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象との邂逅、とある部屋にて [ jizue "ROOM" ]

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 この記事は音楽と言葉を結びつけようとするものです。
 テーマとしている音楽をまだお聴きでなければ、ぜひお聴きになってみてください。そしてまた本記事を読んでいただければ、嬉しいです。     
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elephant in the room

 泰山鳴動して鼠一匹、という言葉がある。騒ぎばかりが大きく、結果が些細なものに終わるということわざだ。

 elephant in the room. 通底するは、まさに象が闊歩するかのような音であり、一つの山が音楽を紡いでいるかのよう。

 その印象から、泰山鳴動の句を思い出したわけだが、けれどもこの騒ぎにより出てくるのは鼠一匹どころではない。

 象と共に踊るは、虎。共に歌うは、鳥。共に走るは、雷。

 重低音はそこに在るが、決して独りでない。そこには常に、軽妙な音の流れが伴われている。

 けれども其れは象の背中に乗るだけのものではなく、時として象に先行し、彼を導く。

 山どころか天地の鳴動をも思わせながら、音の一粒一粒は僕らを置き去りにしない。どこらか僕らを中心に音を奏でるかのような親近感さえ覚える。

 きっとそれは、この宴が一つの部屋、Roomで起きていることである証左なのだろう。


 Carnival in a room.
 間違いなく、とんでもない大きさの部屋だ。


Grass

 重ねられる軽快で爽やかな音楽は、過ぎ行く日常か。

 その中に差し込まれる哀感の音は、「日常」とは「何もない日々」ではないことを僕らに思い出させる。

 何気ない過去の日、別れの悲しさ、単調な毎日、生きる辛さ、それらが堆積したものが「日常」となるのだと気づかせてくれる。

 けれども「日常」とは過去だけを示すことばではない。

 何度か訪れるリズムの転回は、昨日と異なる明日の到来を予感させる。
 「日常」は時として、「非日常」へとその姿を変える。

 それはいずれ日常へと回帰するかもしれない。

 けれども毛色の異なるフレーズを聴いて感じるのは、それ自体の魅力と、その後に続く元のフレーズの魅力だ。

 非日常は、日常をより美しいものにする。

 日常の美しさは、日常を生きるだけでは気づくことができない。

 花をつけた草木は、その葉までもが一層愛おしくなるだろう。


ROOM(初回限定盤)(DVD付) CD+DVD, Limited Edition
jizue 形式: CD


Englishman in New York

  Englishman in New York . ニューヨークの英国人。

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