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BEST FRIEND

小学校六年生の時、入院をした。
原因不明の腰痛が続いたため、検査入院をすることになった。
しかし本当のところは、仮病だ。
親には本当に申し訳ないことをしたが、入院したいほど学校へ行くのが嫌だった。酷いイジメがあったからである。


私がいたクラスでは、女子が二つに別れていた。私のグループは十人だったが、ボスザルが一人いて、いつも誰かをイジメるように指示を出していた。つまりボスザル以外のメンバーが順繰りにイジメに合うのである。
イジメの内容は、『全員で無視』『暴言を吐く』など、色々あった。


私はイジメるのも、イジメられるのも、辛かった。きっと他のメンバーも同じだったと思う。しかしそれを口にすれば、たちまちボスザルからターゲットにされる。結局のところ、怖くて誰も歯向かえなかったのだ。


そんな過酷な状況下、一人だけ本当のことを話し合える親友がいた。『なみこ』だ。
私たちは学校から帰宅すると、しょっちゅう電話で話した。

「グループ抜けたいなぁ。」
「どうやったら、ええんやろ?」

なんとか今の状況から抜け出したいと思いつつも、勇気が出ないばかりに、いつも会話は堂々巡りだった。


結局何も変わらないまま暗黒の小六時代が終わり、私たちは中学へと進学した。
環境の変化は、ボスザル政権にも変化をもたらした。メンバーそれぞれが新しい友達を作り、絶対的だったボスザルの権力が揺らぎ始めたのだ。


今しかない!
なみこと私はボスザルを呼び出し、グループ脱退を伝えた。


「は?何言ってるの?」


こ、こわい。。。
キレるボスザルに、思わず二人ともビビってしまった。
いや、ダメだ!ここで尻込みしては、元の木阿弥。私たちは勇気を振り絞った。


「もうイヤやねん。嫌なことさせられたり、命令されたり、無視されたり、もう懲り懲りや!グループ抜けるしな!」


私たちは、思いをぶちまけた。
恐怖と興奮で、体が震えた。
ボスザルは、物凄い形相で話を聞いている。


「ごめんなさいーっ!」


突如、叫び声とともにボスザルが視界から消えた。
なんと、土下座をしていたのだ。顔をぐちゃぐちゃにして、号泣している。
今になって思えば、ボスザルも苦しかったのかもしれない。
一人で虚勢を張り続けることも、人をイジメることも、辛いことだ。


私たちは、泣き崩れているボスザルに歩み寄った。
そしてボスザルに手を差し伸べ、仲直りをした。


私は、新しい風が吹くのを感じた。
もう自由なんだ!
イジメることもイジメられることも無い。


なんだ。こんな簡単なことだったのか。
勇気が出なくて時間がかかってしまったけど、思い切って行動してみれば大したことではなかった。
これからは、ウジウジ悩んでいるよりも思い切って行動しよう!
勇気を出すことの大切さを学んだ出来事であった。


あれから30年。
きみまろ風に、もう一度。
あれから30年!


盟友なみこは20代で結婚をし、4人の可愛い子供に恵まれ、広島の老舗料理旅館で若女将として奮闘している。
広島と東京。なかなか会う機会が無いが、ひょんなことから美人塾をなみこの旅館で開催してみようという話が持ち上がった。
「出張!六車奈々の『食べる美人塾』@玉乃家」である。


昨年、初めての出張美人塾を開催した。
私は玉乃家さんに前泊し、美味しいフグ料理に舌鼓。
そしてもちろん、二人で飲みに出かけた。


小学校の親友と、初めて酌み交わすお酒。
少し気恥ずかしくもあり、そしてたまらなく感慨深いものがあった。
あっという間に酒は空になり、お互いに注ぎ合う。閉店時間になっても話は尽きなかった。


あの時、震えながらも手を取り合って、ボスザルに立ち向かった二人。
その二人のタッグで、翌日の出張美人塾は大盛況だった。
そして今年も沢山の方に楽しんで頂き、来年の開催も決まっている。


友達ってのは、歳を重ねるほどにいいもんだ。
来年の出張美人塾が、今から楽しみである。


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