ドイツ暮らし十年以上のある食事候 –壱–

ドイツに暮らし、十年以上ドイツ人と一緒に寝食を共にしていると、ドイツの合理的実利主義のライフスタイルの影響を強く受けている。温かい料理は1日1回。手の込んだ料理は週1〜2回で良い。特にパンデミック後、毎日パートナーと寝食を共にし、それぞれの好みに配慮して料理を1日2食作っていると、ドイツの簡素な食生活が便利で満足してしまう。(私の場合は、なぜか少しイギリスの影響をも受けているが。)ドイツのカルテスエッセン(kaltes Essen・冷製食)とは、作り置きサラダ(ポテトサラダ、根セロリサラダ、パスタサラダ...etc.)、ハム、ソーセージ、酢漬けニシン、燻製魚、ピクルス、チーズ、各種塗り物(ジャムはもちろんのこと、各種おかずペーストがドイツは豊富である。)と日持ちするパンがあれば、満足する食生活です。働いている主婦・主夫の強い味方である。その食事に、食後に少しのアイスクリーム・ソルベかフルーツの入った乳製品(ヨーグルト、クァーク...etc.)、もしくは作り置きのブレッヒ・クーヘン(オーブンのトレイ焼きっぱなしケーキ)があればさらに最高。それは、ベジタリアンやビーガンの人でもそうである。魚介類以外は大概のベジタリアン、ビーガン代替品がある。最近はビーガン向け冷凍白身魚のフライや、ビーガン魚醤まである。日本の常備菜文化と似ているが、日本の炊き立てのお米・雑穀と温かいお味噌汁が常に添えられる文化で育っていると物足りない。ドイツにも煮炊き文化はあるは、それは大概暖房用の暖炉の発する余熱でほったらかしで作られてきた料理が多い。セントラルヒーティングのある家に住んでいる、大概の現代ドイツ人(もちろん、まだセントラルヒーティングのない家庭もある。)は、そのような料理する人は減った。そんな中、定期的に郷に入れば郷に従えブームがやってくる。でも1ヶ月ぐらい過ぎるとやっぱり辟易してしまう。そして、夜に簡単でも愛をこめて、あったかい料理をすると、食後のその部屋の輝きが全然違うことに気づく。短時間でサクッと出来合いのものをテーブルに並べた部屋と、簡単でも温かい料理を一品でも用意した部屋だと、その後の光の見え方が違う。合理的でも実利的でもなくても、そこに気持ちと愛情を置くことで、どんな簡素な食事でも、そこに宿るパワーが全然違う。仕事しながら毎日温かい料理を準備しなくて良いと思う。ドイツスタイルを取り入れて、その余った時間を他の有意義な時間に使うのも素敵な生き方である。しかし、やっぱり、時には愛ある温かい料理を愛ある人とシェアしたい。

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