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ファンタジー小説『ウリッジ』 第一章〈一〉

〈一〉

『自然霊・山々の神』


山の神は言った。


「この世界が生まれるとき、わたしたちは共にあった。
自由な翼と、その意志で、空を駆け巡る、
空族と共に」


森の神は言った。

「では、そのものたちと共に
われら一族もまた、世界の名のもとに融合しよう」


世界は、それぞれ、水の神、風の神と、そして天の神と、火の神
みな同じように集まりをとげた。

空のウリッジ、大地のマリエ、そして、水のエレナ

彼らは、風のもとに融合して、それぞれの民を祝い分かち合った。

山の神は、ウリッジを
水の神は、エレナを
火の神は、マリエを。

すべてが調和の元へと集まり、分かち合った。
自然の織り成すスコープが、彼ら民を祝福し、またこの星を巡っていった。
祝福の宵は、365日続いた。

それが、一年の始まりであった。

空族は、その翼を、山の神のために、使うことを祈り、
水族は、その水の力を、水の神とともに、山の神へと、
地の民は、火の神とともに、森の神、風の神へとその恩威を返した。

すべての民が、融合し調和をなし、その民の子らを育てていった。


それから長い時を経て、調和された種族が、それぞれ力を持ち、自分たちの星を育てていった。
民は、またいつしか、自分たちの種族のためだけにその力を使うものも現れた。


それから長いときを経て、いまそれぞれの種族が分かつときが現れ、自分たちと、神様それぞれで暮らすようになった。
空族は、山ノ神と
水族は、水の神と
地の民は、火の神と。

それぞれが、行き来することなく、民たちだけの文化を創りそこで子孫を設けていった。
それぞれの神の名のもとへと集結し、そこでの暮らしをする中で、自分たちもまた、その威厳や尊さを失い
育ってゆくものも少なくなかった。

星の名のもとへと集結することは、なく、それぞれのみが独自の文化を切り開いていったために、
世界には、調和を乱すものが現れた。

空族ウリッジもまた、山ノ神との調和のために、他の民との共存を望まず、自分たちだけの世界を作ろうとしていた。

そのとき、世界は、融合を乱され、大きな海嘯となって民を襲った。

山ノ神は、ウリッジの村を襲い、水の民は、海に飲まれ、地の民は、火で燃えつくされた。

一晩にして、山が動いたウリッジの村は、半数を失うこととなり、その智慧を求めて、三つの種族の長が、集まった。

それぞれに、神に差し出さなければいけないと、どこかの長がいい、それを提案に、すべての民が乗った。

神の怒りを静めるために、呼び出されたのは、16~18歳までの婚姻前の女たちだった。
民の長は、彼女たちの力を借りて、神の怒りを沈める儀式を行い、彼女たちを山に、地に、水にと生きたまま葬った。

幼き女性の尊い命によって、それぞれの神の怒りは静まりをみせ、それぞれの種族の長は、このことを代々他言しないことを約束した。

神は、このとき、地上にあるすべてのものが、融合することを祈り、そのものたちの長へと伝えるものを贈った。
しかし、このとき、地上では、神の伝うメッセージを読み取ることが出来るものが、すでにいなくなっていた。

それぞれが、自分の民とまたその神との融合だけを築くようになってから、すべてのものが、その神を読み解く力を失っていたのだった。


神は、その後300年のときを待った。

空族に、神のすべての調和と、意図を紡ぐもの、ツムギが誕生していた。
旧世界の民族の中で、シャーマニズムと呼ばれるを要した伝達者のことである。
そして、神は、空族のウリッジへと、その意図を贈ったのだった。

それから

300年のときを経て、空族のある村に、双子の姉弟が生まれた。

フレアとルウアだった。

姉のフレアは、金色の髪を、弟のルウアは銀色の髪をしていた。
ウリッジには、双子で生まれることは珍しくなく、それぞれが、大きな羽根を生やしていた。
羽根は、彼らの生活の中では、使うこともなくなり、山の仕事や、特別なときや、緊急のときだけ、その翼を広げた。
普段の生活は、他の種族となんら変わることはなく、
双子のフレアとルウアも、同じように何不自由なく暮らした。


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