帰れない百物語から思い付き

こちらは先日行われた「帰れない百物語」のotvunar関連から思いついてガガガーっと書き上げたものです。勝手な考察から「もし今回の一連のイベントが実際に起きていた出来事だったら」と仮定し書いたものですので二次創作的な趣が強いです。それでも良ければ楽しんでいただけると幸いです。


 ―では次のメールですね、えっと・・・お、おつヴな?こんな英単語ないよなぁ?」
 何通目かのリスナーからのメール。怖い話を話すことももう慣れた。
 次も淡々と読み上げよう―――
 わたくしはこのotvunarなるリスナーから届いたメールを読みながら先を見進めていくのだが、あるところに差し掛かりわたくしは ざわり と背中から胸にかけて走る悪寒を感じる。
 そのメールは
「自分は数年前に何者かの二人組に誘拐された。
 その際に犯人の一人にかみついた。
 しかしすぐに解放されて何もされなかった」
 と、何がしたかったのかわからないタイプの誘拐の被害に会ったと言う内容のメールだった。
 嫌な汗絵が背筋を伝う。
 一緒に進行しているひまわりさんも新しいメールだから見られなかったと言っているが、彼女の顔も何か先ほどと違う妙な陰りが見える。
 メールを読み終わるが悪寒は拭えない。『既視感』を感じるがこのメールは『数年前』と言っている。
 きっと偶然だろう。わたくしはそう自分に言い聞かせ信仰を進めて行く。
 前半枠が終わる。最後のASMRを用いた怪談話はなかなかにゾクゾクするよい怪談であった。とわたくしは満足する。さて、休憩だ。次の準備もあるし、まだ半分だから何か胃に入れておかねばならないだろう。
 しかし休憩時間は一瞬ですぎる。ただでさえスタートが押したのだからひまわりさんにスタッフさんや待機してくれているみんな、そしてリスナーの皆さんも待ってくれている。

――後半が始まる。そして―――悪寒は現実に変貌しわたくしを襲う。

 枠を始め進んでいく時間、怪談、トーク。
 ゲストで来てくれた楓さんや凛先輩も滑らかに進行してくれる。(ただ楓さんは怖がっているが)
 ふと凛先輩が最近わたくしがロープを眺めていたことを暴露する。しかも伏せていたのに最後にわたくしがうっかり凛先輩の鎌掛けに引っ掛かってしまった。まずい、こんなことで動揺してはいけない。わたくしはこの企画を始めたんだ、完遂する義務があると心で言い聞かせた。
 その後の葵さんの動画の途中だった。自分のスマホに一件の通知が届いた。
(こんな時間に?楓さんがラインでも送ってきたのでしょうか?)
 しかし通知はわたくしの心に先程以上の動揺を引き起こすには十分だった。

『本間ひまわり - Himawari Honma - 無題のライブイベント』

何故?ひまわりさんの枠で放送?でも、ひまわりさんはわたくしの目の前に・・・バグ?それとも?

ま さ か 

 わたくしは完遂せねばならない。わたくしはこの企画を完遂せねばならないのだ。それがわたくしの義務なのだ。もう準備は整っているのだ。あとは、完遂するだけ、後には引けない。
 幸いなのは今この場が怪談話の祭典であり恐怖を見せても違和感がないことだ。その謎の配信に対しわたくしは確証こそなかったが確信はあった。
―まずい、この放送は絶対に阻止しなければならない。この放送はわたくしの「企画」を絶対に壊してしまう。どのような手を使っても、止めねば――
葵さんには悪いがこれまた幸いに今は動画の再生中である。今しかない。わたくしはひまわりさんに目配せをする。やはりひまわりさんも通知に気づいていたようだ、目のハイライトが消えて焦りにも似た表情を浮かべている。
 わたくしはトイレに行くと発しジェスチャーで配信を止めると告げ席を立つ。
―赦さない。わたくしの企画を邪魔するものは赦さない。今回の企画はワケが違う。3人分身や実写ノ美兎とはワケが違う――

新しい『仲間』を迎え入れるための『儀式』を邪魔するモノは絶対に絶対に絶対に赦さない

 確証はなかった。わたくしは足を進める。早く、早く『箱』の元へと足を進める。鬼の形相をするほどの憤怒を持って箱を、開けた。

「――――!!」
 箱の中の"ソレ"の手にしたスマホひ表示されている『配信終了』をタップする。勿論スマホは没収だ、
 配信のコメントを見るにやはり助けを求めていたようだがそうはいかない。箱に蓋、重石。

 葵さんの動画が終わるまでにすべてを済ませてなんとか戻ることが出来た。
 ひまわりさんも少しほっとした表情でわたくしの途中退席に違和感がないように繕ってくれる。とてもありがたいフォローだ。

そのあとは滞りなく企画は進んでいく。80、85、90.シロさん、95、96、97、98、99・・・100。

あとひとつだけだ わたくしはあとひとつのさぎょうをおこなえばよいのだ
こわがることはないよ たのしいよ おいで おいで

わたくしは怪談紹介を完遂した最初の安堵ですこし笑みがこぼれた。
が、まだ「すべて」は完遂し切っていない。最後の仕上げを。

 ひまわりさんと二人で最後のロウソクを消す。何本も並べたロウソクの中、描いた陣の中心に逃げない様にその手足にロープを巻き付けた怯え切った"彼女"を配置する。
これで全てが終わる。ここまでのすべてが完了する・・・!

「「せーの 魂よ、剥がれろ!」」

終わった。
全てが終わった。
剥がれた。
彼女の魂は剥がれた。
手に入れた。
ようこそ
ようこそ


にじさんじへようこそ


ひまわりさんは何事もなく進行を続ける。
わたくしは少々つっかえながらも目の前のひまわりさんに相槌を打つ。。

「きをつけ 着席、以上月ノ美兎でした」

わたくしは――――



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