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勝手に1日1推し 142日目 「まじめな会社員」

「まじめな会社員」(1~4完結)冬野梅子     漫画

「まじめ」調べると、本気であること。うそや冗談でないこと。まごごろをこめること。誠実なこと。ですって。
漢字で書くと、「真面目」。でもこれは「しんぼくめん」とも読むんですって。本来の姿、ありさま。転じて真価。っていう意味らしい。

「まじめ」でも「真面目」でもなさそうなあみ子30歳、まじめな会社員・・・

 菊池あみ子、30歳。契約社員。彼氏は5年いない。いろんな生き方が提示される時代とはいえ、結婚せずにいる自分へ向けられる世間の厳しい目を、勝手に意識せずにはいられない。それでもコツコツと自分なりに築いてきた人間関係が、コロナで急に失われたら…!?

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大変です!事件です!ホラーですよぉぉぉぉ。怖い~、恐ろしい~。

寝て起きて働いて友達と会っておしゃべり。いわゆるなんてことない毎日。仕事はつまらないけれど、趣味もある、友達もいる、それなりに楽しく生きているあみ子だけれど、物足りなさもあり、勇気を出して新しい友達や憧れの環境に身を置いてみると・・・って言うストーリーなんだけれど、人と関われば関わる程、孤独になっていくあみ子がホラー過ぎる!不憫過ぎるし、怖過ぎるっ!!
悪い人なんて一人もいないんだよ!なのに、周りの人達からどんどん孤立していくあみ子の境遇が恐ろし過ぎて読み進められない程でした。
あみ子は特別おかしなことをしてる(した)って訳じゃないのに、除け者感や腫物感がついて回るのが心底怖くて、震えちゃった。ふんわりした拒絶や憐れみ、優しい気遣いが痛い・・・。

あみ子のチャレンジって言うか、まだまだ理想を追う(?)姿って言うか、若さを失ってもなお、何者かになろうとするっていうのは、悪いことじゃないと思うのよね。
必至に輝かしいサブカルな人達に仲間入りしようとするの、嫌いじゃないよ。何もなくても、何かあるかもしれないって頑張っていいって思うの。
でも、肝心なところで考えすぎて強気になったり、逆に弱腰になっちゃうあみ子が、今までの彼女の生き方を思わせて、妙にリアルなんだよね。打算的で浅薄、安っぽいんだよなあ。
おまけに経済面でも余裕がないわけだから、卑屈にもなるよ。そんなあみ子を見てるの、ひたすら辛い!

でも、あと、何だろ。あみ子以外の人達もなんだかなあって思うの。サブカル集団にせよ、文化人集団にせよ、そういう人達の内輪ノリと言うか、内内で人も物も思考もぐるぐる回ってる感じが物凄くぞわぞわしちゃった。あるある~って感じで。でも綾ちゃんだけは好きかもだけど。

まあ、全編通して、いいシーンってのがない(褒めています)んです。全体的に曇った空気が漂ってて、楽しめる雰囲気が皆無!分かる~って共感できる部分もあるけど、決して楽しい訳じゃない。現実をなぞったようにコロナを描いた世界なんて、フィクションくらい希望をくれよ!って思うけど、結果、それが本作の良さなのかなあ。
きっとあみ子視点でのみ綴られているから、あみ子の思考を通してしか周りが見れなくてそう(いいシーンがないと)感じるし、孤立感、焦燥感、寂寥感が際立つんだろうなって・・・。あれ?あみ子、とことん悲し過ぎん?!

決して読みやすくないし、夢もないし、辛くて恐ろしいけれど、読了し、冬野先生のあとがきを読んだ後に湧き上がるカタルシスには感動しました・・・涙。
あぁ、そういうことだったのねって、ストンと憑き物が落ち、救われた気持ちになります。
あとがきあっての本編、理解が深まりました。
正直、あとがきまでたどり着かなかったら推さなかったとさえ思います。

この”あとがき”ですが、かなり勇気を貰えます!!
作品自体、ポジティブな内容ではないにせよ、あみ子を含め決して誰のことも否定することなくありのままを描いているように、冬野先生のお考えもフラットで、あるがままを肯定し、それを形にしている旨を丁寧に記されていて、グッときます。
ほんの一握りだったとしても、あみ子みたいな人が抱えるやるせなさを掬い上げ、形にしたこと=理解していることは、励まされるに違いありません。

万人受けするとは思いません(褒めています)が、刺さる人にはぶっ刺さりまくると思います。
あみ子、絶対存在してるっしょ?現実世界に。ってくらい等身大。包み隠さな過ぎる!!
心の平らかな時が読み頃かと思いわれます。

最後になりますが、2巻に収録されている「普通の人でいいのに!」は特に読み返せないかった!辛い過ぎるよ・・・。
正直であからさま過ぎる心の声、諦めや妥協で取る行動、生きるのがままならないのが辛すぎる。「分かる!」ってなるのが、更に切なさを煽ってくる!!性格が悪いからとか頭が悪いからとか何かが悪いからこうなったとはとても片づけられない理由なき怒りと孤独の訪れ・・・。きっと確かな原因があって蝕まれる感情より、理由もなしに蝕まれる感情の方が削られるよぉ。

はぁ、ともあれ、まじめとは・・・。深い。
そもそも「まじめ」っていいことなんだろうか?!

ということで、推します。

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