きなことマカロン

きなこちゃんとマカロンくんは愛し合っていた。
二人はいつも一緒にいたが、たまに離れなければならない場面もあった。
二人はなんとかしてひとつになりたかった。

そこできなこちゃんとマカロンくんは話し合った。
話し合いは何日も続けられた。
主に議題は、「どちらがどちらの中に入るのか」だった。
話し合いは議論となり、口論となった。
しかしそれにも決着がつく日が来た。

きなこちゃんより、マカロンくんのほうが少しだけ自己主張が強かったのだ。
そこできなこちゃんが折れた。
きなこちゃんはマカロンくんの中に入ることとなり、
「マカロン味のきなこ」ではなく「きなこ味のマカロン」が誕生することとなった。

もう決して二人は離れることはなかった。
二人はいつも一緒だった。
「きなこ味のマカロン」は主に若い女の子に人気のお菓子となり、
もてはやされ、どこへ行っても注目を浴びた。

そんな二人に試練が待ち受けていた。
あこちゃんが登場したのだ。
あこちゃんは桃色の頬に栗毛のふわふわした髪を持つ
とてもかわいい女の子だった。
「きなこ味のマカロン」はあこちゃんによって食べられてしまったのだ。

もう「二人」ではなかった。
きなこちゃん、マカロンくん、あこちゃんの「三人」になってしまった。
「きなこ味のマカロン」はあこちゃんの体内に溶け込んだ。

二人はあこちゃんの胃液に溶かされ、血流に投げ込まれた。
そしてあこちゃんの栄養となり、桃色の頬をもっと桃色にした。
きなこちゃんとマカロンくんは強く愛し合っていたから、
あこちゃんの桃色の頬は少しだけしあわせそうだった。
栗毛の髪は、もっとつやつやでサラサラになった。

三人はひとつになった。
あこちゃんのDNAに溶け込んだ「きなこ味のマカロン」は
あこちゃんと一体となった。

きなこちゃんとマカロンくんは、二人が出会う前のことを思い出した。
毎晩孤独に泣きながら枕を濡らした夜。
ひとつになりたいと願いながらも叶えられなかったあの頃。
もう彼らは独りじゃなかった。

時は飛ぶように過ぎ去り、あこちゃんはかわいいおばあちゃんになった。
そして或る日の夕方、縁側で日向ぼっこをしていたあこちゃんは
眠るように亡くなった。
あこちゃんは生前、夫との間に一人の息子を授かっていた。
もちろん、息子にはあこちゃんのDNAが受け継がれている。

きなこちゃんとマカロンくんもDNAとともに息子の体内に受け継がれた。
二人はもはや不死身だった。
不死身のまま愛し合った。
明けない夜の中を、暮れない昼の中を、
終わりのない連鎖のなかで、二人は永遠の愛に結ばれたのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?