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日向の雪の名残り

雪が降った。それなりに積もった。翌日には大きな道路の雪はほとんど解けた。細い裏通りと歩道にはまだ雪が残っている。この辺りは三国山脈の南側に位置していて、12月は晴れている日が多いが、年が明けると、ときたま大雪が降る。私が住んでいるのは比較的雪の少ない地域だが、車で20分ほど山のほうに行けばもうほとんど雪国と言って良い。

私は昨日、朝陽が東の空の高い位置に登った頃、片道30分かけてコンビニに黒いブラウスを受け取りに行った。てくてく歩いて。道は解けた雪と凍った雪で、たいへん歩きにくかった。しかし雪の白さは美しかった。薄くブルーのかかった凍った道も美しかった。犬の散歩をしている人がいた。犬は私に撫でてほしそうだったが、飼い主はリードをしっかり握って、犬の衝動を抑えた。少し残念だった。軽く会釈して通り過ぎた。

風が冷たかった。直線が交わる道をひたすら真っすぐ歩いた。住宅と田んぼの交じる道だった。コンビニにから15分くらい離れたその場所は昔は田んぼだらけだった。しかし、今は新興住宅地になりつつある。狭い庭の安っぽい一軒家がひしめきあっている。道はアスファルトに覆われ、鉄の塊の車が通りやすくなっている。

もし、土の道だったら。
田畑が広がっていたら。

今より歩きにくいだろう。
風もびゅんびゅん吹くだろう。

それでも、土と枯れた雑草がおりなす、様々な色の混ざりぐあいが見れたはず。
空はもっと果てしなかったはず。
雪さえ、もっと白かったかもしれない。
陽の光の輝きは?

だけど、私はこうして硬い歩きやすい地面を歩き、合理主義を極めたコンビニに行く。

ノスタルジックな美を求めらながら、現代のオートマチックなサービスの恩恵を受けずにはいられない。

雪は今日も解けていく。
明日はもっと解けるだろう。

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