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伊豆旅(備忘録)

「仲間が増える旅」

明日伊豆に行こう、1人で。
こうしたい、と決めた瞬間には
もうそうなっている世界を生き始めていた。
私の初めての1人旅はそんな風に始まった。
日数は2泊3日。行きの電車と行きたい場所へのルートだけ調べて、バックパックに荷物を詰める。
1日目行こうと思っていた最後の地点、下田へ向かう電車で東京観光をしていた老夫婦が私のボックス席に座ってきた。
生まれた時からずっと下田を離れたことがないというおじさんの話す伊豆は、どこも魅力的に思えてすぐ明日行こうと思える魔法がかかっている。
「この重い大きな荷物さえなければ美味しいとこ連れてくが、すまないね」そう言われて寂しくなるほど。
夕日の下がる海岸で、サーファーを見つめる。友人がススメてくれたビラ。そこのオーナーのご夫婦はなんとも素敵で、たった一人のお客さんであった私を我が子のように寂しくならないよう苦労しないようにと逐一色々ことを教えてくれて、夜も一緒に飲もうと誘ってくれた。
オーナーは自由に自分のやりたいことをやりながらこの宿を営み、自分の趣味を共有する仲間と家族に囲まれて過ごしている。「僕はここから離れられないけど、仲間が色々な場所へここを運んでくれる」
と言って、旅行会社の仲介をせず個人営業をしていると伝えてくれる。
旅は遠くに行く、向かいたい場所に行く、だけじゃなく
こんな風に、オープンに人と人とがつながったり出会ったりすることだと思う。自分で聞いて選んで得た体験だから、人に伝えられて心から良いと共有できる。それは食べログの評価の高いお店やじゃらんのクチコミで選んだ宿ではない。リアリティーがあって、本質的なプラン。葛藤して考えてても道は開かない。私にとって旅は自分をオープンに人と交流できる瞬間だった。

2016年3月。この文章を携えて、当時最も憧れの会社、最も理想の社風、最も尊敬しこんな人になりたいと思った人のアシスタントになるインターンの面接を目指した。人生で初めての一人旅と記録。

あれから3年。2019年5月。

同じビラに泊まった。大雨がやっとあけた朝。すっきりした天気にはならなかったけれど、再会があること、また来れたという事実が、とっても幸せだったから。ずっと下書きに入れていたけど備忘録。




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