わねばならなかった。


「いやぁ、さすがです!よく飛びますね〜!」
「今のパット入れちゃいますか!僕なら絶対にスライスだと思って失敗してますよ〜!」

よしよし。みんな褒められて上機嫌だ。
とにかく今日は和気藹々。機嫌よく帰ってもらわなければ。


実際、ヨシオはムード作りがうまかった。
仲間で集まる時もヨシオがムードメーカーとなり、場を盛り上げていた。だからこそ会社でもその才能を買われ、営業職についたのだろう。


それにしても暑い。
ゴルフをしながら大声で得意先を褒めまくっていたヨシオは、人一倍疲れた。ましてやこの暑さだ。まだ半分もまわっていないのに、もうフラフラだった。


その時だ。
ヨシオの目に、オアシスが見えた!


「皆さん!売店ですよー!僕、ビール買ってきます!」
ヨシオは一目散に売店へと向かった。
「缶ビール四本!」
代金を支払い、ヨシオは大急ぎでみんなの元へ戻った。メンバーそれぞれにビールを手渡す。ヨシオは夢中でプルトップを開けた。


「プシュッ!!!」
ヨシオは口から迎えに行くように缶ビールに口をつけ、そのまま一気に飲んだ。
ゴクゴクゴクゴク。


「クゥーッッッ!」


あまりの旨さに、思わず声が出る。


「いやぁ、たまらん!やっぱりビールは〇〇に限る!」


3秒ほどして、ヨシオは重大なミスにきづいた。
しまった!
今日は、△△ビールとの接待ゴルフだった!


おぉぉぉぉ。
ヨシオよ、オマエに悪気がなかったことは、私にもよぉくわかるぞ。
人間、誰しも失敗はあるさ。
しかしだ。そんなことを得意先の皆様が許してくれるはずも無かろう。
結局、ヨシオはこの一件で△△ビールの担当を外されてしまった。


あの時、ヨシオはどうやってフォローしていれば許されたのだろうか?
あなたなら、この地獄の状況をどうやってごまかす?
私なら、

「いやぁ、たまらん!やっぱりビールは〇〇に限る!」
『・・・って、近所のオッサンが言うてました。』
か、、、?


あかん!無理がある。
ヨシオ。やっぱりここまでの失言は、フォローの仕様が無いぞ。


てなわけで、友から得た教訓。
『口は災いの元』のお話でした(笑)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?