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名言抽出 -『FFT 獅子戦争』-


※この note には、ゲーム「ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争」に関するネタバレを多分に含んでいます。ご承知おきの上読み進めてください。

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五十年戦争が終わり、イヴァリースの土地は荒廃し治安は極度に乱れていた。そんな中、貴族であり士官候補生でもあった主人公ラムザは、騎士団の命令に従い辺境に現れた盗賊を殲滅する。

「盗賊などという愚かな行為を何故、続けるんだ…?真面目に働いていれば、こんな風に命を失うこともないだろうに…。」


( 貴族の子供として何不自由なく育ったラムザは、盗賊という存在が理解できない。 この価値観は、ラムザが旅をするに連れて変化していく。)

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女性にして盗賊団の幹部である剣士ミルウーダは、盗賊討伐の命を帯びた騎士団の貴族アルガスに追い詰められる。貧困の中で足掻いてきたミルウーダは、アルガスに社会の不条理を訴える。

「貴族がなんだというんだ! 私たちは貴族の家畜じゃない!私たちは人間だわ! 貴方たちと同じ人間よッ!...
ひもじい思いをしたことがある? 数ヶ月間も豆だけのスープで暮らしたことがあるの?なぜ私たちが飢えなければならない? それは貴方たち貴族が奪うからだ! 生きる権利のすべてを奪うからだッ!」

「同じ人間だと? フン、汚らわしいッ!生まれた瞬間からおまえたちはオレたち貴族に尽くさねばならない!生まれた瞬間からおまえたちはオレたち貴族の家畜なんだッ!!」

「誰が決めたッ!? そんな理不尽なこと、誰が決めたッ!」

「それは天の意志だ!」

「天の意志? 神がそのようなことを宣うものか!神の前では何人たりとも平等のはず! 神はそのようなことをお許しにはならない! なるはずがないッ!」

「家畜に神はいないッ!!」

「!!!!」


( 本作屈指の名シーン。剣士ミルウーダは貴族政治の在り方に間違いを感じ、盗賊に身を落としてまでも社会を変えようと戦っている。そんな彼女を、貴族であるアルガスは「家畜」 であると断言する。「神」は貴族のために存在し、「家畜」のために存在するものではないと言い切る。アルガスの在り方は、彼の性格の悪さという言葉で切り取るのは相応しくない。それは彼の「価値観」なのであり、ひいては貴族の「価値観」なのだ。)

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ラムザの親友ディリータは、平民だった。アルガスは同じ貴族であるラムザを友人として扱うが、ディリータに対しては蔑みを態度を取る。そんな中、ディリータの妹ティータが誘拐され、ディリータはいよいよ己の無力を痛感する。

「努力すれば将軍になれる?この手でティータを助けたいのに何もできやしない…。僕は“持たざる者”なんだ…。」


( 貴族で無ければ何も出来ない。貴族でなければ皆、「持たざる者」なのだ。 )

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時は流れ、ラムザは貴族の身分を捨て傭兵になっていた。王女オヴェリア護衛の任務を遂行していたとき、行方不明になっていたディリータが現れ、オヴェリアを誘拐してしまう。自らを誘拐する男の正体がわからないオヴェリアは、ディリータに問いかける。

「貴方は何者なの? 味方、それとも敵?」

「あなたと同じ人間さ!」


( ディリータの言葉は、盗賊として死を迎えたミルウーダの言葉を引いている。貴族に対して「貴方は私と同じ人間だ」と言い放ったミルウーダ。今王女に対して同じ言葉を向けるディリータは、彼女を貴族ではなく、一人の人間として扱おうとしている。 )

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上級傭兵であったガフガリオンが不正を働く貴族の命令で動くことを知り、ラムザは傭兵であることを辞める。ガフガリオンの行為を「悪事」と罵るラムザに対し、ガフガリオンは怒りを向ける。

「“悪事”というのか!? おまえは“悪事”というのかッ!!おまえはベオルブ家の人間だ! ベオルブ家の人間には果たさねばならン責任がある!その責務を、おまえは“悪事”というのかッ!! この愚か者めッ!!」


( ただ金銭のために傭兵をしていると思われたガフガリオンだったが、彼は自分の考えを持っている。貴族により腐敗した社会だったが、その腐敗を正すのはまた貴族でなければならない。そう思えばこそ、貴族としての責務を放棄し続けるラムザを許すことが出来ない。 )

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戦士ウィーグラフは以前は盗賊として社会を正そうとしていたが、今は悪事を働く教会の手先となり、ついには人ならざる者に身を落とした。ラムザは高潔な意思を失ったウィーグラフを悲しむが、ウィーグラフはそんなラムザを罵る。

「ならば、おまえは違うとでも言うのか? おまえは独りで生きているとでも?“持たざる者”の気持ちなどおまえにわかろうはずもない!たとえ理屈でわかっていたとしてもおまえにはその実感がない! それがおまえの限界だ!」


( もはや貴族の身分は捨てていても、ラムザには一生「貴族であった」という事実が付きまとう。たった一つのその事実は、いつまでも埋めることのできない、"持たざる者" との隔たりとなる。 )

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ウィーグラフとラムザは再び剣を交える。剣戟の最中、二人は人間の弱さについて問答する。

「“神”なんぞ、人間のもっとも弱い心が生み出したただの虚像にすぎん…。それに気付いていながら その“ぬるま湯”に甘んじている奴らがいけないのだよ…。」

「人間としてのその弱い心を克服せずに聖石の奇跡に頼る貴様は何なんだ?」

「弱い人間だからこそ“神の奇跡”にすがるのさ…。おまえこそ、自分が本当に強い人間と自信を持って言い切れるのか?」

「努力はしている!」


( 「努力はしている」。この言葉の響きは、それ単体では強い説得力を持たない。けれどもラムザは、不自由ない貴族の生活を捨て、それどころか貴族と戦い、一時は傭兵として身を寄せた騎士団をも敵に回し、教会からは異端として追われて、なお孤独に自らの理想を追い求める。この「努力」は他者に伝えられるものではなく、理解されるものでもない。ここに至ってラムザは、間違いなく「強い人間」である。 )

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ラムザの兄であるダイスダーグは貴族として、あらゆる手段を用いて社会を統一しようとしていた。そんな兄に対し、ラムザは刃を突きつける。


「愚か者どもめ! 何故、私に従わん! 何故、私に逆らうのだ!力を持つ者が持たざる者を支配するのは当たり前! それは持つ者の責任なのだ!!」


( ダイスダーグは "持つ者" であるという自覚を持って、己の責任を果たそうとする。けれどもダイスダーグは、その理想の過程で "持たざる者" が虐げられることを厭わない。それが、ラムザには許されない。 )

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暗躍する悪を打ち倒したラムザは歴史の表舞台から姿を消し、貴族を裏から操っていたディリータが英雄として新たな王座につき、王女オヴェリアと結婚した。
オヴェリアの誕生日、オヴェリアに花を贈ろうとしたディリータに対しオヴェリアはナイフを突き立てる。オヴェリアは、ディリータに利用されたことが許せなかったのだ。ディリータは自らに突き立てられたナイフを抜き、返す刃でオヴェリアを突き返す。
贈った花束の上に伏すオヴェリアを見つめ、ディリータは今は傍にいない友のことを思い出す。

「…ラムザ おまえは何を手に入れた?オレは……」


( ディリータは貴族政治を打ち破るため、貴族のように謀略を巡らし、その理想を果たした。そんな中、利用するコマに過ぎなかったオヴェリアを愛してしまい、彼女を利用しながらも、生涯守り抜くことを誓う。ディリータの理想は叶った。けれども理想の世界に降り注ぐ陽を受けるには、ディリータの手はあまりに汚れ過ぎてしまっていた。ディリータはオヴェリアを愛した。けれどもオヴェリアは、最後までディリータを信じ抜くことができなかったのだ。
けれども手段を選ばず王に上り詰めたディリータは今、手段を選び名を残さなかったかつての親友を思う。二人が手に入れたものの差は、いったい何だろうか。)

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