幸せになるには

私「○○さん(母)と離れて暮らすと色々不便だよね!イッセイミヤケ借りれないし」
母「ほかに不便なことないの?」
私「なに?」
母「私の資料もすぐに出てこないし、CDも借りれないんだよ!」
私「不便だー!!」
多分もっと根本的なところ忘れてるのですが、そんな母子なのです。

今までにも何度も一人暮らしのタイミングはありました。
海外で暮らしていたこともあるし、それならそれで良い距離感を見つけられた気がします。

ただ、私が家を出ていく すなわち独立する ということは、両者に大きな人生の節目となることはなんとなくふたりとも気がついていたのです。
だから私は母と喧嘩をしても、父と不仲でも本宅に居座り続けました。
それは義務感もあったかもしれないけれど、単純に母との会話や暮らしが面白かったからです。
人生の先輩であり、仕事の先輩でもある、でも対等に色々なことを話せる信頼し尊敬している大切な人と離れるには、私はまだまだ未熟だと思っていたからです。
長年交際していた人と結婚することになり、私は家を出ていくことになりました。

ある晩、母と飲んでいたときに私は言いました。
「父親のことが嫌い。だから、彼に恋人を紹介するのも嫌。彼が死んでから結婚する」
母は
「でも嫌いな人のために自分の人生を歪める必要もないと思うよ」
と答えました。
私はその答えを聞いて、色々な枷が自分の生み出した幻影であろうことに思い当たりました。
それは、決断を先送りにする己の弱さ。
それは、現状に甘んじる心の怠慢。

私は、自分の輪郭の外に波及する人生をもう恐れません。それは、予想もつかないけれど、だから絶対に退屈することがないのだと思います。

母は
「あなたが出ていってしまったら、私色々タガが外れるかも」
なんて笑います。私は
「独身に戻ったと思って気楽にして」
なんて言ったりします。
寂しさを押し殺しているのは互いに悟らせません。
ただ、私が中学生の頃に一緒に何度も映画館で観た『下妻物語』の幼い桃子のセリフ
「幸せになるには勇気がいるの」
が、私の心の中で光っています。きっと母の心の中でも、その言葉は温かさを伴いながら生き続けていることでしょう。

私は、母の娘で良かったと、というかあなたの娘だから私なんだと、というか、私の母親がこれなんだと、なんか色々輪廻転生する勢いで自分の人生を全力で楽しんでいます。

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